- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041039922
作品紹介・あらすじ
不幸な境遇のため、遠縁の達也と暮らすことになった少年・圭輔。新たな友人・寿人に安らぎを得たものの、魔の手は容赦なく圭輔を追いつめた。長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込み。
感想・レビュー・書評
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伊岡瞬さんの作品を読んでみようと思い、このアプリで一番登録されていたこちらの「代償」を選択。
緊張感に似た不穏な空気感が常に漂っているような物語だった。
物語は2部構成。主人公である圭輔の小学6年生から24歳迄の幼馴染み達也との悲壮の仲合が描かれている。
この因果とも運命とも感じられる二人の相関がとても忌まわしく、とても苦々しい。
1部では両親を故意なのか事故なのか分からぬ状況で亡くし、傷心で幼すぎて少ない選択肢の中からいいように強引に他人に踏み込まれるだけの圭輔。
一方達也はある程度のパワーバランスの地位を築いており、その頃からサイコパスに似た犯罪者特有の色に染まっている。
物語は終始達也が事件やら問題やらの起点であり、圭輔が自分の不遇の根本に頭を悩ますという展開。
達也は頭が良く度肝も強く、圭輔も頭はいいのだが肝心の心が弱い。そして幼い。
2部では成人し圭輔は駆け出しの弁護士として法律事務所で働いている。そこに圭輔名指しで達也から弁護依頼。
その後は終始達也が嘲笑う様に一歩も二歩も出し抜いてくるのだが、その姿は圭輔もだが読者も気に触り癇に触る。犯罪者や詐欺師特有の軽さと口の上手さ、そういった狡猾さががそう思わせる。
実体がないとも見えるが自分には達也には温情がないのだろうと感じた。凄く野生動物的でありサイコパスとも少し違うかと感じた。
「代償」というタイトル、起きてしまった事柄にどう向きあうか?どう自分と折り合うか?
読む前と読後でこのタイトルに感じていた言葉の意味合いが変わっていることに気付く。
あいにく自分の近い所に達也みたいな輩はいないので一安心だが、いつどこで逢うかもしれないし、何かのきっかけで誰かがそうならないとも言いきれない。
自分の目と感性を磨くしかない、自分のために、家族のために、仲間のために、そう考えさせられた。
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伊岡さんの本は6冊目。
これはおもしろかった。特に後半は一気読み。
今まで読んだ伊岡作品の主人公たちはあまり好きになれなかったが、今回は圭輔が聡明だからかな。
寿人も賢くて冷静で、素直に二人を応援できた。
対してどうしようもなく鬼畜な親子。次第に明らかになっていく事件の真相。どんな『代償』でも足りない。目には目をという気持ちで読んだが、この程度じゃ全然懲りないでしょ。どうしたって反省なんかしないんだろうなぁ。
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伊岡さん曰く、全く人を顧みない、全く反省しない根っからの悪を書いてみたい。それが、許せない気持ち悪さが滲み出る「代償」です。
小学6年生の圭輔は、平凡な家庭の穏やかな生活を送っていた。その日常を崩壊させたのが、左目の上に痣をもつ達也、そしてその親。この二人の悪党ぶりの描写が際立ちます。
圭輔が、父母の焼死について秘めた償いの代償は、大きく、彼を過酷な思春期へと誘う。
圭輔が、彼の弱さから巻き込んでしまった少女への代償は、達也に罪を償わせること。
生まれもった悪党達也の数々の罪へ相応しい代償を求める事ができるか。
小学生だった圭輔は、弁護士となり、第2部は、過去への精算のリーガルサスペンス風。
小説だから弱みの無い悪党が描けるだけでなく、社会に潜む現実の悪党が存在するであろうことに悪寒がする。
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2023/02/14
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2023/02/14
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2023/02/15
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物凄く面白かった!
基本犯人は残酷だったり、サイコパスな犯人が多いが…
ぃやぁぁぁ…達也は強烈でした…
卑屈、狡猾、卑猥…トップオブクズ!!
ストーリーや、犯罪事態の流れは先読みしやすいんですが…達也の言動や、とる行動が毎回クズすぎて驚かされた…
彼の中に正義も悪も愛情も…なんなら理由も何もない…
伊岡さんの作品で1番引き込まれたなぁ… -
伊岡瞬さん初読み。
結論から言うと、面白かった!
展開がスピーディーでグイグイ読ませてくれます。
作者は根っからの悪を書きたかったそうですが、マジで悪すぎて超絶ムカつきながらも、ページを捲る手が止まらない。
ラストもハッピーまではいかないまでも納得でした!オススメです! -
伊岡瞬 著
遅ればせながら…読了。
本棚には登録してない別の本もつまみ食いして寄り道しながら(^^;; やっとこさ。
これは気合い入れて読もうと思ってた作品。akodamさんにご紹介頂き、ありがとうございます。伊岡瞬さんの魅力に浸りつつ楽しめました(^^)
楽しめたと言っても、イヤミス風のこの作品は、読んでいてやるせないと言おうか…気分悪くなるほどの(ㆀ˘・з・˘)怒りを溜めながらの読書(・・;) こんな悪魔のような(いや悪魔だ!)サイコパス野郎!(おっと失礼(-。-;ついつい悪い言葉を使ってしまった(~_~;)それほどに作品に登場する達也に苛立ちより憎しみと憤りを感じながらも圭輔のことが気がかりで、読む手を止められず読み進められた。
内向的な圭輔に対して達也は大柄で敏捷、野性的な雰囲気を漂わせ、上辺は如才なかったが、その半面、下品で冷酷そうな一面も見せており、圭輔は最初からウマが合わなかったと感じている。大体こんな下品でタチの悪い達也の性根の腐ったようなヤツが小学生の頃から上辺では調子よく如才なく世渡りしている態度が一番気に食わないし、要注意人物だと思う(ワタシの一番嫌いなタイプ~_~;)
圭輔!しっかりしてよ!(心の声)
何で声をあげないんだ!と歯痒く思う気持ちが苛々を押し上げてゆくけれど…考えたら、おとなしい性格も相まって、まだ小学生だもんね…(-。-;仕方ないよね。
正義感に燃えていた小学生の頃の自分を思い出してたら、おてんば娘だった自分でさえ、マインドコントロールされているわけではないが、相手の無遠慮で強気な態度に圧倒され、自分一人では対抗出来ないほど非力を感じまだ小さく弱い存在だったのかもしれないって思えてきた。
そういえば、言えなかった、言いたくても無意味に感じて、俯き、言葉をのみこんだことも沢山あった気がする、、子どもなのに…子どもだからこそか。
今だから、思うのだ!大人になって良かった〜(かなり意味が違うけれど(・・;)
それにあり得ないような状況や想像にも及ばない不幸に圭輔は見舞われたのだ。まだ小学生の頃に…( ; ; )独りぼっちに追い込まれ、相談したい一番頼りにしていた存在の両親を失う喪失感は一体どれほどの辛さ、悲しみだったんだろう、きっと想像することさえ出来ない。
それがこんなかたちでの出来事であれば、
そうならざるを得なかったのかもしれない。
気の毒さと詫びる気持ちがごっちゃになりながら、冷静な判断が出来ない年頃で、噛みつき叫び立ち向かうことがすべてなのではないのか…と改めて考えさせられた。
地道で静かに衝動を抑え物事をそれなりに見極めた結果の冷静さが、弁護士という職柄に圭輔を手繰り寄せたのかもしれない。
気弱に見える実直な彼は弁護士に向いてないような気もする反面、だからこそ、人の思いに真摯に向き合う弁護士という職業は天職とも言えるのかもしれない。
随分、持論を息巻いて横道を逸れてしまったが、弱者の再生譚を軸にじわじわとこちらを追いつめてゆくような、作者伊岡作品のプロットは見事で、思わず物語に、はまって読ませてもらい堪能することが出来ました。
題名の『代償』から、人を顧みない、全く反省しない根っからの悪者に対して、どのように制裁を加え、代償を払わせてくれるのか⁉︎
期待と憤りを落ち着かせる着地点を探しながら、
一気に読んでしまいましたが、結局何らかの決定的な証拠やこれまでやってきた非道な行いや罪深さを問うても、反省どころか意に介せず他人事のように楽しんでいる者に対して、虫唾が走りこのままでは気分がスッキリしない(−_−;)と思えたけど、反省することなどないのだ、こういう人間は!
だから『代償』か…。
本作品のタイトルの意味が自分なりに腑に落ちた気がした。-
hiromida2さん、おはようございます!
本作で芽生えたあらゆる感情と思いの丈がひしひしと伝わってくる私の大好きなhiromida2さん...hiromida2さん、おはようございます!
本作で芽生えたあらゆる感情と思いの丈がひしひしと伝わってくる私の大好きなhiromida2さんレビュー、美味しゅうございました(*´﹃`*)
そうなのです!私はいつも作品通読後にすぐ表紙と表題名を眺めるのですが『あぁ、だから代償なんだ』とひとりごちました。
しかしhiromida2さんの小学生時代、正義感が強くておてんば娘だったとのこと、とても想像つきニヤリしました( ̄∀ ̄)
素敵なレビューありがとうございました^ ^2022/06/18
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途中で何度も読むのを止めようかと思うぐらい気持ちが暗くなる。
小学生なのに悪行三昧を繰り返しながら生きている達也と、気が小さくて行動に起こせない主人公の圭輔。達也は自分の継母だけでは無く、圭輔の母まで欲望のおもむくまま性欲を満たす。また、圭輔の両親の死亡まで達也の仕業のように見え、自分の犯行を仄めかすも圭輔は何もできない。この辺がやり切れない。何人かの手助けがあるものの、この人達も毒牙に掛かってしまう。
二部は一転して圭輔が弁護士になっていたが、救い手が居てのことで、ホッとする。ここでまた圭輔は達也に嵌ってしまう。達也の弁護をなぜ拒否しないんだと、つい怒ってしまう。
窮地に嵌ってからの反撃にやっと面白さが出てくる。最終的な判決も恋の行方も無いのが寂しい。
直近で誉田さんの胸糞の悪いマインドコントロールの殺人事件の小説を読んだばかりだったが、同様な人物の犯罪事件だった。 -
初伊岡瞬作品。
長きに渡り積読で寝かし続けていたが、もっと早く読めば良かったと思うほど夜を徹して一気読み。
登場する悪役の非道たるや否や(あかん、めっちゃ腹立つ、ごっさムカつく)と久々に怒の感情が湧き上がったほど、物語に惹き込まれた。
結末に望んだ悪への制裁は、罰は、正義への代償は、私には少々物足りなかったのだけが残念だったが、他の積読本も楽しみに感じさせてくれた作品であった。 -
「痣」に続く伊岡瞬さん2作目。
主人公:圭輔の身に起きた災難やその後に置かれた状況が酷くて読み進めるのが辛く、何度も休憩しながら読んだ。
本編読了後に香山二三郎さんの解説を読んでこの作品が「嫌ミス」として挙げられる作品だと初めて知り、それも納得!特に終盤、苦しみの元凶を追い詰めるまでの圭輔の気持ちに感情移入しすぎると物語とはいえホント辛かった…。
おとなしい性格の圭輔の近くに浅沼家がきたのは本当に不幸だし、遠縁といえど違和感を覚えたときに絶縁するくらい完全にシャットダウンしてほしかったな。でも普通の交流でもはっきり断るって難しいから、特に人が良かった圭輔家族は受け入れてしまったのだろう。
圭輔は内向的な性格に加えて小学生というまだ幼く経験も少ない時期に自立した判断をすることは難しいし、浅沼家に身を寄せてからは更に正常な判断ができなくなっていて、正常な思考力も後退していくのが明白だった。
でも辛い状況が続くなかでも唯一、圭輔にとってよかったと思えたのが友人:諸田寿人との出会いだと思う。
いざという場面で自分にできる最大限の行動をして圭輔を助けた寿人や牛島夫妻の人間力に脱帽したし、第2部の後半(文庫本:P.398)に圭輔自身が寿人と出会えたことへの想いが表現されている箇所があり、それまでに圭輔が受けた不幸の全てを、消せはしないけれど少し浄化してくれるような温かい気持ちになった。
作中、圭輔は寿人から「弁護士には向いていない」とよく言われているけれど、壮絶な経験をして心の痛みを知る圭輔だからこそ寄り添える相談者もいるだろうし、圭輔が働く事務所の人たちからの信頼は厚く、認めてくれる仲間が周りにいてよかったなと安心した。
明確には描かれていないけれど、幼少期からずっと圭輔を苦しめてきた達也を圭輔と寿人の手(証拠集め)によって然るべき判決(断罪)をしてほしいし、圭輔は温かい人に囲まれて幸せになってほしいと思う。