ミラーワールド

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 611
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109915

作品紹介・あらすじ

「だからいつまで経っても、しょうもない女社会がなくならないのよ」
「男がお茶を汲むという古い考えはもうやめたほうがいい」
女が外で稼いで、男は家を守る。それが当たり前となった男女反転世界。池ヶ谷良夫は学童保育で働きながら主夫をこなし、中林進は勤務医の妻と中学生の娘と息子のために尽くし、澄田隆司は妻の実家に婿入りし義父とともに理容室を営んでいた。それぞれが息苦しく理不尽を抱きながら、妻と子を支えようと毎日奮闘してきた。そんななか、ある生徒が塾帰りの夜道で何者かに襲われてしまう……。

「日々男女格差を見聞きしながら、ずっと考えていた物語です。そんなふうに思わない世の中になることを切望して書きました」――椰月美智子

感想・レビュー・書評

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  • 椰月美智子作品、初読み。読友さんの感想を読んで興味を持つ。女尊男卑だったら?という世界を忌憚なく表現した作品。働くのは女性、家事は男性。PTA役員に奔走する男性。婿と姑の戦い。妻が部下の男性にパワハラ・セクハラをして訴えられる。性交中にドS妻に弄ばれる夫(一番ショックでした)。息子が暴漢に襲われる。なるほど。胸糞悪いお話しだけど、全て女性、妻が胸糞悪く思っていることだったんだ。若干盛っているのだが、妻や女性に対して敬意を持つのが当たり前。逆も然り。全体的に辛い話しだったが、色んな気づきがありました。⑤

  • 荒れっぽい女の子と、大人しく優しい男の子。
    部長としてバリバリ働く妻と、家庭を支える夫。
    パワハラを強行する女と、セクハラに耐える男。

    そう、ここは男女(女男)が逆転した世界だ。
    逆にするとなんで違和感が生じるんだろう。という、社会に対する問いと挑戦。

    現実社会はあまりにも性別による差がありすぎるなと気づく。
    なんで、現実の女性たちは、違和感がありすぎる理不尽だらけの世界で、まるで何ともないようにしているんだろう。
    物語の中の男たちは、女尊男卑されているだけでこんなに苦しんで叫んでいるのに。
    いや、現実でも叫んでいる女性がいるはずだ。なのに社会ではそんなに深刻に捉えられていない。

    それと同時に、優位に立たされている男性側って普段こんな気持ちなんだなとも擬似体験することができた。
    めんどくさいことは全部あっち側に押し付けることができる。理不尽なことをしても別にいい、仕方ないなと思う。
    優位に立たされている性別側は、もう一方の性別側に対して「関係ないな」と思う。
    ただ、性別が違うだけで。

    「当時、仕方がない、こういうものだ、と思っていた出来事は、まったく仕方のないものでも当たり前のことでもなかったのだ。悪はいつだって女の無自覚と無関心だ。いつまでも女に従順な男でいる必要はないのだ。」
    (26ページより)

    「心のどこかでは自分の過失を認めおびえているくせに、女の自分が男に対して大きな声でまくし立てれば、自然と問題が解決して、犯した罪さえも消えると思っている、見当違いの自信に満ちた卑屈な顔だ。」
    (97ページより)

    なぜ、男と女を入れ替えるだけでこんなに違和感が発生するのか。

    本当の意味で男女が平等になるのは難しくて、現実がそんな世界になるのはまだまだ遠いんだなと思わされた。

    気づきは多くあったけれど、私も無意識の刷り込みがされていたのでいちいち脳内で変換して内容を消化しないといけず、物語としては楽しめなかった。
    そして、脳内で変換してしまうと、それはただの男性優位な現実の日常を描いただけのものになってしまった。
    たくさんの気づきがあった。

    俊太くんが素敵な子だった。

  • 多様性社会の今こそ読みたい、男女逆転小説2作品 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/699882

    「ミラーワールド」 椰月 美智子[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000357/

  • 衝撃的な事件から暗転した先は、女尊男卑の世界だった。外で働くのは女性で、男性は家庭を守るという女性優位の流れの中で、「これが当たり前だ」と不満から目をそらしながら生きていく男性たち。設定や世界観は非常に興味深く、面白かったが、作者の言いたいことがストレートに出すぎかなという気もした。

  • 女尊男卑の世の中だったら、のお話。
    男尊女卑だったら普通に受け止められる事が逆になると違和感がある。
    そんなことがあってはいけないの思いを強くする。
    男女平等、それぞれの立場を重んじる世の中になる事に願いを込めて。
    でも、面白かった!
    家庭を守るお父さんの不平不満など、逆だとこうなのねと笑えた。

  • この世の中が女社会で廻っているという図がどうにも最初は馴染めなくて、逆なんだ逆なんだから…と思いながら読み進めていった。

    男が子育てをして家事に励む。
    女は、家族の為に働くだけ、子育ても家事もしない。それが当たり前の日常の世界。

    だんだんと女に怒りを覚えてくるのは何故⁇
    現実では逆なんだけど、当たり前すぎて慣れてしまっているのか…と思ってしまう。

    今の世の中が、大きく変わっていくことに少しの可能性もないのだろうか…と考えてしまった。

  • 衝撃的なプロローグがあり、舞台は一度暗転する。
    そして世界が再び物語を語り始めると、その世界は男女が逆転している世界だった。
    女性によるDV、女性が男性の体を揶揄し、店は夫に任せて自分はパチンコ三昧、政治家も当然女性ばかりで、重用されているのは女性におもねる男性ばかり。
    違う、私が目指したいのは、こんな世界じゃない……!
    でも、皮肉なことにこれが女性から見た今の日本社会だ。
    逆転させてみれば、それを当たり前だ、と「この」世界で納得する人は少ないだろうに。

    さて、物語は同じ中学校に通う3人の男の子の父親がメインだ。
    池ヶ谷良夫は学童の支援員。かつては教職についていたが結婚を機に辞し、もっぱら主夫業。
    妻は、使えないと夫をなじる。
    学童にいる別の男性支援員は、トラブルを起こしがちな女の子を見て、父親の育て方が悪いからと決めつける。
    中林進は、同じPTA役員の池ヶ谷を見て、男がお茶出しすることくらい当たり前だし、女に楯突くなんて、と女性に擦り寄るタイプ。
    その息子、蓮は苦悩を抱えている。
    澄田隆司は美容院を切り盛りしているが、舅とうまく行っていない。

    物語はパラレルワールドとしてプロローグを塗り替える。
    誰かの立場に立ってみたあなたの優しさが、世界を変える、そう捉えても、いいよね?

  •  男女の役割が逆転した社会で、女尊男卑の考え方に疑問を覚えた男たちと子どもたちの話。
     すごい労作だ。
     現状に悶々としている身で読むとびっくりするぐらい衝撃がない。むしろ長年身に染みついた価値観にびっくりした。いずれにせよ、不平等、不公正に疑問を抱く者としては、どちらもおかしいわけで、どっちが上だからという話ではないんだよなと思う。
     飜って、現状に違和感を抱いていない人が読んで、ぴんとくるかというと…… 悩ましい。これでぴんとくる人ならとっくにわかっていそうだし。わからない人には伝わらなそうだし。
     作中、子どもたちに希望がもてた。
     テーマとしては、Netflixオリジナルのフランス映画『軽い男じゃないのよ』を思い出した。

  • もしも、男と女の立場が逆転していたならば・・・。
    政治は女社会。
    仕事面では女は仕事、男は家事と育児。
    結婚したならば、婿が妻のところに嫁ぐ。
    これらが当たり前という世界で、三家族のそれぞれの主夫が、女尊男卑社会の中、日々の生活に奮闘していた。そんな時、ある生徒が夜道に何者かに襲われる。


    男女が反転するという面白い設定で、気軽な気持ちで読み始めたのですが、意外とリアリティーやシリアスさがあって、真剣モードで読んでいた自分がいました。

    夫婦(作品では婦夫)の関係や親子の関係、友達の関係など、それぞれが生きづらさを抱えながらも、コミュニケーションすることの大切さが伝わってきて、色々考えてしまいました。

    三家族にスポットを当てるということで、別の作品「明日の食卓」と似ていますが、ミステリーというわけではありません。
    「明日の食卓」では、ある子供が死ぬというショッキングな始まりで、この子供は誰なのか?という念頭において、三家族を紹介しています。

    この作品では、各章の始めは、ある生徒の独白なのですが、誰なのかは後で明らかになります。この生徒は誰なのか?というミステリーっぽい面白さはありますが、基本的にはヒューマンドラマになっています。

    それぞれの三家族の主夫が、妻や子供のために家事や育児にと大変な日々を送っています。小説に出てくる登場人物を男→女、女→男に変換すると、やっていることはほとんど現実と同じです。

    なのに、より身近に感じました。
    今までは、なんとなーくぐらいしか理解できなかったのが、変換されることによって、登場人物の気持ちが理解されやすくなったように感じました。

    特に女性の上から目線や積極性に腹が立ちました。でも、現実に置き換えると、男性が同様なことをしていると思うと、同性として情けなく感じてしまいました。

    男性が読むと、同じような気持ちになるのでは?と思いましたし、女性が読むと、共感する気持ちやスカッとした気持ちになるのでは?とも思いました。
    とにかく、読む人によって、様々な楽しみ方が味わえると思います。

    一応、現実とは別の世界という設定ですが、近い将来、小説のような現実があってもおかしくないなと思いました。

    色々な事情があれども、人と人とのコミュニケーションは大切だなと改めて感じました。
    しっかりと会話をし、感謝する気持ちを常に忘れない。

    軽い気持ちで読んだ「入口」が、いつの間にか真剣に考えてしまった「出口」になってしまったことに自分でも驚きでした。

  • 改めて、自分にも固定概念が定着していることに気づいた。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川県本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。『明日の食卓』は21年映画化。その他の著書に『消えてなくなっても』『純喫茶パオーン』『ぼくたちの答え』『さしすせその女たち』などがある。

「2021年 『つながりの蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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