仏教の思想 9 生命の海<空海> (角川ソフィア文庫 114)
- KADOKAWA (1996年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041985090
作品紹介・あらすじ
「弘法さん」「お大師さん」と愛称され、親しまれる弘法大師、空海。生命を力強く肯定した日本を代表する宗教家の生涯と思想を見直し、真言密教の「生命の思想」「森の思想」「曼荼羅の思想」の真価を現代に問う。
感想・レビュー・書評
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本書は大きく3部構成からなっています。1部は宮坂氏による空海および真言密教の解説。2部は宮坂氏と梅原氏の対談。そして第3部が梅原氏の論考です。対談が読みやすいというのもありますが、全体を通して、難しすぎず易しすぎずというレベルに書かれていて非常に好感が持てました。確かにいきなり本書から密教の勉強をはじめようとすると厳しいかもしれませんが、例えば『密教』松永有慶、などを読んだ後であれば、十分読み進めます。レベルが低すぎることもなく、かなり難しい用語も適宜解説を加えながら述べられています。梅原氏の論考がある分、他の密教関係の本よりも独特な解釈があったり、西洋哲学との比較があったりと、興味深く読みました。タイトルに「生命の海」とあるように、真言密教を生命礼賛の教義として解説されています。
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密教は好きではない。
しかし仏教系の文学なり美術なりを鑑賞するための予備知識としては必要なので読んでいる。密教の思想はいらなくて、密教文化史のような物が欲しい。
あと、相変わらず梅原猛はいらん。 -
第1部 秘密の世界(空海の生涯;密教とは;曼荼羅の世界;人間精神の発展;自己を完成する;密教のシンボリズム;密教をめぐって)
第2部 密教の再発見
第3部 死の哲学から生の哲学へ(偉大なる矛盾の人生;生命の秘密と知恵の秘密)
著者:宮坂宥勝(1921-2011、岡谷市、仏教学)、梅原猛(1925-、仙台市、哲学)
解説:正木晃(1953-、小田原市、宗教学) -
空海について知ることが多かった。
空海と最澄との関係性。お互いを利用する関係など興味深い。
また、ニーチェ哲学との比較。
どちらも生を肯定する哲学。ただし、ニーチェは闘争の哲学、密教は和合の哲学という比較も興味深い。 -
空海とその真言密教に対して私の持っていたイメージは「熱帯雨林」。
様々な要素を切り落とし、念仏や禅に特化していった鎌倉仏教とは
違い、空海の思想には宇宙論や思想、哲学と言ったものも含まれる。
そして様々なものを否定し拒絶する「禁」の印象の強い浄土教や禅と
違い、真言宗はすべてを肯定するダイナミズムに溢れている。色彩も
モノトーンな印象の禅とは違い、五色に溢れ実にカラフルだ。
この本を読み、私の真言宗に対するイメージはそれほど間違って
いなかったのだと再認識できた。
この本が書かれた当時から現在に至る時間の流れの中で、空海とその
思想は再評価再認識されていると思う。そういう意味では多かれ
少なかれ古さを感じる面は否定出来ないが、空海入門としては絶好の
書だと思われる。 -
平安時代に日本の仏教の礎を築いた真言宗の祖、空海。その一生と教えを文庫にまとめた本。
一言で言えば…難しい。
言わんとしていることを一言で言えば
仏とは己の中にある。己の中の仏は人だけに存在する物ではなく、この世界に存在する物すべてに存在するものである。
そして、悟りとは己の中にある仏をいかに感じ、表すかだ。
と言うことではないだろうか?
とりあえず…また読み直すことにしよう。
読み直したときにレビューを少し書き直すかな。 -
仏教を学ぶものとしてこのシリーズは先ずおさえておくべき。
梅原イズムはいささか独特なものがあるが、本書は泰斗、宮坂宥勝との共著であり空海の歴史、思想を知るには好ましい。
「仏教の思想」シリーズ各巻に付けられたサブタイトルは絶妙であり、空海に関するこの巻は「生命の海」と名づけられた。