- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041932032
作品紹介・あらすじ
美希の一族は村民から「狗神筋」と忌み嫌われながらも、平穏な日々が続くはずだった。一陣の風の様に現れた青年・晃が来なければ……そして血の悲劇が始まり、村民を漆黒の闇と悪夢が襲う。
感想・レビュー・書評
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田舎の閉鎖的な、しかし美しい自然の情景が浮かんでくる。救われない話だけど自分的には好み。
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期待したほど怖さはなかったが、面白く読めた。「ホラー」というよりは、角川文庫の惹句のように「伝奇ロマン」というほうが合っているかも知れない。横溝正史へのオマージュか、と思わせる要素がいくつかあり、横溝ファンとしては軽くくすぐられる感じ。だが実は全然関係なくて、自分がタイトルに引っ張られただけ、という可能性は無きにしもあらず。
「怖さ」はそこそこでも良いけれど、禁忌を描くストーリー上、「忌わしさ」「呪わしさ」を演出でもっと煽って欲しかったな、とは思う。読んでて生理的嫌悪感を感じるくらいでないと。
他にも残念な点がいくつか。割と早い段階で、物語の中核である隠された事実がネタ割れしてしまった。これは作者が意図したところではないだろう。それならむしろ、早めに読者にだけ事実を明かして、その上で経過を見守らせるのもアリではないかと。
重要要素であるコミュニティ内の対立について、ヘイトが唐突に沸点に到達した感があった。最終的に極端な展開を見せるだけに、この辺りもう少し段階を経て欲しかった。じわじわとテンションを上げていく展開はスティーヴン・キングが上手い。本作もキングの諸作品くらい(或いは『山妣』くらい?)長尺にしてもよかったのでは、と思う。
また、終盤に新要素が投入されたことで、話がとっ散らかった感は否めない。もっと早い段階で投入してフリを効かせておくべきだろう。プロローグとエピローグがちぐはぐなのも気になった。そういったあたりは「若書き」と言えるのかも。
最後に余談。映画(筆者は未鑑賞)では天海祐希が主役を演じたが、自分は読んでいる間ずっと木村多江をイメージしていた。
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土俗的な風習や田舎の閉鎖性、憑き物、呪いという
ある種の和製ホラーの方向性を位置づけた記念碑的作品
なのだなあということを確認しながら読むような感じだった。
物語の舞台となる村落の描写を読むたびに
隣人・村人との不思議な距離感と村全体の閉鎖性と緊密性に覆われた
小野不由美『屍鬼』の舞台である外場村の雰囲気との酷似を感じたし
憑き物筋と呪いによる死は三津田信三の刀城言耶シリーズに
通じるものがあった。
影響を受けていないのかもしれないが、
なんとなくそういった後に作られた作品群に
影響を与えた傑作なのだろうなという思いを持った。
「血」と「土」を強烈に感じさせる傑作伝奇ホラーでした。 -
とにかく面白かった。舞台といい、人物の描写、恐怖の演出、どこをとっても、実に丁寧に描かれていて、読み心地がいいです。特に人と人との関係を通した恐怖感がいい感じだと思います。出だしから前半部分にかけての怖さは、読んでいて鳥肌がたつくらいでした。
話の進め方も唐突ではないので、細かく読んでいけば、大体前半で物語のキーになっている人物の関係が薄々わかってきます。この辺りの伏線の張り方も無理が無く、気が利いていると思いました。後はページをめくる度に秘密が少しづつほぐれていくのが非常に心地良く感じました。後半に入ってからは、それほど怖くは無くなるが、ある種の気味悪さはずっとつきまといます。
テーマとして「一族」を扱ったものなので、こういう話は生理的に受けつけない、という人もいるかもしれません(だから気持ち悪くていいと思うのだけれど…)。私はこの日本特有なジメジメ感、割りと好きなのかもしれません。