- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043480029
感想・レビュー・書評
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タイトルの意味のエピソードが巻末に乗っていて納得、好きなアーティストから譲り受けた一冊なので丁寧に丁寧に日々いくつかずつ読んだ。キャンプの実況は森の匂いまで伝わってくるようで穏やかな気分になった
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エッセイ集的な本
江國香織の実体験なのかな?
すごくリアリティがあった
途中の本の紹介とかはちゃんと読んでみたら面白い発見なのかもしれないけど、ちょっとそのページとかは退屈しちゃった
ラルフへっていう題の話は不倫のことについて書いてあるんだけど、不倫を良いようにも悪いようにも書いてなくて、ただただ恋愛として書かれてて、こういう見方、考え方もあるなって感じた
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長編をどっぷり読むのが好きだなあと思いつつ、
気持ちのよい、噛み締めたくなるエッセイだった
どこを読んでもうっとりする、タイトルだけでもわくわくする
江國さんが日常をどういうふうに見ているか、
どんな雰囲気の中で生活しているのかをのぞけるのは幸せなことだ
夜に緑道のベンチで読んだの気持ちよかったな
なんだかさみしい夜、8月でも夜風は心地いい -
大人の切なさと愉しさ。江國さんのエッセイは疲れた時に身に染みるし甘美でほろ苦くて美味しい。風邪ひいた時のお粥、深夜の豚骨ラーメン、二日酔い明けのみかんゼリーのような、説明し難い安心感がある。
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エッセイ集。
読書の喜びは、物語の喜びとはまた違い「紙に閉じ込められた一つの空間を、自分で頁をめくり、読み進めることによって解き放つ、という能動的な作業のもつ愉快」と。
表現の仕方に唸る。
何度読んでも、その時々の気づきや共感があるのが面白い。 -
読書リハビリ第二弾。やはり江國香織は最高だなって感じですね。清涼剤。平成の清少納言。文章そのものが美しくて好き。最初の「一人になるとき」が小説みたいだったので「小説だっけ!?」ってしょっぱな裏表紙確認してしまった。
「世のなかの、善いもの、美しいもの」に絵と文章の話があって、とても好きだった。 -
モヤっとした気持ちを綺麗な言葉にしてくれる人の1人。
そして自由で可愛い方というイメージ。逃亡したり旅に出たり。「信じられないくらい清潔でしっかりしたバタークリーム」なんて言い方もらしいと思う、そんな
江國さんの言葉がひどく好きだ。ひどく、笑 つい真似てしまうしこういう言葉を発したいと思う。本の話は馴染みがなくて少し難しかった。 -
昔、枕元に置いて寝る前にパラパラめくって読んだりしていた本。なんとなくリラックスできる。エッセイというジャンルは元々あまり読まないけど、江國さんのだけは好き。
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繊細で丁寧な言葉たち。
江國香織さんの丁寧な言葉はお父さんからの教えだったんだなと…
彼女が感銘を受けた作品を私も触れてみたい、好奇心が広がりました。 -
江國香織が生活について-大切なもの、なつかしいもの、いとおしいものについて-書いたものを読むのがすき。
江國香織の作品の「質感が肌にあう」からで、それは十年以上前からまったく変わらない。
その頃から彼女はわたしと歳の離れた、ほとんど雲の上の存在だった。
この単行本が1996年刊行で、彼女が32歳くらいの時の作品だと知るとみるみるうちに親近感がわいた。と同時に、同世代でこんな文章が書けるのか、と震撼した。
本を閉じ、秋の高い空を見上げながら、日々を丁寧に生きよう、と思った。
p11
音楽が鳴り、メリーゴーランドが回り始める。ゆっくりと、徐々にスピードをあげながら。お客は私だけだった。くすんだ景色がうしろに流れる。がらんとしたその寒々しい場所で、私は馬と勇敢にすすむ。立っている男をそこに残して。
唐突な解放。視界から男が消えた瞬間の、なんという身軽さ、なんという孤独、そうしてなんという安堵。
p12
雨に濡れた街路の匂い。
一巡ごとに心がしずかに鮮明になり、私はまた一人になるときがきたのを知った。
p14
私は、奥さんには奥さんの特権があると思う。それはもう理屈じゃなくて、侵害できないものがあると思うの。じたばたしても駄目みたい。ただ、反対に恋人には恋人の特権がちゃんとあって、役柄をとりかえるわけにはいかないけれど、どっちにもそれぞれの存在価値があるはずだと思うのです。
p16
その人と出会って恋をした、っていうことがすべてで、それはとても幸福で誇らしいことだから、たとえばその人に家庭があっても、それを悲しむ必要なんかないでしょう?
p18
「不倫」ってもしかしたらそういうものかもしれないと思うのです。本人にとってそれは悪いことでも悲しいことでもないのだけれど、理屈のバリアをはずしてふと外側から眺めたら、わけもわからず一ぺん涙にくれてしまうみたいな場所に、それはやっぱりあるんじゃないかって。
だって、人を好きになるというシンプルな感情を分類して、不倫とか遊びとか本気とかいちいち名前をつけるなんていうこと、どうしたってナンセンスでしょう?
この人を愛すと決めたから愛す、のではなく、愛さずにいられないから愛す、のだと思いたい。そのせいでいつか恋愛に終りがくるとしても、仕方がないと思うのです。
p19
息苦しくなるくらいなの。わかるでしょう?一瞬の中にたくさんおしよせすぎて溢れるみたいな幸福、前後から切りはなされた、まるでそこだけ抽出して純化されたみたいに刹那的なあの幸福。
p26
それは、しずかに心をはなした人の視線だ。絶望と孤独をひっそりうけいれた人だけが持つ、水のように透明で淡々とした視線。
p35
憧れの月の砂漠。てらてらと濡れたみたいにひろがる夜の砂漠は息をのむほど美しく、私はうっとりと立ちつくした。
p37
彼らのなんでもない会話、リズム、小さないさかい、ところどころでフラッシュバックされる東京でのできごと。愛情というのはたぶんこんな風に、情熱や欲望とはまったく別の場所に、そうっと存在しているものなのだと思う。
p42
アフタヌーンティーの習慣というのは、十九世紀の半ばにベッドフォード公爵夫人アンナマリアが社交界に紹介して以来定着し、イギリス人の生活に欠かせない習慣になった、と物の本には書いてある。
p43
トラディショナル アフタヌーンティーの基本パターンは、紅茶にミルク、それに華麗な鳥カゴのごとき三段構造のお皿にのった、サンドイッチとスコーンとケーキ、ということになっている。
p44
BO-PEEPは店の真ん前が小川で、みんな草に直接腰をおろして、ピクニックみたいにのんびりとお茶を飲んでいた。投げ出されたはだしの足元で、件のポットが草の間に見え隠れしている。そしてあの風景!水の音、葉もれ日をおとす木、夏の日差し、古い石壁、同じ色の石の橋。ひどく牧歌的なお茶だった。お茶を飲むというのは時間を止めることだ、と、はっきりと知る。意図的に生活を停滞させること。
p63
昔話は力強い。シンプルで洗練されていて、骨格がきれいだ。第一おもしろい。ぱらぱらとひろい読みをしていると、物語への信頼感がよみがえってくる。
ときどき音読する。言葉の持つ力がはっきりと伝わってくる。
p123
言葉によって一つの概念として把握するのは、たぶん何かを著しく損なうことなのだろうけれど、一方では感情に理由を与え、かなしみを軽減してくれる。
p127
理屈ではなく、それはもう皮膚感覚の領域で、小説の質感が肌にあうのだ。
p132
まったく、結婚というのは残酷なことだと思う。結婚するというのがどういうことかというと、いちばんなりたくない女に、いちばん好きな人の前でなってしまうということなのだ。いやになる。
p214
またあしたね
なんて幸福な言葉。あしたも会える、ということ。