- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043410026
作品紹介・あらすじ
人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、生きることそのものの哀しみを心の奥から引き出すことが小説の役割ではないだろうか。書きたいと強く願った少女は成長し作家となって、自らの原点を明らかにしていく。
感想・レビュー・書評
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作家さんを等身大に感じるのに、エッセイを読みたくなりますよね。作家さんと自分との接点を見出して嬉しくなったり。小川洋子さん、本人も認めるように小説では少し昏い世界をお書きになりますが、阪神の熱烈なファンであるなど意外性たっぷりです。
おこがましいようですが、小川さんは書きたい人なのだなぁ、天性の作家さんなんだなぁと思いました。どの言葉を掬いとるかということに専心しつつ、一方で言葉にできない空間に意識を払っている。金井美恵子さんらの小説について綴った箇所も、とても素敵でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小川洋子さんの小説、エッセイ、声、語り口、外見…小川洋子さんが大好き。
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S図書館 1993年
6冊(1988~1993年)執筆後に書かれたエッセイ
1 小説のこと
2 3 日記
《感想》
表紙から興味を持った「遠慮深いうたた寝」を読んだら、出だしから感銘を受け、作品を全部読みたい衝動に駆られ、古いエッセイを手に取った
ある一場面の、その一瞬間を表現するのに、どの言葉を用い、どの言葉を選ぶのか大変苦労されている
例えば「春爛漫」は便利な言葉だが、ここでぐっと我慢して、自分だけの言葉を絞りだしてゆくことが小説の原点だと、自分に言い聞かせているという
こういう気持ちで言葉自体を大切にして尚且つ、五感を感じさせる言葉たちに、「凄い」と感嘆をあげながら、心を鷲掴みされた
とても楽しく読んだ
「見えないものを見ている」
「見えないものを言葉で見ようとしている」
こんな世界を書こうとしている
小川さんを勝手ながら師匠と呼びたいと思ってしまった! -
古くなるということは、そこに関わりを持った人たちの生きた証が、それだけ深くしみ込んでいるということだ。
【仕事の周辺 建物】 -
あの「博士の愛した数式」を書いた作者の駆け出しのころのエッセイ。
どんな風に言葉を紡いて小説を書くのだろうと思って読んでみました。
真摯に言葉に向き合うひたむきな姿勢と、書くことが好きという想いが伝わってきた。
印象に残ったのは「小説は言葉によってしか表現できないものだが、それだけですべてを表現しつくしてしまうことも、またできない。言葉が持っている目に見えない模様を見せたい」。そう、小説って言葉で表されているもの以上にその裏に感じる情景や思いや手触りといった諸々のものを感じさせる。私は一読者としてそれらを感じられる読書が好き。
あと印象的だったのは、出産した時に感じた哀しさの話。産声に切ない哀しさを感じたって。人は哀しさを抱えて生まれてくる。手付かずの純粋な哀しさ。曰く「人の心を掘り起こしていって、一番奥の髄にある哀しさを表現することが、小説を書くということではないだろうか」。私が彼女の小説に心を動かされる訳がわかったような気がしました。
読み飛ばしたところも多々あったけど、印象に残る箇所のあるエッセイでした。 -
綴られる日常にも小川さんの小説の世界観が密やかに棲んでいるようだった。同じ景色を見ていても、どう感じて、どう捉えて、どう大切にしていくか、それは人それぞれだけれど、小川さんの穏やかな感性はそれらのあらゆる面、光も影も傷も淀みも、丁寧に掬い上げている。だからこそ、小川さんの小説はこんなにも哀しくて愛おしい。感じる手触りが、わたしも持って生まれたはずの純粋な哀しさの色だったらいいな。
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再読です。小川さんの「書きたい」という思いをあらためてしみじみと強く感じるエッセイでした。初期の頃のエッセイなので、あの小説はこんな思いで書かれたのだ、というところが興味深いです。出産と子育て、阪神タイガース…阪神タイガースの応援日記が、なんだか小川さんを身近に感じました。日々の切り取り方が、エッセイという形でも、小川さんだなと思わされます。面白かったです。小川さんはやっぱり、物語を紡ぐために生まれてきたのだなと思いました。これからも読みます。
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どこかに忘れ去って来た思い出たちを、ふっと思い出す。
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書くことに対する情熱のある方なんだと感じた
同じ内容が繰り返されるのは気になった -
30歳前後のときに書かれたエッセイ集。
『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、子供が生まれて数年という期間。
自省的な文章であり、書くことがいかに小川さんにとって大切でかけがえのないものなのかがひしひしと伝わってくる。
早稲田に通いながら小説を書き始めた頃の思い出が印象深い。
決して芽が出ない作家志望者が大勢いる中で、ずば抜けた才能を持っている人ではあるけれど、ひたむきに書き続けることが一番大切だと感じられた。
後半に出てくる熱狂的な阪神ファンならではのエピソードも面白い。
阪神の勝利と読売の敗北を何よりののぞみとしながら、暗黒時代の阪神の戦いに一喜一憂する健気さであるよ。
作家としてだけでなく、母としての姿が垣間見れるのも新鮮である。