幽霊絵師火狂 筆のみが知る

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 577
感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041117323

作品紹介・あらすじ

大きな料理屋「しの田」のひとり娘である真阿。十二のときに胸を病んでいると言われ、それからは部屋にこもり、絵草子や赤本を読む生活だ。あるとき「しの田」の二階に、有名な絵師の火狂が居候をすることになる。「怖がらせるのが仕事」という彼は、怖い絵を描くだけではなく、ほかの人には見えないものが見えているようで……。絵の中の犬に取り憑かれた男(「犬の絵」)、“帰りたい”という女の声を聞く旅人(「荒波の帰路」)、誰にも言えない本心を絵に込めて死んだ姫君(「若衆刃傷」)。彼らの想いに触れることで、生きる実感のなかった真阿は少しずつ変わっていく――。

感想・レビュー・書評

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  • 火狂という画号の有名絵師の興四郎が、料理屋の
    "しの田"に居候するところから物語が始まる。
    興四郎は幽霊の絵を描く。その絵を見たいのと
    興四郎に興味がある料理屋の一人娘の真阿。興四郎の部屋に行くようになるのだけど、この二人のやり取りが好きだな。興四郎は真阿を子供扱いをせずに
    一人の人間として接する。真阿にとっては興四郎は
    頼りになるお兄さんみたいな感じかな。興四郎の
    おかげで世界が広がって嬉しかったのではないかと思う。

    幽霊の絵を描くということで、絵が原因で怪奇現象がおきる。絵師が一筆一筆魂を込めて描いた絵は、
    なにかが宿ってしまうのだろう。そういう絵が
    不思議と、興四郎のところに来る。もともと霊感があるせいなのかもしれないけど。
    真阿はその影響なのか、そういう性質なのか絵に
    関係する夢を見るようになる。で、この二人が絵と
    怪異の謎を解いていく。短編集で一話一話が謎を解いてスッキリという結末ではない気がする。
    私はスッキリして終わるのが好きなんだけど、
    この作品はモヤっとする終わり方がいいのかも。
    どの絵も物悲しいから。物悲しい余韻に浸るのもいいかなと思う。

    読み終わり、幽霊の絵や絵が原因の怪奇現象より、
    生きてる人間の悪行のほうが怖いと思った。
    怪奇現象は伝えたい事があって起こってる。
    「そいつが悪い奴」と教えてるだけ。そんな絵たちの思いがただ哀しい。

    続編があればいいのにと思う。興四郎と真阿を
    見守っていきたいな。真阿の絵と裁縫が上達するかが気になる。

  • 静かに読ませる一冊。

    怖い絵を描く幽霊絵師と不思議な夢を見るお嬢様。その二人に舞い込む、絵に纏わる不思議な出来事。

    ほんのり怖さとほんのりミステリの融合といった物語は小ぢんまりした世界観で騒々しさとは無縁、静かにしっとり読ませてくれるのが良い。 

    火狂と真阿の近過ぎず…の距離感、お互いを認め合う関係、限られた世界に居ながらも大きな世界を見ているような真阿が感じ良い。

    仄かな哀しみも込められた絵に二人は何を見出していくのか…ふわっと解き放たれた想いが昇華していくような感覚は哀しくもあり、美しくもあり…それが良い塩梅。

  • 幽霊絵師・火狂と居候先の一人娘・真阿

    見えざるものを見、呼び寄せる。
    火狂の絵に呼応するように不思議な夢を見る真阿。

    時代背景は明治維新の数年後かな?
    短編8作どれもなかなか良い。
    冷静で聡明な真阿、静かな優しさを持つ火狂
    二人の関係がとても心地よく、この世に未練を持つ
    者が供養されてゆく。

    シリーズ化してくれないだろうか…
    まだまだ火狂の幽霊画を見てみたい。

  • 短編の集まりでプロローグ、エピローグを追加されて一冊の本になってる。
    荒波の帰路で小舟の絵と帰りたいという声の聞こえる夢が、ラストぞくーっとした。鳥肌立つ怖さ。
    そこまで怖くないんだけど、背筋がゾクゾクってくる感じ。
    表紙の絵がとてもいいです。絵師の話に相応しいイメージ。

  • 幽霊絵を描く絵師、火狂には霊感があった。そして彼が身を寄せる料亭の娘、真阿もまた火狂に呼応するように不可思議な夢を見る。
    霊感をもつ二人が、絵にまつわる悲しい物語を紐解き、供養していく物語。
    幽霊よりも、生きている人間が犯した罪の方が恐ろしい、そんな話だ。
    まだ物語は続くようで、続編が楽しみ。

  • 明治の初めごろの話。
    絵師の火狂こと興四郎が、大阪の料理屋しの田に居候する。しの田には娘の真阿がいて、興四郎に懐く。
    連作短編。
    全部面白かった。
    特に表題作の「筆のみが知る」の、理不尽さと切なさがとても好き。
    シリーズになるのかな?
    また続きを読みたい。

  • 普通の人には見えないものが見える“幽霊絵師・火狂”こと興四郎と不思議な夢を見る少女・真阿を巡る怪奇譚。
    連作八話と興四郎のモノローグ風の序章&終章の構成でございます。

    時は明治初期。大阪の料理屋〈しの田〉に、有名な絵師・火狂が居候をすることになります。
    〈しの田〉のひとり娘で、十二歳のときに胸を病んでいると言われ、部屋にこもっていた真阿は、“怖い絵”描く火狂こと興四郎に興味津々で・・。

    好きなんですよね~・・このジャンル。
    絵に関わる謎や秘められた背景を、“視える”興四郎と、真阿の見る夢が連携し合って、紐解かれていく展開で、ゾクっとしたり哀しい物語ではあるのですが、一つ一つの話自体はアッサリしている為、サラサラと読めますし、それでいて程よい余韻があるのが良いのですよ。
    個人的に好きだったのは、真阿の出生と過去の凄惨な事件が関わる第一話「座敷小町」と、興四郎の家族にまつわる哀しい過去が描かれた第八話且つ表題作「筆のみが知る」ですね。
    真阿も興四郎もお互いに、自分の家族について哀しいものを抱えていることが二人の心を通わせるものがあるのかも・・と思いました。
    興四郎が、大きな身体で飄々としたキャラなので、このすべてを受け入れてくれるような安心感も魅力です。

    近藤さんといえば、“猿若町捕物帳シリーズ”が好きだったこともあって(未だに続きを待ち続けています!)、本書のような時代ミステリ系をもっと書いてほしいです・・という訳で、“幽霊絵師火狂”もシリーズ化を熱望します~。


  • 幽霊絵師 火狂(かきょう)

    序幕
    座敷小町
    犬の絵
    荒波の帰路
    堀師の地獄
    悲しまない男
    若衆刃傷
    夜鷹御前
    筆のみが知る
    終幕


    人には見えないものが見える絵師 興四郎。

    彼が描く絵は恐ろしくて美しい。

    絵に込められた悲しくて切ない想いは、
    ある人には恐ろしく、別の人には美しく見える。

    生者と死者の想いを絵が紡ぐ、不思議な物語。

    空気になって漂いながら、
    違う時代を覗いてきた不思議な気分です。

  • 不思議な魅力のある作品。
    静かに吸い寄せられるように読んだ。

  • ミステリー要素のつまったこういう設定の時代小説、読む前からワクワクする。幽霊画を得意とする絵師、その絵師のところに持ち込まれる掛け軸は、どれもいわくつき。まだまだ回収されてない伏線もある。ドラマになってもおもしろそう。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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