- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041121597
作品紹介・あらすじ
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。
語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。
従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。
休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだす――。
感想・レビュー・書評
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522ページ
1900円
4月16日〜4月17日
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、黒白の間に人を招き、いっぷう変わった百物語をしている。語り手が一人に、聞き手も一人。語られる話は一つだけ。『語って語り捨て、聞いて聞き捨て』聞き手を引き継いだ富次郎が、今回聞いた話は、虻に憑かれた姉の代わりにのろいを引き受けた弟、餅太郎の話。渡し船の船頭である兄が恋したのは、川の神である大蛇。なぜか土鍋の中にその蛇がいて...。湖の底を越えてつながった二つの村。〈ひとでなし〉に
襲われた羽入田村の人を助けるために、中ノ村の人たちが立ち上がる。
怪談話のシリーズ8作目であった。それでも3つの話が独立しており、読みやすかった。不思議で怖くて、ちょっとおかしくて、引き込まれてしまった。シリーズの1作目から読んでみたい。 -
おちかさん親子が健やかでありますように。
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百物語も8作目になるのですね。
今回も少しゾワゾワしながら楽しく読めました。
表題作だけあり『よって件のごとし』が一番読み応えがありました。
百物語そのものも面白いですが、おちかや富次郎など登場人物のお話しも好きです。 -
こんなまっとうなことがつらいなんて、何て幸せなのでしょう。
…刺さりました
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初出2020〜22年高知新聞ほか
シリーズ第8作で、3中編。
「賽子と虻」
語り手の餅太郎は、11歳の時に姉に掛けられた呪いを代わりに負って、産土神で博打の神様の”ろくめん様”の里(異世界)に連れて行かれ、神様たちがやってきて博打を打つ旅籠の掃除の下働きをして過ごしていた。突然その神の里が焼け落ちて崩壊し、元の世界に戻ると3年が過ぎていて、その間に国替えがあり、新領主により神社が焼かれ、人々は処刑されたり、強制移住させられていて、餅太郎は隣国へ、さらに江戸へと逃れたのだという。
博打で失敗する神様もいるが、餅太郎が神々の近くで感じる畏怖がとても印象的。
「土鍋女房」
語り手の女は代々の川渡守の家の娘で、寡黙な兄が縁談を総て断わっていたのは川の主の白蛇を女房にしていたからと知り、土鍋の中にいるのを見てしまう。縁談相手が押しかけて来るようになって、夢で白蛇は兄を連れて行くといい、兄は川の荒波の中に消えた。
怪異譚よりは、嫁に行ったおちかの出産が近いこと、そのために女中のおしまが移ったこと、他家で修行中の長男伊一郎の縁談のほうがよほど気になった。
「よって件のごとし」
語り手は元肝煎で、32年前の異常寒波の冬至の日にゾンビが深い池の底から現れ、噛みつかれた者もゾンビ化したので首を切った。続いて池から娘が現れ、池の底がつながっている他の村から「ひとでなし」と化した父親を追ってきたと言い、自分の村が多くの「ひとでなし」に襲われているというので、17歳だった語り手と父親の肝煎、村に駐在する藩士、腕に覚えのある村人たちと、池に潜って向こうの村へ救助に行く。
行ってみると、地震で次々できる地割れから出て来る「腐れ鬼」という悪鬼が人に食いつくと「ひとでなし」化し、どんどん増えて、城内も城下も「腐れ鬼」と「ひとでなし」であふれていた。池のある村の人を池を通って避難させるまでの、あまりに凄惨な戦いは気分が悪くなる。肉親が噛まれて「ひとでなし」化するとわかると殺さなければならない。それがこの物語の恐ろしさだ。
ふだん仕事で読んでいる「仍而如件」(よって件の如し」を見るたび暫く思い出すだろうなあ。 -
三島屋シリーズ。期待にたがわず楽しく読めました。