- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042106180
作品紹介・あらすじ
卓越した武勇と揺るぎない忠義でスコットランド王ダンカンの信頼厚い将軍マクベス。しかし荒野で出会った三人の魔女の予言はマクベスの心の底に眠っていた野心を呼びさます。夫以上に野心的な妻にもそそのかされ、マクベスは遂に自分の城で王を暗殺。その後は手に入れた王位を失うことを恐れ、憑かれたように殺戮を重ねていく…。悪に冒された精神が崩壊する様を描くシェイクスピア悲劇の傑作。リズムある名訳でおくる決定版。
感想・レビュー・書評
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三人の魔女の予言が約束されたものであれば、人を殺めずとも自ずから王になる日が来ると思いつつも、欲に急かされ破滅に向かうマクベス夫婦。マクベスは妻の要望に応える為に、妻はマクベスの野心を叶えさせる為、短絡的に最悪の手段での予言の具現化を急ぐ。とはいえ、謀略に斃れた者たちの亡霊に怯え、夢遊病に侵される二人は、魔女に揶揄された誑かされ易い小心の善人だったのでは…
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はじめてのシェイクスピア。
うーん、これは劇を見てみるべきだと思う。もちろんセリフを読むのも楽しいが、英語ができない私は翻訳を読むしかないので、本来の英語のリズムやニュアンスがいまいちわからないのが悲しい。
翻訳が良く、注釈も細かく書いてくれているので舞台で役者がどう動くのかを想像して読むことができて楽しかった。
詩のような弾むリズムが良かった。
悲劇とはいえ重たい気持ちにはならずスッキリした読後感だった。
さまざまな解釈のシェイクスピアの舞台を見てみたい、戯曲を読んだ後に見たら絶対に面白いと思う。 -
「きれいはきたない、きたないはきれい」とか "Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow" の台詞で有名なシェイクスピア四大悲劇のひとつ、『マクベス』の河合先生による訳。日本語も原文と同じように、口に出すと心地よいリズムを刻むように意識して訳されたもの。
10年以上前に「演劇集団円」というところの金田明夫がマクベス役の芝居を観て、魔女たちが「きれいはきたない、きたないはきれい」と歌っている声が今でも耳に残っている。
あらためて読んでみると、色んな人が次々に殺されていく話で、特にマクダフの息子なんか出てきてひとしきり会話したと思ったら暗殺人が登場、「嘘だ。この毛むくじゃらの悪党!」と言ったら「何だ、このひよっ子?謀叛人の雑魚め。」と言われてあっけなく刺されてしまう。「やられたよ、お母さん。逃げて、お願い!」なんて、本当に可哀そう。訳の下についている注を読むのも面白かった。門番のシーン「コミック・リリーフ」というもの(p.48)があることを知った。「エリザベス朝に広く行われていた鷹の調教において、鷹の目蓋を縫い合わせることによって鷹をおとなしくさせるという慣習が広く行われていた」(p.75)って、なにそれって感じだった。「第三の暗殺者」(p.76)についての議論や「当時、帝王切開をした場合、必ず母親は死んだ」(p.147)という話も興味深い。"The night is long that never finds the day."(p.125) という英語も覚えておきたいと思った。『ハムレット』は前に読んだし、『オセロー』は大学の時の授業で読んだので、あと『リア王』を読めば四大悲劇を読んだことになる。ただその前に河合先生の訳で他の作品も読んでみたいなあと思った。(18/04/24)-
愚息たちのお芝居を見て、こんな人が死ぬ話だったのかと改めて感じました。新潮文庫版より注釈が多いようですね。こちらも読んでみたいと思います。愚息たちのお芝居を見て、こんな人が死ぬ話だったのかと改めて感じました。新潮文庫版より注釈が多いようですね。こちらも読んでみたいと思います。2018/06/18
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3人の魔女の予言やそれを聞いた妻の煽動に乗って国王や同僚、部下などを殺戮してしまうマクベスの物語であるが、この本の解説はなかなかよい。解説では、マクベスは他の悲劇と異なり、マクベス本人の中にある善と悪が戦い悪が勝ってしまうこと、よってマクベス以外の登場人物は非常に影が薄いという特徴があることを教えてくれる。またシェイクスピアがマクベスを執筆した時期のイギリス情勢に関しても解説があって、当時の国王ジェームズ1世がバンクォーの子孫であることなどもわかりとても興味深い。
私は映像でマクベスを見たことがないが、「森が動きダンシネーンに向かってくる」シーンは迫力がありそうである。余談であるが、J.R.R.トールキン作の指輪物語にもエントの森が動き敵を破るシーンがある。トールキンは同じイギリス人としてシェイクスピアのマクベスが頭の中にあったのだろうか。 -
「母体から産まれた者には殺されない」という呪いに護られているマクベスを帝王切開で産まれたマクダフが倒すというところには「その手があったか」と思わさせられ面白かった。
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第一幕第三場で、ロスとアンガスがマクベスをコーダーの領主と呼んだ後、魔女の予言について独白するマクベスをよそに、バンクォーは使いの二人に何か話している。何を話してたんだろう?魔女の予言を話していたの?
マクベスは何回読んだか覚えてないけど、何度読んでも優れた戯曲だと思う。
今回読んで、今更ながらマクベスがダンカンを殺害して王位についたのが史実だったことを覚えた笑 -
2021/1/27
久々の『マクベス』、というかシェイクスピア。
アリストテレスの言う「逆転」と「再認」が見え見えでありつつも、「きれいは汚い。汚いはきれい。」を軸に終始緊張感高まる展開になっていて何度読んでも面白い。 -
短く、テンポも良くサクッと読めた。
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これほど評価が難しい本に出会ったのは久しぶり。この『マクベス』はそれほど長い物語ではなく、更には将軍が主君を殺し王位に就くも、本来の王位継承者に殺されてしまうという簡潔なストーリーである。それも当時の王様に献上した話であるためか、何処か媚びへつらっているような印象を受けてしまう。それなのに『シェイクスピアの四大悲劇』として数えられているのだから始末に終えない。
この物語はマクベスを主人公と見るのか、王子であるマルコムを主人公としてみるかで大きく変わってくる気がする。マクベスは魔女の甘言から王位を望み、王を殺して王位を奪ってしまう。しかし魔女のもう一つの予言が気になり周囲全てが敵に見えて段々狂っていくという流れ。マルコムは突如として起こった謀反に為すすべなく親類のいるスッコトランドに逃げ込む。そこで機を窺い徐々に集まる忠臣と共にマクベスを討ち、王位を取り戻す。
マクベスを主人公として見るならこれは正しく悲劇といえるだろう。だが、マルコムを主人公として見ると正義は必ず勝つという勧善懲悪ものになってしまう。まあ、タイトルからしてマクベスを主人公として見る事が正しいのだろうがそうすると物語にはどこか無理があるような気がしてくる。
そして途中途中に時系列もしくは説明が抜けている部分があるため物語にのめり込む邪魔をしてしまう。これでは作者が作品に込めた意図を完全に読み切るのは難しい。