家族解散まで千キロメートル

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1226
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041145647

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり私の中では、浅倉秋成さんの小説には期待があって、本作も発売日にしっかり購入して拝読しました。割とテンポの良いストーリー展開と、謎が深まるミステリー展開でスラっと読めましたが、個人的には着地点があまり好みではなかったかなと思います。

    本作のストーリーとしては、結婚を間近に控えた主人公が年末年始の休みに実家に帰省することから始まります。主人公の実家は割と古い慣習が残る家で、結婚するまでは家から出られないといった風習がある。そのため、今回の結婚は主人公が家から離れる機会であった。そんな矢先、引越しの準備をしていると、倉庫から盗品の仏像が見つかる。結婚前に家族の罪が世間に露呈することを恐れた主人公一家は仏像を返しに行くことになるというストーリー。

    お話の展開的には割とコメディ感の強い作品で、ドタバタ劇という感じで割と軽めにスタートしますが、終盤に割と転調がしてる感じがあり、そこがちょっと温度差あったのかなと思います。浅倉さんの小説をこれまで数冊読んできましたが、設定が割と変わってる作品が多くて、それがハマればめちゃくちゃ好きな作品になるんだろうなって思いました。

    • アールグレイさん
      ネモJさん(((^-^)))こんにちは
      ――私は、この本面白そうだな、と思っていました。★3つでしたか。まだ発売したばかりですか?読むとした...
      ネモJさん(((^-^)))こんにちは
      ――私は、この本面白そうだな、と思っていました。★3つでしたか。まだ発売したばかりですか?読むとしたら図書館本です。浅倉さんを読んだことはないし・・・・図書館になかったりして(x_x;)
      2024/03/29
    • ネモJさん
      アールグレイさん、こんにちは
      この本は確か、今週発売だったはずです(記憶違いならすみません)
      コロナ禍の時に、浅倉さんの「六人の嘘つきな大学...
      アールグレイさん、こんにちは
      この本は確か、今週発売だったはずです(記憶違いならすみません)
      コロナ禍の時に、浅倉さんの「六人の嘘つきな大学生」を読んでから読書にハマったこともあって個人的には思い入れのある作家さんなんです
      それもあって評価は少し辛口になっちゃうんですよね…笑
      個人的にはぜひ「六人の〜」を読んでみて欲しいです!
      2024/03/29
    • アールグレイさん
      ネモさん、返信ありがとう!
      ~~大学生、ということに抵抗を感じてしまうのです。年に違いを感じてしまいます。
      ('A`)
      ネモさん、返信ありがとう!
      ~~大学生、ということに抵抗を感じてしまうのです。年に違いを感じてしまいます。
      ('A`)
      2024/03/29
  • 古い実家を取り壊して、家族ばらばらに暮らすことになったのは、兄も結婚して別に家を構え姉も婚約者がいて、末の弟である周も結婚が決まったからである。

    家族解体の三日前の元旦に家族総出の片づけ中、倉庫にあった見慣れない箱。
    それが今、世間で騒がせている青森の神社から盗まれた仏像⁉︎

    ここには居ない、いつも居ることがない親父の仕業かと思われたが、とにかく返さねば…という思いで家族全員が慌ただしく青森へと車を走らせるのだが…道中何度か一悶着あり、ただならぬ気配あり、でスムーズにはいかない。

    これはどういう終着点なのか…という思いで読み進める。

    なんだかんだとあってもこんな家族もいるかもしれないと思う。
    世の中には、信じられない⁈という家族もいるし、家族のない人に比べたら歪であっても羨ましいと思うかもしれない。

    「じょーないじょーない」という家族だけがわかる言葉を使っているのだから仲が悪いとは思えない。
    ただ、みんな本音を隠しているから纏まらなくて、親父の本音もわからずじまいで、姉が考えたことなんだろう。

    普通とはどんな家族かなんて考えなくてもいいのではないか。
    何を基準に普通というのかさえ疑問なんだが、ただ家族はずっと一緒にいるもの…とする考え方も違うのだということ。





  • 評価が低くてごめんなさい。
    今までの作品が面白かったので期待していたせいもあるかも。
    盗難品の御神体を返却に向かうドライブや犯人探しなど、全てが茶番に見えてしまった。
    次はまた「六人の…」みたいなワクワクする小説を読みたいなぁ。

  • 「本当にこの家族、こんな形で終わっていいと思う?」
    喜佐家は古い実家を取り壊して、家族ばらばらに転居することになった。引っ越し直前、家にいつもいない父を除く家族総出で片づけをしていると、倉庫で不審な箱が見つかった。中にはニュースで騒がれている『青森の神社から盗まれたご神体の仏像』そっくりのものがあって?!
    過去にあったトラブルから、父の犯行を確信する家族一同。不在の父の代わりに仏像を返すため青森へ車を走らせる!だが、喜佐家の次男・周(めぐる)は道中で、父は犯人ではないと気づき始め──。謎が謎を呼ぶホームドラマが描かれるミステリ。

    ばらばらに解体されるはずだった家族が、父が盗んできた仏像を返すために一つになる!と思いきや、父は犯人ではなくこの家族の中に真犯人がいる?!と逆転する構成が上手い。嘘をついているのは誰なのか。しかも追跡してくる車まで現れた!疑心暗鬼のドキドキ家族ドライブは超エキサイティング!元日に大急ぎで仏像を青森まで運ぶというシュールさもいい。仏像が載る車を借りるためにでっち上げた迫真の嘘のくだりはコミカルで好き。

    「なんて元日だ!」という一日を越えた喜佐家一同。それでもまだ彼らは道の途中だった!謎を解体する内に見えてきた家族の形に立ち尽くす。ぼく自身が『両親』や『家族』に対して抱いていた違和感がここにはあった。『家族』は密室だからこそ、見えなくなるものがある。家族を守るために子(個)を捧げる自己犠牲は尊いのか?これは会社など組織にも言えること。人と人が助け合える絆だったものが、人を犠牲にしないと維持できない呪いへと変わる。たちが悪いことに、その呪いは犠牲を美談や美徳に仕立て上げて、人々を騙すのだ。個を集団という泥へと溶かして曖昧にする。世間的に美しいとされるものと、自分が美しいと思うものは違う。その基本的なことに気がつけるかどうか。ぼくはうつ病になってやっと気づいたよ。

    そんなわけで、後半の展開は考える価値がある問いだと思うけど、落とし込み方が強引すぎるし、仏像との繋がりの必然性も微妙。ぼくは家族全員、感情移入できなかった。父のあの行動は傷を残したという時点で取り返しがつかないし、その傷跡を知った上であの人はよくあんな言葉をぶつけられたなと。前半と後半の寒暖差が激しすぎて、何とも言えない読後感だった。浅倉秋成先生の初読者にはあまりオススメできないかも…。意欲作ではあると思う。



    印象深い箇所を引用しますが、ここからはネタバレに該当するので未読の方は注意!



    p.260
    「僕らが『普通』と感じているあの家族像って、たぶんものすごく一元的で、驚くほど視野が狭くて、びっくりするくらい自分勝手なんです。喜佐家の固定電話にかかってきた電話は、必ず周さんがとらなくてはいけないのと同じくらい、理不尽なルールなんです。なのに誰もが、自分たちは奇妙なルールに縛られていないと思っている。普通から外れている人は、普通ではないけれども認めてあげようよと、心の広さを発揮しているつもりでいる」

    p.284
    「家族は団結するべき、家族は仲よくするべき、家族の中に苦しそうなメンバーがいたとしても、少しくらい苦しそうな人がいるほうが立派な気がする。なぜならそれが『常識』だから。どれだけひずみを生んでも、どれだけ成員の多くが息苦しくなろうとも、きっとこれからもみんなは幸せよりも『家族』と『常識』を優先して、合い言葉みたいに言い続ける。『じょーないじょーない』『お父さんは駄目な人だから、仕方がない』。」

    p.304
    なぜこの家族は始まったのだろう。考えるまでもなくこの家族を始めたのは、父さんと母さんであった。二人が結ばれ、三人の子供が生まれた。父さんが主体性なく世間に背中を押され、母さんが過去のトラウマの中で悶えるように求め、喜佐家は誕生した。

  • さすが浅倉さん、
    めちゃくちゃおもしろくて一気読みでした。
    家族それぞれの思考が、行動が、
    ‥‥なんかおかしいぞ!
    次々と発覚するトラブルや家族のヒミツ。
    この展開、ほんとに!?
    ありえなくて時おり笑いがこみあげる。
    家族って、お互い知らないことばっかり。
    家族の理想の形ってどんなだろう。

    喜佐家最大のヒミツを知って読み返してみれば、そこここに滲み出ていた本当の気持ちに、胸がいっぱいになりました。

  • 前情報を入れずに読んだので、一体どんな話なんだろう?と思いつつ、中盤まで読み進めた。さすがは浅倉さん、話がとても作り込まれており、全く予想もしなかった展開で幕を閉じた「御神体窃盗事件」。山梨から誰が犯人か疑心暗鬼になりながら、時間制限もある中、青森の神社まで車で移動する道中はハラハラして面白かった。しかし後半、この騒動の背景の種明かし、家族はこうあるべき、という固定観念にとらわれすぎた家族の末路、みたいな部分は正直あまり刺さらなかった。もちろん、そういった話とミステリーを結びつけたストーリーはさすが、なのだが。この家族のどの人にもあまり感情移入できなかったこと、解散してもどの人もあまり幸せそうじゃないと感じてしまったことが原因かもしれない。ぜひ色々な感想を聞いてみたいと思った作品。

  • 〈家族の嘘〉が暴かれる時、本当の人生が始まる。
    どんでん返し家族ミステリー。
    前半は実家の倉庫で見つかったご神体を返却しにドタバタ劇が繰り広げられ、道中もハラハラする展開で面白かったです。
    物語の後半になると、誰が何のためにご神体を盗んだのか?という謎が、喜佐家の〈家族の嘘〉と結びついていくのですが、この関連性にやや強引さを感じてしまいました。しかし、話しの展開が読めず、この先どうなるの?と一気に読んでしまいました。感想が難しい作品ですが、定番のミステリーに飽きている方にオススメします。

  • 作品のタイトルに騙されたということが完読後の感想です。

    タイトルにもある千キロメートルはなんの距離を表すものでしょうか?このことを考えながら読むことがとても面白い作品でした。

    また、この作品も身近な人のことほど自分が考えているほど知ることができていないことを知ることができる作品です。逆に身近な人にだからこそ言えないことや相談できないこと、隠したいことがあります。

    今、隣にいる人が隠していることがあるというのは自分にとっては不快なことなのかもしれません。ただ、個人的にはこれをマイナスに捉えるのではなくて、他人はどこまで仲良くなってもどこまで時間を共有しても他人だからこそ面白いというか考え続けることができるのだと思います。

    話は少しそれましたが、家族とは何か、これからどのように家族と接していきたいのか。これらのことを再考することができる作品です。

  • 中盤まではロードムービー的なミステリー。誰が犯人何だと楽しめた。神社に着いて、ああ丸く収まった、良かったね。となるのが普通なのだが、残りページの多さにまだ終わんないよねと邪推してしまう。浅倉さんの話がこんな簡単で気持ちよく終わるわけあるかー。
    終盤は家族のあり方、定義なんかを考えさせられる。これが当たり前、普通、昔からだから。常識から外れた奴は変。下に見られる。多数派が決めつけた考え方。みんな無意識に刷り込まれているのかも。
    多様性がどうとかと理解があるようにいう人もいるけどそんな人も所詮は上から目線。
    意地の悪い気持ち良さを感じてしまうなあ。
    周と咲穂はどんな選択をしたのか、二人が異なる答えを出した時、その先の想像を掻き立てられる。

  • Amazonの紹介より
    〈家族の嘘〉が暴かれる時、本当の人生が始まる。どんでん返し家族ミステリー
    実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのか――?


    伏線回収が上手い浅倉さんの最新作。今回もテンポの良い展開と伏線が回収されていく爽快感が良かったです。

    果たしてご神体は本物なのか?
    盗んだのは父親なのか?

    様々な謎を残しつつ、次々とどんでん返しが待ち受けているので、気づけばあっという間に終わっていました。
    青森まで運転する組と自宅待機組の2つの視点があって、交互に展開していきます。
    運転する組では、一難去ってまた一難といった具合に色んな災難に遭いながらも、雰囲気としてはドタバタでコミカルでしたので、和やかな気持ちで読んでいました。

    一方自宅待機組では、家にヒントがあるのでは?と隅々まで調べていきます。そこである手紙を発見し、事態がかわっていきます。
    後半になるにつれて、何気ない会話などが、後に大きなキーワードとなって、推理に活かされていくので、驚きました。それも一つや二つではなく、意外と多く活かされているので、面白かったです。

    果たして、青森には間に合うのか?
    そこに待ち受ける展開やその後の犯人の正体など、裏の裏の真実が隠されているので、最後まで飽きさせず楽しめました。

    ただ、後半からはがらりと空気感が変わります。犯人の自白によって垣間見る「家族」や「結婚」の在り方が、なんともシリアスな雰囲気を醸し出していて、考えさせられました。言葉の呪縛・圧力といいましょうか、言葉から放つイメージによって、影響される人類が、人生においてこうも首を絞めるのかと思うくらい、壮大なテーマとなって、読者に伝えている感覚があって、どう解釈すればよいか、迷いました。

    人それぞれ、色んな意見があって、否定するつもりはありませんが、それにしても意見を押し付けている感があって、なんだか腑に落ちない気もしました。なんだか自分勝手だなと思ってしまいました。

    その影響なのか、今までのミステリー的な展開があって、爽快感があった分、後半はブレブレな着地感がありました。スッキリと終わった感じがなかったので、戸惑いのある余韻でした。

    なんだか言葉のイメージから圧力を読み解くことで、現実を突きつけられたように感じましたが、家族のありがたみやきちんと話すことの大切さを学んだように感じました。

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著者プロフィール

1989年生まれ、小説家。関東在住。第十三回講談社BOX新人賞Powersを『ノワール・レヴナント』で受賞しデビュー。『教室が、ひとりになるまで』で推理作家協会賞の長編部門と本格ミステリ大賞の候補作に選出。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』『六人の嘘つきな大学生』など。

「2023年 『六人の嘘つきな大学生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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