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- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043417100
感想・レビュー・書評
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ドキュメンタリー作品「もの食う人びと」が面白かったので、
それにつられて、何となく買った作品。
が、内容は世界各国で記号化された土地を
わざわざ訪問したリアリティと博愛が混在する同じ著者とは思えないほど、
次々と研ぎ澄ました刃で自傷するかのような暗鬱な内省を展開している。
「もの食う~」の取材から帰ったのち、脳出血と腸ガンを立て続けに患い、
文字通り、死と隣り合わせになった著者。
その半身不随の身体と記憶の多くを消失した脳みそで、
世界を、経済を、思想を、文化を、システムを、文学を広角な目線から批判し、
その批判の急先鋒にいつも著者自身の自己を据えている。
自分が自分を批判する構図。
本書を通じて挙証されるテーマは無数にある。
恐らくは、読んだ人の数だけ、解釈を許す多義性があるが、
僕が最も心惹かれたのは、文書を書く人間として「衒う」という営為。
この衒いが、必然的に、唯只管に自己を内面を見つめるだけの眼の存在を焙り出し、
「無自覚な罪障」と名付けた、自らの深い罪過のありようを見つめる。
内省によって新たな内省を求められ、その内省が別の内省を要請するが、
本当に最後の部分は、僕が読んでも書ききれていないと分かる。
けれど、その書ききれてない様も詳らかにすることで、
人間としての自己の浅慮と愛と虚無の混在する多面性を浮き彫りにしている。
「語ること、行うことの底方の不実」の罰は「生涯にわたる沈黙」。
どこまでも衒いがつきまとう。