- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041077856
作品紹介・あらすじ
徳川吉宗の時代──。幕府勘定方に勤める旗本、井戸平左衛門は引退を迎え、隠居生活を楽しみにしていた。だが、隠居届けを出そうとしたその日、異動を命じられること。そこは飢饉にあえぐ悲惨な土地だった──。
感想・レビュー・書評
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こんなお代官様もいたのだと、胸が熱くなる物語でした。心から何よりも民の事をその地の事を思い、策を巡らすお代官様。今の政府の人間全員に読んでほしいなと思います。
大飢饉で荒れている岩見の地をなんとかしようとするお話で、なかなか難題がおし続けてきます。でも、穏やかでおちゃめなお代官様と、ずっとお代官様に使えている藤十郎のキャラが面白いので
楽しく読めます。
最後は涙がつたいます。
素敵な作品でした!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人物がみな魅力的で、読後感も良い!……少し切ないけど。平左衛門さま~、一生ついていきます。
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いも殿さま、こと平左衛門がなんとも魅力的。
こういうお殿様(厳密にはお殿様ではないらしいけど。)が
いてくれる国は幸せだね。
もちろん、農業には不作=飢饉の恐れは消えない。
芋があれば全てが解決というわけでもない。
でも、平左衛門の行った施策はたくさんの人を救った。
ま、当時のこと。
実際に労働したのは用人たる藤十郎。
藤十郎が、ちょっと、とほほで微笑ましい。
つい応援したくなる。
芋の調達では、命の危機にもさらされる藤十郎。
あの展開にはびっくりだけど、ガッツポーズ。
最後の展開にはびっくりしたけど、あれしかなかった
のかもしれない。あの時代だから。
映像化するなら、堤真一さん+佐藤健でぜび♪ -
飢饉のため、餓死か一揆の瀬戸際をサツマイモで救った人の話はなんとなく知っていたけど、場所も名前も知らずにいました。出世もせず算盤を弾き続けた後、隠居して大好きな食道楽の旅に出ようとした勘定方、旗本の井戸平左衛門。その矢先、お菓子に釣られて石見の代官に任命された。平左衛門と御用人・藤十郎のコンビの旅は面白く書かれているが、現地で見た惨状に2人は心を痛める。種芋を入手するまでの苦労。希望が見え始めた矢先のイナゴの害。武士の魂、私財を躊躇わずに手放し、知恵で逆境を乗り越えようとする。冒頭の、のほほんと算盤を弾く平左衛門の姿は微塵もなかった。これ程までに民の為に尽くした平左衛門がこんな最後を遂げるとは…。
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「世のため人のため」とは言うものの、偉人に学ぶ事がない政を担う今の政治家に井戸平左衛門の爪の垢でも煎じて飲ませたい。
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まだまだ知らない偉人がいるのね‼️
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出雲、石見、隠岐、島根県は50歳前後の2年間勤務した土地なのでとても愛着があります。そして石見人の素朴で明るくて前向きな気質に親近感を抱いています。土橋章宏 著「いも殿さま」、2019.3発行。「人望」とは、ということを丁寧に説明した物語です。江戸で勘定方勤務の井戸平左衛門は、還暦を前に引退するつもりが、大岡忠相より石見銀山の代官を命ぜられ遠く石見の地へ。飢饉で苦しみ、年貢で苦しむ民のため、殿がとった数々の施策。その一つが、薩摩の唐芋を石見に根付かせること。
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この時代にあって、かくも慈愛に満ちた可能な限りの策を尽くし、いよいよ行き詰まれば自らの命を代償に御法度破りで人命を救う、そんな人物が実在したのだね。この時代どころか、どの時代であれ希有であって出会えない。薩摩国から唐芋を持ち帰る(盗み出しだけど)の冒険譚や、僧侶の泰永が元隠密であったという設定はご愛嬌で、物語に彩りを与えてくれる。享保に劣らず平成、令和と災害が襲う。いつの世も法の遵守は基本なれど、未曽有の事態での首長の決断が問われる。改めて井戸神社に参詣しなくては。