ホンキイ・トンク (角川文庫 緑 305-5)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041305058

感想・レビュー・書評

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  • 1973年に発行された、筒井康隆の短編集だ。エロやグロ、時代物やSFなど、ツツイストにはたまらないセレクトになっている。

    『君発ちて後』
    痴女が蒸発した旦那を探していると、蒸発を行う会社に迷い込んでしまう。そこでは、蒸発者の名前や顔、職業まで変えることができる。旦那はどこへ行ってしまったのか。
    ところどころ康隆のブラックな一面が見えるが、1作品目として、慎重な姿勢を窺わせる。

    『ワイド仇討』
    明治政府発足の前、前当主を闇討ちされ、その仇討を命じられた当主と付人である主人公。あまり気が乗らず、桃太郎形式で仲間が増えていくと、旅の楽しさに気付いていく。明治時代に入ると仇討が禁止され、旅の目的を失った一行はどこへ行き着いたのか。
    康隆のドタバタ劇が好きな方に勧めたい。

    『断末魔酔狂地獄』
    高齢者の寿命が延び、若者が相対的にひ弱になった未来(いや、現代か?)を揶揄した作品。本短編集で最も混沌とした一編で、想像した暁には三日三晩爺婆の乱交パーティが脳裏から離れなくなるだろう。

    『オナンの末裔』
    オナニーをしたことがない男が、オナニーを試みるがことごとく失敗に終わる作品だ。私が何を言ってるかわからないと思うが、それは私もわからない。

    『雨乞い小町』
    在原業平を主人公に、六歌仙が京に雨を降らそうと画策する作品。彼らを助太刀するのが、20世紀からタイムスリップしてきた星右京である。星右京曰く、筒井康隆という作家は男前らしい。

    『小説「私小説」』
    ネタの尽きた老作家が、私小説を書くために女中を犯す作品。マスコミや作家に対する強烈な風刺が効いている。

    『ぐれ健が戻った』
    グレた健が実家に戻り、一家団欒だが、この家族は何かがおかしい。読者が違和感を覚えた瞬間、天地がひっくり返される。
    私は、筒井康隆がもっとミステリーを書いてほしいと改めて思った。

    『ホンキイ・トング』
    伊達に表題作ではない。物語の構成、文章、表現、題材、登場人物の魅力の全てを兼ね備えた作品だ。これを長編にすることも可能だったはずだ。


    いずれも佳作以上の評価を与えられる作品だった。私に印象的だったのは『断末魔酔狂地獄』である。正直に申すと、物語自体は面白いとは言えず、収拾がつかなくなる筒井節を楽しむ作品だ。
    では、何故本作が目に止まったのか。それは老人が逞しくなり、若者がひ弱になる世界が2023年現在を的確に予知していることだ。そして、その設定が多和田葉子『遣灯使』と酷似しているためである。
    無論、後発の多和田が盗んだわけではないだろう。現に、現実世界ではそうなりつつあるのだから。そもそも、こんなふざけた短編をパクる純文学の大家なんて存在するはずがないのだ。
    それはさておき、この状況を50年も前から予言して、それを揶揄した作品を残した筒井康隆はやはり偉大だと言わざるを得ない。

  • わざわざレビューすることの意味がわからなくなってきた。

  • 8編の短編は、女性が眉を顰めそうなものも含めてエロ要素が多かった。印象的だったのは「ぐれ健が戻った」の生身の人間と幽霊が一緒にいる奇妙な描写。表題作は流石と唸らせる筆致。プリンセスのイヤラシさを感じさせない言動は、SFジュブナイル作品と通底している。大型コンピュータに政治を任せると国際社会に宣言した小国のしたたかさが良かった。ホンキイ・トンクの意味を本書を再読するまで忘れていた。逆に千葉市内のステーキ屋を真っ先に思い出すとは……

  • 2016.12.1(木)¥100(-2割引き)+税。
    2016.12.8(木)。

  •  社会、また特に政治分野におけるコンピューター化を題材にした表題作。コンピューターが本当に確実なのかどうかということを越えて、それを使う側の人間の知恵をも皮肉っているのが面白かった。
     文壇的なものや小説を書くことをパロディ化した「雨乞い小町」や「小説『私小説』」、高齢化社会をかなりの度合いでパロディ化したドタバタ劇「断末魔酔狂地獄」も印象的。全体を通して、多様な種類の短編が読めて楽しかった。

  • 既読本

  • 科学、政治、社会学、広範な思索のごった煮が良

  • 『シニカルな風刺は未来を見通す』

    未来を見通せなければ、SF作家にはなれない。お手上げである。筒井康隆は天才である。今の筒井作品は厭らしく感じるが、やはり素晴らしい作家であると言わざるおえない。

    面白かった。

  • とてもユニークな発想
    機械と人間の関係
    小説家への皮肉を展開する。

    皮肉 風刺という点で優れたものがあるが
    残虐 人間に対する尊厳のネグレクト 陰惨さを持つ。
    読んでいる最中も 読み終わった後でも
    気分がよく さわやかさをあじわうことができない。

  • 久しぶりに筒井作品を読みたくなった。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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