- Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041018880
感想・レビュー・書評
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2014.9.28 pm19:18 読了。ウイルス、科学と宗教、植民地。謎の病原菌は、ウイルス兵器に対する風刺であり、医学と宗教の摩擦は、進みすぎた医療技術と各人の死生観の間に生じる矛盾を表す。人工呼吸器で延命することは、ほんとうに生きているといえるのかといった倫理問題を想起した。風土に適当な暮らし無視し、画一的な施策を行うことは、現代の日本や植民地政策が思い浮かぶ。様々な警鐘が含まれる本書。『獣の奏者』と似ているので、下巻でこの本の特徴を見出したい。物語としては、色々な民族が登場して、名前が覚えにくかった。心理描写はすごい。人と動物の精神の混線を大胆に描く。『守り人』シリーズの「ナユグ」の描写と酷似しているが、それでも、透明感のある水のようなものを用いた比喩的表現には頭が下がる。水を用いたこの比喩表現こそ、著者の持ち味ではないかと思った。下巻に期待。
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待ち遠しすぎた、上橋菜穂子の新刊。
今回は、「病」をテーマにした、やや大人向けファンタジー。
以前読んだ、『銃•病原菌•鉄』の中でも病原菌は、文明の振興が激しい国からそうではない国にもたらされたものの一つだ、と書かれていた。
日本に狂犬病が持ち込まれたのも、おなじ原理なのかもしれない。
しかし、そういった規模の大きなテーマを一つの作品として描くことが出来るのが、やっぱりすごい。
ヴァンとホッサル、追われる者と追う者を軸として、話は展開してゆく。
ヴァンが携わる「飛鹿」の繁殖のくだりや、ホッサルが関わる国々の思惑と思想の違い。上橋菜穂子の作品で扱われるテーマが生きていて、懐かしくもなる。
しかしながら、今回のテーマは、そのまま私自身の生活をも見つめ直すことになる、そんな予感がしている。
下巻も楽しみ。ゆっくり味わいたい。 -
こういうファンタジーを読んだのが初めてで衝撃を受けた。この本から上橋さんの本を読み漁るようになった。
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ジビエの人気がジワジワ来てますね♪
ってな事で上橋菜穂子の「鹿の王 生き残った者 上巻」
謎の狼?野犬?に噛まれた人々や周りに居る人々が次々と原因不明の熱等で死んでいく…。
数百年前にも同じ様な伝染病で一国を失った事が。
そんな中に噛まれても生き残った者が居た。
その原因を探るべく旅へ…。
その他、色んな思惑や国との絡みがあり、実は陰謀、策略を影で操る物が…w
って上巻はこんな感じ。後半になる程面白くなってく♪
下巻が楽しみじゃけど、まだ予約して無い(笑)
2015年11冊目 -
架空の国が書かれている作品ではありますが細かく設定があり、考えた筆者をすごいと思わざるをえません。それから、医療VS病という単純な話ではなく、江戸時代の漢方医VS蘭学のような医療同士の対立があるのも、話がより複雑になって面白いなと思いました。
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民俗学とか人文科学といったモンゴルや東欧あたりに実際昔ありそうな話。
医療ドラマのような感じも。
ファンタジーだけれど、現実味もあって。
大人用ファンタジーというか
堅めなファンタジーというか
下巻はどうでしょうか? -
狼?犬?に噛まれた事から発症する病と、その病から立ち直ったヴァンとユナの物語。
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コロナ渦に読むのにふさわしいはなしのような気がします。
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ファンタジーの世界観がリアルにできあがっててすごい!人々の生活とか生計の立て方、自然の描写、国の政策など、すごく細やかでリアル。主人公の飛鹿使いヴァンと医者ホッサルはプロの一面もありつつ人間的で、応援したくなる。後編で2人がどう交わるのか楽しみ。