おいしい旅 しあわせ編 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041138717

作品紹介・あらすじ

祖母と一緒に行くはずだったお伊勢参り。急なトラブルでひとりでお参りすることになった元喜は、ある男の子と出会う(「もしも神様に会えたなら」)。幼い頃に引っ越し、生まれ故郷の記憶はまるでない。両親の思い出話を頼りに故郷をめぐる旅に出るが……(「失われた甘い時を求めて」)。心ときめく景色や極上グルメとの出会い。旅ならではの様々な「幸せ」がたっぷり詰まった7編を収録。読めば旅に出たくなる、実力派作家7名による文庫オリジナルアンソロジー第3弾!

感想・レビュー・書評

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  • これを読むと旅に出たくなる。
    そして、美味しいものを食べたいって思う。
    コロナ禍で、すっかり出不精になってしまって、旅支度するのも億劫なんだけど、あとどのくらい好きなものや珍しいものを食べられるかわからないと思うと動かなきゃという気持ちになった。

    「もし神様にあえたなら」祖母と一緒に行くはずだったお伊勢参りに小5の少年が、同じ学年の男の子と知り合って…。
    伊勢うどんは、この少年と同じ反応だったことを思い出した。讃岐うどんで育った私には、全く別物のうどんだったから。

    「失われた甘い時を求めて」3歳までの記憶って、母親から聞いたことしかわからないけれど、31年ぶりに松本市で自分探しツアーをする。
    マサムラのシュークリームに同じ年の男の子との思い出。
    もっと、先を読みたいと思ってしまった。

    「夕日と奥さんのお話」48歳で、離婚話が浮上しもやもやした気持ちのまま、石垣島にひとり旅行へ。
    底地ビーチのサンセットに心奪われ、浜崎の奧さんは最高だとわかり、お互いに心を動かされるものが何であるかの違いに気づいた。
    子どもが言う、人生はあっという間。気がついたら、高齢者だから。やりたいことはやっちゃわないと損。
    そうなのだ。

    「夢よりも甘く」祖母の話は夢物語だったのか…。ひとりでヴェネツィアに来たけれど。祖母の話と現実は、かけ離れていてバラもチョコラータも幻のよう。

    「旅の理由」旅先でのアクシデントで、ここはどこ?の状態の中、青森県三沢市だと。
    頭を打って病院へ運ばれる最中に母へ電話。
    旅の楽しみは、母へと…。
    最後にわかったのは、ほっき丼が食べたくてここへ来たこと。

    「美味しいということは」祖母と出かけたのは15歳のとき。新宿までの特急で崎陽軒のシウマイを食べ、目当てのドラクエIIIを手に入れたあと、今度は祖母の食べ歩きに付き合う。ポークカレーにベーコンエッグ、ロールキャベツ。祖母は半分以上を僕に分ける。プランセスケーキでお茶して、夜には焼きソーセージと牛肉の煮込み、ナポリタン。
    美味しいっていうのは、いつまでもその味を忘れないってことだと祖母に教えてもらった。
    今度は、子どもに…。

    もう、たくさんは食べられないから…というのわかるなぁ。

    「オーロラが見られなくても」介護生活で、まともに働くこともなく、海外旅行は二十年ぶり。
    30代半ばの美しい女性といっしょになり、彼女と話しているうちにちょっと前向きな気持ちになり、いっしょに食べるとより美味しそうに感じてしまう。
    ホットドッグ、ハンバーガー、フライドポテト。
    パンがおいしいのかな。やけにパンばかり出てきてたような…。






  • ちょうど今年は伊勢に行こうと決めていたので、初めのお話はとても参考になった。行き方や伊勢うどんの由来、参拝の仕方など物語にちりばめられていたし、少年達の冒険を見守っている感じの話で、一番この中で楽しかった。どの作品も終わりに少しほっと出来てしあわせ編とはその通りたど思った。

    他5作
    ・失われた甘い時をもとめての二人は無事に出会ったのだろうか。続きが気になった。

    ・浜崎の奥さんを検索してしまった。そんなに美味しいのか。食べてみたいな。

    ・ベネツィアは1度は行ってみたい憧れの街だな。
    おばちゃんの話はきっと妄想だったようだけど、現実をみて主人公は学んだし、母との距離も縮まって良かった。

    ・旅での事故で旅の理由を忘れてしまったお話。佳佑のYouTube気になる...

    ・祖母と二人東京の食べ歩き旅。本当に美味しいというのはその味を忘れないということ、と祖母に教えられ、大人になった今、その事を息子に教えてる最後の場面がよかった。物語に出てくるビアホールはライオンかな?あそこ美味しかったな。また行きたいな。

    ・アイスランドで出会った女性とご飯を食べるお話。主人公の境遇が壮絶すぎて、ちょっと悲しかった。
    タイトルのとおり、オーロラは見えなくてもこの旅がご褒美となって良かった。

  • どの旅もおいしそうで、たのしそう。

    でも最期のアイスランドの旅は自分の介護の経験も重なって少しつらかったかなぁ。

    介護をしていない人間は口だけは出すものですからねぇ。

    いろいろ思うことありの最後の一遍でした。

  • アンソロジー『おいしい旅』第3弾の「しあわせ編」。7名の作家による短編集だが、うち4名は初読みの作家さんだった。ごはんを軸にした旅の小説。出発地から日帰りできる近距離もあれば、海外もあった。その舞台は、三重県伊勢市、イタリア(ヴェネチア)、沖縄県石垣島、長野県松本市、青森県三沢市、東京、アイスランド(レイキャビク)。行ったこともある場所もない場所もあったが、どの土地もそこの名物も旅先として魅力的だった。家族との不仲など少し重い感じのする話もあったが、旅先で気分転換し新たな人生を歩もうとする主人公に触れ、旅行の良さを再認識した。旅も大きく制約された新型コロナ後の世界が描かれており、You Tuberなど現代ならではの人も登場。美味しそうなご飯も旅行気分を高めてくれた。

  • 2023年10月角川文庫刊。書き下ろし。アミの会おいしい旅シリーズ3作目。旅先グルメをテーマにした7つの短編。ゲストは三上さん。大崎梢さんの小学5年生の伊勢神宮詣りが楽しかった。インパクトが少ないめのほんわかムードな話が多いのは、しあわせ編だからか。記憶に残りそうなものは少なかった。
    【収録】大崎梢:もしも神様に会えたなら、新津きよみ:失われた甘い時を求めて、柴田よしき:夕日と奥さんのお話、篠田真由美:夢よりも甘く、松村比呂美:旅の理由、三上延:美味しいということは、近藤史恵:オーロラが見られなくても

  • 【収録作品】
    「もしも神様に会えたなら」大崎梢
    「失われた甘い時を求めて」新津きよみ
    「夕日と奥さんのお話」柴田よしき
    「夢よりも甘く」篠田真由美
    「旅の理由」松村比呂美
    「美味しいということは」三上延
    「オーロラが見られなくても」近藤史恵

    タイトル通り、おいしそうな食べ物がてんこ盛りで、話の結末も温かく前向き。

    「もしも……」は、伊勢市が舞台。小五の元喜と泉美の掛け合いが楽しく、口開けの一篇にぴったり。
    「失われた……」は、松本が舞台。亡くなった両親の話を思い出しながらの旅がいい。ちょっとしたニアミスもうれしくなる。
    「夕日と……」は、石垣島が舞台。知っているつもりで知らない連れ合いの話。一人で自分を見直す時間が必要だな。これは我が身にも教訓。
    「夢よりも甘く」は、ヴェネツィアが舞台。旅は散々だったが、母と祖母の思いに気づく。
    「旅の理由」は、青森県三沢市が舞台。くすっと笑える明るい話。
    「美味しいと……」は、東京が舞台。祖母との食べ歩きの思い出を振り返り、息子と思い出の店に行く父。その感慨が身につまされるのは、そういう年齢だからだろう。
    「オーロラが……」は、アイスランドが舞台。コロナ禍、ミュージカル俳優の厳しさ、そして介護に明け暮れたあげく放り出された女性のつらさは、フィクションではない。今ある現実で、お話自体は明るく前向きに結ばれてはいるが、宿題をもらった気分。ラストでよかった。

  • どのお話もほっとする内容で心が温まった。特に好きだったのは三上延さんの「美味しいということは」。
    卓郎とお祖母様の絶妙な距離感、2人の会話が素敵。読んだ後、おばあちゃんに会いに行こう、そして今年こそは念願のお花見を一緒にしようと思った。

  • やはり近藤史恵さんは読みやすい。ゲストの三上延さんのもなんだかじんとしてしまった。

  • 旅先で美味しい体験を一緒に味わっている感覚が楽しい。人との出会いが大切だと解る本。いつの日か、同じような旅に出たい。

  • シリーズの他アンソロジーより、読んだことのある作家さんが多く感じました。
    1番印象に残ったのは篠田真由美さんの「夢よりも甘く」という作品。チョコラータというココアやホットチョコレートのような飲み物の描写が甘い香りがしてきそうで、飲みたくなりました。またおばあちゃまのお話の内容もレトロで、セピア色を思わせる雰囲気が感じられ、私も主人公の横でお話を聴いている気持ちになりました。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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