- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041113448
作品紹介・あらすじ
ある街にひっそりたたずむ、椎木夫妻が営むメンタルクリニック。仕事、恋愛、友人……。さまざまな悩みを抱えて訪れる人に対して、夫婦は優しく寄り添っていく。ふたりにも過去に背負った傷があって……。
感想・レビュー・書評
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駆け抜けるように読め、読後の爽快感を味わえる作品だった。しかし、内容は、登場人物の心が塞がってしまう場面が多く描かれてあり、重たいものだった。なのに、なぜそう感じたのだろう。
誰にも言いたくない辛い出来事は、人によって違うだろう。その辛さは、分かってほしいと期待する近い人にも伝わらない時がある。そうすると、次第に近い人だから、伝えられなくなる時もある。そんな時は、どうしたらよいのだろう。話すだけで涙が出てきそうなことは、なかなか口に出せないもの。だからこそ、もし口に出せたら、最後までゆっくりと聞いてもらいたいと願う。それだけでも心が少し和らぐから。
作品には、そんな心が塞がってしまった登場人物たちに2つの居場所があった。それは、純喫茶・純と椎木メンタルクリニック。そこには、ゆっくりと最後まで話を聞いてくれる人がいた。登場人物たちが、それぞれの辛さを言葉にしていく過程は、心が揺さぶられ、胸にぐっとくるものを感じた。その辛さを受け止めて、包み込みながら寄り添ってくれる登場人物たちがいた。それは、一方向ではなく、互いに受け止める双方向になっていた。打ち明ける立場になることもあれば、受け止める立場になることもあった。そんな温かい関係が心地よい。そんな人たちがいる場所があることが、心を和らげてくれたのだろう。大丈夫だよというやわらかく温かい言葉は、登場人物たちの心に沁みていくものになっていた。その言葉は、その人が丸ごと受け止めてくれているメッセージのようにも感じた。心が疲れている時にかけられるやわらかく温かい言葉で、ふっと緊張が和らぎ、詰まった思いを思いきって出せそうだ。そして、何でも話していいという気持ちになれる気がする。
それぞれの章で、登場人物たちの背景が徐々に明らかになっていき、登場人物たちが偶然にも繋がった意味やめぐりあわせの幸せや運を感じた。こんなめぐりあわせは、誰にでもあることなのかもしれない。でも、そのめぐりあわせを気づかないこともたくさんあるのだろうな。それも、運だという気もする。
初めての窪美澄さんの作品であった。またの機会に、窪さんの作品を読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
背中をそっとおすのではなく、やさしく支えるような感じが心地よく、これから転機を迎える方というより、休息が必要な方向けの作品なのかもしれない。
心が疲れているときは十分な時間と、すぐそばにいる方の支えできっと良くなる。この作品を通じて、そう思わせてくれた。
欲を言えば、多くの作品を読んだわけではないが、窪さんらしさがもう少し感じられたら良かったかな、と思う。また、とあるシーンで、自分の中でどうしても消化できないところもあった。
とはいえ、登場人物ごとの視点で章をまとめ、関係性をうまく整理しながら話を作り上げる巧さは今作も健在といえる。-
こんにちは。日を跨いでわざわざコメントありがとうございます。
自分も図書館派で、好きな作家さんの最新作発売の際は早めに予約して、世に溢れるネ...こんにちは。日を跨いでわざわざコメントありがとうございます。
自分も図書館派で、好きな作家さんの最新作発売の際は早めに予約して、世に溢れるネタバレ攻撃を受けないうちに頑張って読んでます。二週間で読まないといけないので、焦って読んでいますが、じっくり読みたい作品もあるので、買ったほうが良かったと後悔することもあります笑
この作品の感想とはかけ離れた返信となり、失礼しました笑 よかったらまたコメントいただけると嬉しいです。2023/08/19 -
作家的には大好きな部類の窪美澄さんです。アカガミから入った私はこんな世界を描く人はどんな人なのだろうと想像を膨らませ過ぎて、窪美澄さんを色々...作家的には大好きな部類の窪美澄さんです。アカガミから入った私はこんな世界を描く人はどんな人なのだろうと想像を膨らませ過ぎて、窪美澄さんを色々読み漁ってもアカガミを超える作品に出会っていません。全部読んでは居ないのでこれからも読みたいのですが、私も読むのが遅いのとBOOKOFF派なので値段が高いと買いません(笑)安くなってから読むのでブームは過ぎ去ってしまいます。皆さんのコメントを読んで買いたい作品を日夜探しているのです...あはは。これからもコメントよろしくお願いします。2024/03/11
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コメントありがとうございます。
自分も多くは読めていないですが、好きな作家さんです。
独特な世界観で、どの作品も心をぎゅっと掴まれるもの...コメントありがとうございます。
自分も多くは読めていないですが、好きな作家さんです。
独特な世界観で、どの作品も心をぎゅっと掴まれるものばかりですよね。
自分はかさばるので、ひたすら図書館で借りてます。
発売してすぐに貸出始まるのでおすすめです。
唯一、作家さんにお金をお支払いしていないのが心苦しいところですが、、
アカガミ読んでないので、今度借りてみようと思います。2024/03/11
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泣いた(৹ᵒ̴̶̷᷄﹏ᵒ̴̶̷᷅৹)
とにかく泣いた(´;ω;`)ウゥゥ
私も心が疲れてるのかな?
メンタルクリニックに通う人達の連作短編集です。
サクサク読める文体だし、どれもがどこかで聞いたようなお話なので、初めは軽い気持ちでページを捲っていました。
でも、それぞれの人たちが、メンタルクリニックで話を聞いてもらうだけで涙がボロボロ零れてしまうのを読んでいると、もうこちらも涙が止まらなくなってしまって(இωஇ`。)
登場人物は皆、自分をダメ人間と思っていて、こんな自分は価値がないと思っているのです。他人に認められないのは辛いけど、自分自身を受け入れられないのはもっと辛いですよね。
そんなことよくある話、大袈裟に考え過ぎだよなんて、人にも、そして自分自身にさえ軽く思ってしまうことはあるけれど、それではいけないな、と強く感じました。
同じ経験をしても感じ方は人それぞれ。強い人もいれば弱い人もいる。そして弱いことが悪いことじゃない!ということを優しく教えてくれたお話でした。
……やっぱりちょっと今、私自身疲れてるんだろうなぁ。いいタイミングで読めて良かった(о´∀`о) -
メンタルクリニックのお話。
じんわりと心温まる内容でした。誰かを頼っていいんだよと教えてくれる作品でした。 -
読んでよかったなぁ~と思えた作品です。この作品は今までの作風とは違う…らしい、けど私は好きだなぁと感じました。
まず、この表紙、しらこさん、乙女の本棚シリーズの「Kの昇天」も手がけてらっしゃる方なんですね!そして6編の短編のタイトル、チェックしながら読むと美術館巡りができちゃうような…それぞれが名画のタイトルになっているんです。第5話の「夜のカフェテラス」は、この作品の裏表紙のような…。
ストーリーは、椎木夫妻が営むメンタルクリニックとその近くにある「純喫茶純」が主に描かれています。将来のことや、家族のこと、恋人のこと、仕事のこと…みんな様々な悩みを抱え、心がいっぱいいっぱいになって…そんな人たちの悩みを聴いてくれる、寄り添ってくれる…そんなかけがえのない場所があるっていいなって、感じました!いつもの日常に疲れたときの処方箋的な作品にもなりえるのではないかなぁ~。
心療内科の敷居がちょっと下がったような…でも、もし私が心の病になっても、近くの心療内科には行きたくないなぁ…だって近くの心療内科は評判めちゃくちゃ悪いんだもん…。 -
初めて読む作家さんでしたが
ランキングの上位にあって気になり
手に取りました
メンタルクリニックに通う人々を綴った連作短編
なんとなく他人事と思いがちだけど
実はとても身近な話で、
誰でも心が疲れる時があるよと気づかせてくれます
自分としてはやっぱり
産後うつの話が共感するところが
たくさんありました
産後のメンタルってホントに荒波のようで…
あの時期はホントに辛かった。
でも作中の椎木夫妻との会話に
当時の私の心のつっかえというか
疲れた心がほぐれていく感じがしました。
人生はほどほどでいい。
何度でもどこからでもやり直せる。
完璧な人なんていない。
そんな言葉が沁みてきます。
優しくて、疲れてる心を
温かく包んでくれるような作品です
作中に出てくる純喫茶もすごく素敵で
家の近くにあったら通っちゃうよなー
メンタルクリニックと純喫茶が近くにある人々を
羨ましく思ったり。
優しさに触れたい時に
読んでみて欲しい一冊です -
「ひどく心が疲れてしまうこと…
人間だもの、そういう時期は誰にでもあるよね。
でもね、人間は完全な丸じゃないし
誰だってどこかが欠けているものなの。」
ほんとにそうですねぇ。
完全をめざすのじゃなく程良く力を抜かないと。 -
町の片隅にある一軒家で、精神科医の夫・旬とカウンセラーの妻・さおりは「椎木メンタルクリニック」を営んでいる。
夫婦で患者に寄り添う治療は、とても癒やされ安心できる。
そして近くには純喫茶・純があり、そこでバイトしている澪は大学へ通うことができないほど心身が病んでいた。
第1話 キャンベルのスープ缶 澪のうつ病
第2話 パイプを持つ少年 サラリーマンをしながらイラストを書いている直也がADHD
第3話 アリスの眠り 自信がなくてうまくいかない恋愛に悩む麻美
第4話 エデンの園のエヴァ 子育てがうまくいかず育児ノイローゼにパニック障害をおこす美菜
第5話 夜のカフェテラス 旬とさおりの出会いからさおりが子どもを亡くして鬱になり、旬が精神科医になるまで
第6話 ゆりかご 純喫茶の純が産後うつとパニック障害で娘を置いて離婚となったこと
エピローグの澪ちゃんのキラキラ度を見て、寄り添ってくれる人と話を聴いてくれる人がいることで、人ってこんなにも変われるんだということがわかった。
クリニックと喫茶の繋がりも良いなぁと感じた。
すぐに手を貸してくれる人のありがたさは、身に沁みる。
情報過多ではある現代、やみくもにネットに頼ることよりも信頼できる人との繋がりが如何に大切かということ。
目を見て話を聴いてくれる人がいることはほんとうにありがたいこと。
文中にあった「休み、休みでいいじゃない。誰かを頼っていいんだよ。」は心に沁みる言葉だ。
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東京郊外のとある町を舞台にしたヒューマンドラマ。中心になるのは住宅街の目立たない心療内科と駅近くの通りにある古い喫茶店。
そこは、真面目で優しく繊細であるがゆえに心がくたくたに疲れてしまった人たちをゆったり優しく迎えてくれる場所だ。
支える人、支えられる人が紡ぐ物語。全6話およびエピローグからなる。
◇
地方から大学進学のため上京した澪。母子家庭なので仕送りは最低限。週4日のアルバイトで生活費を賄わなければならず、華やかさとは縁遠い日々だ。
通うのは都心の女子大。
目に映る学生は皆、自信に満ち溢れキラキラしているように見える。自分は地方出身で垢抜けないと思っている澪にとっては近寄り難い。また、都内出身者のほか内部進学者も多いためすでにグループができあがっている。
そんなこんなで引っ込み思案な澪は自分の居場所を見つけられずにいた。
始まったばかりのキャンパスライフ。なのに疎外感と孤独感に苛まれる澪は、早くも精神的に不調を来たしはじめていた。
(第1話「キャンベルのスープ缶」)
* * * * *
どれもいい話だった。誰もがスムーズに苦しみから解き放たれているように見えるが、短編が6つもあるため仕方がない。
この作品の肝は、椎木夫妻や純さんが精神的に深刻な苦しみを味わい、そこから懸命になって脱した経験を持っているということだろう。
だからこそ第4話から最終話が、3話目までの主人公たちの快癒にリアリティを与えるのだし、作品に深みをもたらすのだと思う。
精神科の臨床医や心理カウンセラーには挫折を知らずに知識先行でクライアントに当たる人間は向いていない。 ( さおりさんが最初にかかった医師などはまさにそのタイプだろう。)
頑健そのものの人間には病弱な人の気持ちはわからないし、強靭な精神の持ち主には繊細で傷つきやすい人の気持ちは思いやれない。同じように、苦労知らずで生きてきた者には不幸に見舞われた人の気持ちは理解できないだろう。
現代でも、肉体的や精神的に弱さを持つ人の割合は、昔と比べてさほど変わらないように思う。なのに自殺者が後を絶たないほど増加しているのは、気持ちに寄り添ってくれる人が少なくなったからではないだろうか。
そしてそれは、環境や家庭に恵まれて生きていける人が増えた結果、弱い人の気持ちを理解できない人間が増えたからなのかも知れないなと思いました。 -
誰だって無理を重ねたら、心が疲れて
しまう。自分の人生に完璧でありたい。
それは心が、止まれの注意信号を出して
いる。ほどほどでいいんだ。
人生長いんだから。
注意散漫?、忘れっぽい?、社会のルールが守れない?。注意散漫は好奇心旺盛のしるし、ルールが守れないのは創意工夫のほうが上手だと思いたいよね。
忘れっぽいのは、ものごとを根に持たない人。どれもポジティブに考えよう!
椎木メンタルクリニック、この本では
心の病を持った人々がここに通う。
診療内科、というと最初は通うことに抵抗を感じる人が多い。でも、このクリニックは少し違った。優しさに溢れ、事務
的なところはない。けれども――
旬先生、さおり先生には乗り越えてきた
過去があった。それがあったから、今の
クリニックがある。
それはとても・・・・・
この本には、そのお話ごとに幾つかの
絵画が登場する。そのひとつにピカソの
「パイプを持った少年」という絵があった。私は、ピカソの絵は個性的な変わった絵が印象強かったので、Googってみた。良い絵だった。ピカソの絵は変わった絵ばかりではなかった(笑
人は皆、満月ではなく大なり小なり
欠けている。肥満体の三日月や、痩せた
三日月も夜空に浮かんでいるのだろう。
ものごとは考えこまない!
明日になったら忘れてしまおう!
自分が思う程、人は自分に興味など
示してはいないのだから・・・・・
2023、8、20 読了