光圀伝

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.29
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感想 : 556
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  • Amazon.co.jp ・本 (751ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102749

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えガッツリ。読了後は、ふぅ、とため息がでました。

    光圀という人物の大きさもさることながら、個人的には光圀の兄・頼重の、優しくて、すべてを包みこんでくれるような人柄に惹かれました。(光圀が義の人なら、頼重は仁の人、という感じ)
    この兄弟関係も見所かと。

    「天地明察」と時代的にリンクするところもあり、安井算哲がチョイ役で登場するのもニヤリとさせてくれます。

  • 吐き気を催すような悪童が、読書・詩作・良き師達・良き友達・悩みにより素晴らしい人間に成長する様を一気に読んだ。星三つか四つか悩んだ。
    この本を読んで学びはあるが行動には駆り立てられない。
    素晴らしい文字で書かれた漫画みたいで楽しめた。

  • 誰もが知っている徳川光圀=水戸黄門の、本当の人となりとはどんなものだったのか?冒頭からしてドラマで見かける好々爺のイメージは木っ端微塵にされ、そして圧倒されるがままに光圀の半生の奔流に飲み込まれていく。
    親や兄への思慕と不信を持ちながら、自信の志のままに自分勝手にけれど自分にどこまでも素直に光圀は生きる。やがて持ちえた「大義」をまっとうせんとする彼のもとには、彼にほれ込んだ者達が集まってくる。あるいは光圀が引き込んでくる。そうしていつしか彼は彼の引け目をクリアしていき、さらなる大目標へも突き進んでいく。けれそのためには、あまりに人の生は短い。度重なる別れがそのことを突きつける、彼の心を突き刺してくる。けれども、光圀は幾度と立ち上がり、亡者の想いをも背に乗せて、あくまで歩みを止めない。人の世は短くはかない、だからそれゆえにその人の思いを次につなげることの大事さを知りゆき、さらに「史書」のために尽力をつづける。
    その、実直な生き様が、力強い筆運びによって、ときに痛快にときに哀切に迫ってくる。話のボリュームをこれでおさめるために、もっと盛り込もうと思えば盛り込めただろうと思われる合間合間の描かれなかった挿話も知りたいと思えるほどに、魅力ある人物伝だった。
    もちろんすべて真実だとは思わない。けれども、そんなのは問題ではなくて、ただただ、描かれている光圀がとても、とても素敵だったということだけが重要で、つまりが、すごく面白かったのです、ということだけを、力強く言いきりたい。
    人一人は本当に小さい存在だ。けれども、人がつなげていくこの世界は、こんなにも大きくなっているのだ、と、改めて思わされた。

  • あまりの厚さに躊躇したけれども
    この作家の語り口は好きなので
    読み始めたら引き込まれた

    まったく知らない一面で
    優れた人は苦悩の深さも人一倍なのだなと感じた

  • 正直751ページに及ぶ大作を前に、少なからず躊躇したが、読みたいという欲求が勝り挑んだ。子龍と呼ばれた幼少期、光國と呼ばれた青年期、泰姫との結婚、光圀と名を改めて大義成就へ向かう道のり、家老藤井紋太夫徳昭との主従関係、そして「大日本史」編纂への歩みと続く展開に正直に驚いた。
    冒頭、家老藤井紋太夫徳昭を殺害するシーンが語られ、その理由が明らかになるのはラスト。すべてを読み終えると、殺害の理由に納得する。また、頼重と光國との兄弟関係は非常に興味深く、テレビ水戸黄門で御馴染みの安積覚兵衛(あさかかくべえ)、佐々介三郎(さっさすけさぶろう)の二人の登場や人物像は新鮮であった。

  • 重い…腕が痛くなりました…これが700ページの力か…

    でも、長さを全く感じず、一気に読んでしまいました。
    光圀がかっこよすぎる!
    多くを学び、誠実に生きる熱い人だったんだね…

    泰姫と読耕斎に囲まれた時間の光圀はとても幸せそうで、私もほんわりしながら読みました。
    だからこそ、泰姫の最後は辛かった…


    最近、珍しく大河ドラマを観ている自分ですが、幕府のはじまりを背景にしているこの本と、幕府の終わりの大河ドラマで、大きな歴史の流れを感じながら読みました。
    保科正之の幕府に使えた姿など、感慨深いものがあります…そんな彼の抱いていた想いが、会津を縛ったのですね。
    紋太夫の大政奉還の構想は、彼が何歩も先をみている証拠で、「頭が良すぎて怖くなる」という言葉がじんわりときました。

  • 地元の西山荘、瑞龍山という言葉が出てきて、親近感を覚えた。テンポ良く進んで行く物語に惹かれ、長さを感じさせない。

  • 骨太。

    最初、ぶ厚さに圧倒され、
    幼少期にちょっとうまく入りこめず、
    きついかなーと思っていましたが、
    途中からぐいぐいいきました。

    素晴らしい友と伴侶を得た時の安らぎ。
    それを失った後の埋めきれない空虚。
    しかし、それでも人は生きて繋がっていく。
    まさに史書を編んだ偉人の生き方でした。

    ラスト。
    本当に素敵な終わり方です。
    ここまで読んできたことを微塵も後悔させません。
    ありがとうございました。

  • 水戸光圀をきちんと描いた作品に触れたのは初めてで、ドラマ時代劇の“黄門様”のモデルになった人、くらいの乏しい知識しかなかった。
    作中でも“虎”と比喩されるくらい猛々しい人だったと知って驚いた。

    前作の『天地明察』は一生をかけて暦を作り上げた人の話だったけど、今作は、一生をかけて歴史書を作ろうとした人の物語。
    作品の冒頭部分で光圀が殺したのは誰だったのか、というミステリー要素をスパイスのように効かせながら、水戸光圀の幼少から死ぬまでを描いた、大河ドラマのような一冊。

    徳川御三家のひとつに生まれた光圀は、戦国から泰平の世へ移り変わった直後の時代の中で、客観的に俯瞰で書かれた歴史書の必要性を感じ始める。
    これまでは、為政者が作った為政者に都合のよい歴史書しかなかった。
    それでは、数多の先人の考えや行いが“無”になってしまう。
    「人の世は常に繋がっており、先人の成したことが地続きとなって今の世があり、この時代もまた、脈々と後世へと繋がっていく」
    光圀が人の生き死にに直面するたびにその思いは強くなっていく。
    こうして彼が着手した歴史書の編纂は、彼の意思を受け継ぐ者に引き継がれ、明治時代に完成する。
    まさに彼が感じたとおり、思いは脈々と後世へと繋がっていったのだ。

    『天地明察』でこの著者のファンになったので読んでみたわけだけど、大正解だった。
    かなりの厚みがある本だし、冒頭がいきなり古語だったから「難解か…?」と思ったけど、そんなこと全然なくてグイグイ引き込まれた。
    途中で出てくる論語だとか漢文だとかもちょっと苦手だったけど、それを凌駕する面白さだった。
    子供の光圀が、父親や周りの大人たちに訓練され、また、一流の人物との出会いや貴重な体験を通して成長する少年期・青年期はの勢いが気持ちいい。

    歴史上の人物って、空想の人物みたいにリアリティーがない存在じゃない?
    本の中、テレビの中の人であって、私という現実社会で生きている人間とは無関係な存在のように感じてしまう。
    だけど、この作品を読み進めるうちに、「ああ、こうやって泣いたり笑ったりしながら、私と同じ時間軸の線の上で生きていた人なんだなぁ」って、光圀という人をリアルに感じた。
    この人の人生も、私の認知してない部分で私の生活と繋がっているんだろうなって。
    そして、光圀にとっての未来を、私たちは過去の歴史として知っているというのが、当たり前なんだけど、なんか不思議な、妙な感覚に囚われた。

  • 読みごたえがあって、かなり面白かった♪

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「かなり面白かった♪ 」
      早く文庫にならないかなぁ~
      「かなり面白かった♪ 」
      早く文庫にならないかなぁ~
      2013/08/23
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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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