舞姫タイス (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042029014

感想・レビュー・書評

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  • 再読。マスネの「タイスの瞑想曲」ほどに原作は有名ではない気がするけれど、個人的にはアナトール・フランスはこれが一番好き。といっても、私は意地悪だし無神論者なので、主人公パフニュスに対して「ざまぁ」という歪んだ痛快さを味わっている(苦笑)

    宗教は、信じたい人は勝手に自分の信じたい神様を信じればいいけれど、それを他人に押し付けるやからが大嫌いなので、前半のパフニュスの恩着せがましさ、視野の狭い傲慢さが鼻について仕方なく、砂漠の行者チモクレスが清貧の生活をしながらも神を信じていないことを狂人・愚物あつかいしたり(大きなお世話!)、スフィンクスまで改宗させようとしたり(失笑)、そして問題のタイスへの救いに行ってやる的な上から目線と自分へのごまかし、言い訳が滑稽すぎてもう。

    信仰心などなくとも、哲学者ニシアスや海軍長官コッタのほうがよほどパフニュスよりも器が大きい。

    かつて娼婦タイスを自分も金で買おうとしたことがあったけれど足りなかったゆえに断念した、結局パフニュスはその無念をずっと解消できずにいただけではないのか。裕福で一時はタイスの愛人であったニシアスへの嫉妬(本人は認めようとしない)もミエミエ、娼婦であるタイスを改心させるというのは建前で、つまり本音は「俺にもやらせろ!」でしかない。しかしとことん本人はそこから目を背け神を口実にし続ける。

    タイスがあっさり改心したのはパフニュスのおかげというよりはむしろ幼少時、父母に虐げられていた彼女に無償の愛情を注いでくれた奴隷の信仰心の影響と、単純にいずれ衰える美貌=老いへの恐怖からでしょう。

    そんなわけなので、ラストでパフニュスがやっと自分の本性を露呈して狂乱、尼僧たちが怯えて逃げ去る場面がとても好きです(意地悪)

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著者プロフィール

1844-1924年。パリ生まれ。高踏派詩人として出発、その後小説に転じて『シルヴェストル・ボナールの罪』、『舞姫タイス』、『赤い百合』、『神々は渇く』などの長篇でフランス文学を代表する作家となる。ドレフュス事件など社会問題にも深い関心を寄せ、積極的に活動した。アカデミー・フランセーズ会員。1921年、ノーベル文学賞受賞。邦訳に《アナトール・フランス小説集》全12巻(白水社)がある。

「2018年 『ペンギンの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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