犯罪小説集

著者 :
  • KADOKAWA
3.25
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本棚登録 : 874
感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047385

感想・レビュー・書評

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  • この作者の奥行きの深さを感じさせます。いろんな色合いの違う作品を紡ぎ出す力量に感服します。個人的には「横道世之介」のような作品が好きですが。

  • 犯罪小説集と銘打った一冊のなかに5編の小説。さすが吉田修一で5編ともそれぞれ違った視点から描かれた物語。そして「犯罪」って何だろうと思わされる。
    犯罪って端的にいえば、触法だろうか。たとえば、1編目の「青田Y字路」の豪士は、おそらく触法という意味での犯罪を犯しているけど、周囲の彼を疑う人たちもまた、触法ではないけれど罪を犯しているような気がする。そして周囲の人たちはそのことにまったく自覚的でない。一方、2編目「曼珠姫午睡」の英里子など、罪にもならないちょっとした秘めごとを罪と感じているのでは。法に触れれば罪、自分がそう思えば罪、そして無自覚なままに犯される罪もある……。
    「青田Y字路」で特に感じたんだけど、三人称で書かれていながらときどきふわっと視点が変わるような違和感があって、なるほど、三人称で書くってけっしてニュートラルな立場ではないんだなと思った。よくある書き方だと、三人称で書いていても、たとえば主人公を中心に据えていたり、一定の固定された視点から語っているものだと思う。それが豪士寄りだったり別の登場人物寄りだったりと定点が変化する。この書き技をもって、犯罪って何だろう、だれが罪を犯した人なのだろうと考えさせる吉田修一の巧みさよ。

  • 2018.2.8
    踏み外す人にはそれぞれの理由がある、当たり前だけど。でもそんな理由を抱えてるのはこの世のほとんど全員だよ。

  • 人間の内側、 自分さえも気づかない機微を描いてゆく様が鋭い。転がしてしまうのは神か悪魔か。
    短編集。どの話もありがちな人間のありがちな日々。なのにどうして『犯罪』と呼ばれるものに一歩踏み出すことになるのか、読んでいて悲しく切ない。
    「白球白蛇伝」では、蚊帳の外のはずの私も号泣。

著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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