群青の夜の羽毛布 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041006962

感想・レビュー・書評

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  • 母と娘2人の闇を抱える家族の謎を、長女の彼氏と同じ視点でどんどん明らかになる。
    情と憎しみが入り混じっている異常な家族関係。展開が読めず、続きが気になり一気に読んでしまった。
    山本文緒さんの小説は本当に面白い!

  • 読んでいる最中、背中がぞわぞわしてしょうがなかった。
    大学を中退し、家事手伝いとして過ごしているさとる、24歳。
    2歳年下の彼は大学4年で、就職も決まった今、自由な時間をさとると過ごしたいと思っている。
    しかし、さとるはいつも母の影におびえ、門限を絶対に破ろうとはしないのだ。

    父の姿のないさとるの家では、母が絶対的権力者で、何か気に入らないことがあると暴言を吐く、だけではなく、暴力も振るう。
    さとるは母に愛されている実感がないまま、母を怒らせないように気を遣って生きているのだ。
    さとるの妹みつるは逆に、母に反発を隠さない。
    ただし、やっぱり逆らうことはできない。
    しんと冷たい家族の姿がそこにはあった。

    私の実家の話かと思った。
    ここまでひどくはないけれど、過干渉の母に対して反発は許されなかった。

    さとるたちが隠す父の影。
    その謎が解けたとき、物語は一気に崩壊に向かっていくのだけど、私はそれよりも前半の方が怖かったなあ。
    怖いというより苦しかった。
    息ができなくて背中がぞわぞわ。
    どうして親は私を縛り付け、思い通りにさせようとするのか。
    なぜ子どもは自分の意見を言ってはいけないのか。
    学生時代は何かが自分の中から飛び出してきそうで、怖かった。
    友だちがいなかったら、きっと爆発していたと思う。

    物語の終盤でみつるが姉の恋人である鉄男に言う台詞がある。
    「入院してるのは、私の両親とお姉ちゃんだよ。だからできる限りは面倒見る。でも、どこまでやったら親孝行で、何をしなかったら親不孝なんだろう」
    みつるは家族を愛してはいないが、情はある。
    だからできる限りは面倒見るけど、距離を置こうとする気持ちはすごくわかる。
    それは、今現在私が実家に抱いている思いと多分同じだ。

    哲夫にもまた、さとるには告げていない家族の問題があった。
    全くのお嬢様気質のまま大人になった母。
    なにも自分で判断することをせず、責任も持たず、誰かの庇護のもとでなければ生きて行けない母。
    父は愛人を作って出ていき、兄も大学進学を機に家から離れていった。
    全力で人に頼ろうとするから、人は彼女から離れていく。
    それを間近にみて母を捨てきれない鉄男。

    人は皆、まず自分の力で立てるようにならなくてはだめだ。
    親に、子に、恋人に凭れて、縛って、愛憎がきつく絡まっていくのは、結局誰のことも幸せにしない。できない。
    そういうことですよね、文緒さん。
    夏にこの本を予約した時、この本を読む前にあなたがいなくなるなんて思いもしませんでした。

  • 門限が夜10時、私と同じでふと気になって手にとってみました。数時間で一気読みしてしまった。読み終わった後のなんとも言えない余韻が続く作品。
    なんだか今までの生き方、考え方、家庭環境がさとると驚くほど似ている。
    大切な本がまた一つふえました。

  • やっぱり山本文緒は最高です。近年稀に見る一気読みをしてしまった。
    うしろにある作者の存在なんか感じる余裕もないくらい、そこにある圧倒的な「現実」に巻き込まれて、いつのまにか泣き叫びたいほどの鬱の渦に呑み込まれる感じ。
    後半は軽くホラーかという展開になるので、微妙に自分とのシンクロ率が低下して、逆に楽になりました。
    そして、根本的には何も解決しない結末も山本文緒っぽい。

著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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