南の子供が夜いくところ (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.60
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  • (4)
本棚登録 : 875
感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007129

作品紹介・あらすじ

からくも一家心中の運命から逃れた少年・タカシ。辿りついた南の島は、不思議で満ちあふれていた。野原で半分植物のような姿になってまどろみつづける元海賊。果実のような頭部を持つ人間が住む町。十字路にたつピンクの廟に祀られた魔神に、呪われた少年。魔法が当たり前に存在する土地でタカシが目にしたものは-。時間と空間を軽々と飛び越え、変幻自在の文体で語られる色鮮やかな悪夢の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 印象に残る作品もなく
    いっれも単調で楽しめなかった。

  • あまり覚えてない
    普通な感じ

  • 【2024年28冊目】
    ホラー小説ではない、と思います。なんだろう、幻想耽美小説?

    一家心中の間際、少年のタカシはユナと名乗る不思議な女性に出会い、とある島に導かれる。この物語のキーパーソンはタカシとユナの二人。ずっと幻想世界にいるようなお話が続く短編集でした。

    表題作から始まる7つのお話。とある果樹と共にある島で育ったユナ。十字路にあるピンクの廟の由来。島が襲われ、伝説を頼りに別の島を目指す男。息子を失い、蛸漁師を引き継いだ男の罪。地面に埋まった元海賊。そして、息子に会いに向かってフルーツの町にたどり着いた男、などなど。

    あまりネタバレしないように概要だけ書こうとしても、カオスになってしまう今作。バカンスのお供に持っていくと、ふわふわした心地で読めるのでいいかもしれません。角川ホラー文庫から出てますが、怖くはないのでご安心を。

  • 久々に恒川光太郎を読む。こんなに面白かったけ?っていうぐらい世界に入り込んでスイスイサクサクと読めた。

    危うく一家心中に書き込まれかけた小学生のタカシ、ワゴン車でカフェを営むユナという謎の女性に助けられて不思議な雰囲気の南の島にやってくる…という表題作から始まり、このタカシとユナが出てくる(端役の場合もあり)短編が続いていく形式。

    南洋のファンタジー系ホラーの雰囲気をまとう各編。東シナ海あたりにありそうな島を舞台に、ちょっとユルめに民俗学的伝承感のあるホラーっぽい雰囲気が、夏の蒸し暑さにちょうど良く、残暑厳しい9月に読めて良かったなとも思った。

  • 再読。今回もひんやり涼しく、楽しく読みました。
    小さな島なのかと思っていましたがかなり広いトロンバス島。コミュニティが小さくないからおおらかなのか、ユナを始めとして不思議な存在がたくさんあるから、今更変わった事があっても…みたいになるのか。いいな、南の島。
    トロンバス島が舞台じゃないお話もあってそちらは時代が違うけれど、その他は「こう繋がるんだ…」というゾクッと感があって良かったです。
    「まどろみのティユルさん」が今回も好き。ソノバのご先祖、「穏」の出身なのか。あの町から離れたら、一処に留まれずこの世界を巡り廻る定めなのかもしれない…と思ってしまう。それはそれとして、ティユルさんはこれからも大きな木陰を作って微睡んでるんだろうなと、聳え立つ菩提樹が目に浮かぶようです。
    タカシも波乱万丈だけれど、父ケイタもなかなか…フルーツタウンで迷子になってる場合じゃない。タカシ、トロンバス島に来られて良かったね…一家心中で死ななくて、というより、この両親のもとで育ってたらひねくれてそう。
    話数が多い連作短編集だと、恒川ワールドは時間にも広がりを見せてくるのが良かったです。滅びる場所もあるけど、何百年も続いてきて、また続いていく世界を感じられました。

  • ☆4.0

    ゆるくつながる七編が収録されている。
    語り口は淡々としているが、そこには確かに叙情が滲む。
    南国の架空の島、トロンバス島が主に舞台となっているが、いつの間にか現実との境界を越えてあちらへ行ってしまいそうになる気持ちを体験した。

    「南の子供が夜いくところ」
    一家心中による死を迎えようとしていた一家が、訪れたバスの露店で出会ったのは、120年生きている呪術師の女性ユナだった。
    息子のタカシはユナに連れられていったトロンバス島で生活しながら、別々の島で働いているという両親を待っている…

    自分の知らぬところで自分のことが決められ、目まぐるしく振り回されたタカシが、本当の意味でトロンバス島に馴染んだのはきっとこの夜なんだろう。

    「紫焰樹の島」
    ユナが子供の頃住んでいた島には紫焰樹と呼ばれる樹があった。
    その場所は聖域となり、つけた果実は村でも大事にされ一年に一度の祭りの時のみ食すこととされていた。
    聖域にたどり着けるのは果樹の巫女だけ。
    ユナはある時紫焰樹に偶然たどり着き、巫女に選ばれたのだと知る…

    じゃれ合うユナとトイトイ様がとってもキュート。
    "古き良き"という表現が似合いそうな島は、その存在自体がファンタジーそのものだ。
    紫の焔のように見える紫焰樹の花を心底見てみたいと思った。

    「十字路のピンクの廟」
    トロンバス島のティアムという街で見かけた十字路にあるピンクの廟。
    中には木彫りのご神体があり、通りすがりの女の子が投げキスをしている。
    街の風習かと思いきや、知らない人もいる。
    聞き込みしてみると、小学校の先生が建てたと言う。
    何故そんなものを建てたのだろうか…

    な、なんておちゃめなヤツなんだ!と思ってしまった。
    絶対むっつりだぜ、あいつ。
    そんな一面も持っているけれど、本当は怖いヤツなんだろうな。

    「雲の眠る海」
    島の祭りが盛大に行われた翌日、ペライアは大国を後ろ盾にした付近の島から攻め落とされた。
    伝説にある島の一族の力を借りれば攻め返すことも不可能ではない。
    自らの家族の安否もわからぬまま、シシマデウは〈大海蛇の一族〉を探すため海に漕ぎ出した…

    明確に言葉にできないけど、とんでもなく切ない気持ちを心に刻み込んでいった一編。
    それは何故か泣き出してしまいたくなるような、もしかしたら傷なのかもしれない。

    「蛸漁師」
    崖の下に若い男が死んでいる、そう警官へ告げた蛸漁師をしている男は「ヤニューって知っているか?」と聞いた。
    その男が蛸漁師になった理由、そしてその崖にいた理由が少しずつ語られ明らかになってゆく。
    何故彼は警官にそんな話をするのか。
    そのことにさえ、とても大きな理由があるのだ…

    ちょっとミステリっぽさもあって、スリリングで好き。
    "俺だけが知ってる蛸の秘密"が、すごい究極の悪趣味よね。
    爺さんの愉悦って感じ。

    「まどろみのティユルさん」
    目覚めた時、何かに埋まっていた。
    動けずに長い眠りの中にいたが、飲まず食わずでも平気だった。
    名前はティユル。
    思い出してみれば海賊をしていた過去が浮かぶ。
    その頃出会った人、奪ったもの、奪った命、与えたもの。
    海賊をやめた後のこと。
    このまどろみの先には何が…

    一番好きな一編かも。
    読んでいるうちにティユルさんが雲上の人に思えてくる。
    ゆるやかな永遠の平穏にいてほしい。

    「夜の果樹園」
    ケイタは息子のタカシに会いに行くためにバスに乗った。
    間違ったバスだとは知らずに。
    たどり着いたのは町中に蔦が絡まる奇妙な町。
    そこに住むのはフルーツ頭の奴らだった。
    バスの停留所に戻ってもバスは一向に来ない。
    そこで赤ひげと名乗る一人の小鬼と出会う…

    この連作の中では最もホラーっぽい。
    流されて流されてここまで来たか。
    思えば最初からタカシの父親はそんな感じだったね。
    もうきっとタカシの方がしっかりしてるぞ!



    続きが読みたいような、でもここで終わっていてほしいような、自分の中でも面白い位置に残る作品集だった。
    あわよくば、恒川さんの他の作品で少しリンクとかしてくれたら嬉しい。

  • 神秘や怪異がすぐ隣に「ただ、ある」ような。足元を少し掘れば残酷な歴史がすぐそこに現れるような。
    夢と現実がゆるやかに溶け合うような島の、連作短編集。

  • 好きよりの嫌い

  • 作者特有の、現実と異世界との境界が曖昧な、異界が現実と混ざっているような雰囲気が好きな私にとっては満足極まりの作品だった。
    あと、タカシ可愛い。

  • ”ユナ”という呪術師が全部の話に絡んでくるが、一つ一つは独立している短編。
    どれも不思議なお話。一家離散した家族は結局また一つになることはなく、でも父と息子は会えたかもしれない。敵に襲われた島の若者が長い間かけて竜の一族?を見つけ技術を受けて敵に勝とうと思うが、途中で「そうなったらもっと人が死ぬ」ことに気づく。海賊だった男が長い年月かけて菩提樹になった。島に流れ着いた西洋人は便利な知恵をたくさんもっていたが彼が善意で教えてくれるものも、後に人の欲をかきたて秩序を乱すものになりかねない。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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