平家物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 98 ビギナーズ・クラシックス)
- KADOKAWA (2001年9月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043574049
作品紹介・あらすじ
一二世紀末、貴族社会から武家社会へと歴史が大転換する中で、運命に翻弄される平家一門の盛衰を、叙事詩的に描いた一大戦記。源平争乱における事件や時間の流れが簡潔に把握できるダイジェスト版。
感想・レビュー・書評
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『平家物語』は全十二巻+灌頂巻という大変長い物語です。
貴族社会から武士社会への転換期。そのなかで、台頭してきた平家一門の盛衰。
なぜ戦いに勝った「源氏」の物語ではなく、敗者の「平家」が物語となり世に広まったのか。なぜ栄華を極めた組織が必ず衰退へと向かってしまうのか。帰するところ『平家物語』がわたしたちに伝えたかったことは何だったのか。
そんなことを知りたいと思い、まずは平家物語の流れを把握しようと、いつも古典作品を読む際はお世話になっている「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」シリーズを手に取りました。
思った通り『平家物語』という全体像をとらえることができるように編集されており、とても読みやすかったです。
そもそも、わたしが『平家物語』に興味を覚えたのは、十数年前のゲーム「遥かなる時空の中で3」から。なかでも平敦盛と平知盛が大好きなキャラクターでした。大好きな人のことは知りたいという不純な動機によって、「敦盛最期」のエピソードや知盛の言葉「見るべきほどの事をば見つ」などは、抜き読みをして知っていましたが、今回それだけではない『平家物語』の流れを簡単にですが把握することができて、もっと読みこんでいきたいなと胸が熱くなりました。
清盛が亡くなってから、平家が滅びへと向かう後半にわたしの感情は持っていかれます。戦のなかで散っていった武将たちにそれぞれの物語があり、それがより一層無常観を誘うからです。
『平家物語』には、彼らの魂が往生できるように鎮魂の意義があることを知り、ああ、そうか「祈り」の物語なんだなと心底から感じ入りました。
「驕り」の果てに滅びた組織。
浄土の教えが根底にある物語。
武士の理想の死。
地獄をさまよう平家の亡魂が救済される「鎮魂」の意義……
繁栄から驕り。栄華の翳りから衰亡。そして鎮魂へ。哀調を帯びた美しい文には、亡くなった者たちへの深い祈りが込められています。
『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き人もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。』 -
『平家物語』は、貴族社会から武家社会への変革の中で滅びていった平家一門への「長大な弔辞」「慰霊の深い祈り」であるという。
平家一門が主人公であるため、とにかく登場人物が多い。何度も巻末の「桓武平氏系図」を参照しながら読んだ。有名な部分はいくつか読んでいたので知っているつもりでいたものの、初めて知ることがたくさんあった。もちろん簡単なあらすじだけがまとめられている部分が多いので、まだまだ知らないことだらけだ。
でも、さすが「ビギナーズ・クラッシクス」。わかりやすい現代語訳と解説。巻末には研究案内書や史跡などの史料があって、どんどん調べたくなってくる。古語のちょっとしたニュアンスの違いも感じながら原文で読めるようになりたいなぁ。 -
「平家物語の中から好きなエピソードを2-3言えるようになりたいなぁ」と今更。
読むのに躊躇するような難しげな本、そんな時には私の心の友、ビギナーズクラシック。
日本で教育を受けた人ならまず全員諳んじることが出来るあの冒頭から。
普通はこんなオチを最初に持ってきちゃいかんのだろうけどこの話を「聞く」人達は最初から人生の「あはれ」「無常」をドラマティックに聞き入るのが目的だからリズム良く物語のテーマから始まることで話の中に連れていく感じなのね。「鐘の音」「花の色」そうね、なんだか目が開いてるのに白昼夢を見るよう。暗く広い部屋、和蝋燭、琵琶法師の声。これは異世界に入る呪文的な?
この年までその感覚がわからなんだわ。
巻第一
祇王と仏御前がいいねぇ。特に仏御前。外国にも勿論こういう「権力者の庇護から自らの意思によって(命の危険とかじゃなくて人生の虚しさのため)逃げ去った女性」の物語ってあるんだろうけど、一応これってノンフィクションだもんね。日本でも女性は極めて激しく差別されてきたし現在もとんでもないレベルで続いているものの、こういった女性の哲学による行動(しかも日本最高レベルの生活を捨てる)ことがあるのもまた不思議。
巻第二
重盛かっこよ。中国宮廷や英国王室、ギリシア神話に至るまで「暴君の息子がマトモ」「賢帝の息子がクズ」ってのはあるけれど、ここでも清盛のヤバさと重盛がクリアな対比を見せて物語にエッジを与えてる。にしてもさぁ。世界中の人間はこうやって「親と子は似てるけど親子だからと言って頭の中身や品格まで似るわけじゃないで」と神話伝記故事物語を通じて教訓を残してくれているのになぜボンクラ世襲議員に投票(以下自粛
巻第三
鬼界島に一人取り残される俊寛。その暴れる様は喜劇的な悲劇。重盛の自殺のような神託。中国への大金送金と永代供養依頼。
こういうのって日本人の宗教観を表してるように思う。神罰はあるんだけどその神仏に仕える人達がことごとくろくでなしのクズ。神仏は恐れても宗教家は同じ人間だと。一神教ではこんな宗教家の堕落した姿や武力行為を物語として一般市民(信者)に聞かせられないですよね。
更にオモロいのは重盛が東山に建てた荘厳な仏堂。38基の灯籠(ここまではいい)、念仏を唱える美人尼の集団の配置。え?美人尼?
ここもとても日本的。尼さんが美人であることがプラスに働くような宗教観。全てファッション感覚でとてもいい。これなら欧州から宣教師が来て日本侵略を企ててものらりくらりとやり過ごせるでしょう。だって遊びでやってるもん。何もかも。笑
巻第四
渡辺の源三競の滝口(摂津の渡辺党、源氏の三男、名は競きおう、滝口の武士)エピ。こういう「相手をコケにした仕返し」って好きだよね。人間って。
三井寺の対等な態度が気に入らない延暦寺。奈良の興福寺はOK。この辺も平家物語を聞く一般大衆に「宗派が同じか違うかなんてことは政治的な問題を下回る些細なこと」という印象を植え付けるだろう。やはり現代に繋がる「ファッション宗教」を感じられてとてもいい。
巻第五
不吉エピを散りばめて不穏な空気を演出。これから起きることが神罰で、運命で、逃れられないことを再確認するような章。
当時の人達、というかつい最近まで、人間は運命宿命天命によって生かされてますっていう自覚だっただろうからこういうストーリー展開はさらに効果的だったのかも。あと音楽。この時の琵琶法師はどんな感じだったんかな。イミテーションゴールドのイントロみたいな?おどろおどろしい感じ?
巻第六
清盛死去。熱病(マラリア、もしくは瘧)の描写が素晴らしい。
巻第七
都落ちの平家一門。清盛の血を引く者をそれぞれ短く触れていく。清盛の弟忠度(ただのり)都落ちの際、歌の師匠俊成(しゅんぜい)に「戦後選定御下命あれば」と自らの秀歌百余首を託す。「千載和歌集」には「ささ波や志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」が。但し天皇のお咎めを受けた人間なので「よみ人しらず」の一首としてのみ。
牽制を誇った人間でも朝敵となったからには歌だけ残り名前すら残されないこの無常感。平家物語の中のミニ平家物語マトリョーシカ。伝えたいのはひたすらの無常。
巻第八
九州から四国に逃げ移る平家、威風堂々と法皇の使者を迎える頼朝、京都での木曽義仲の横暴な振る舞い。西、京、東に分断されたような日本の様子。個人的ツボは頼朝が法皇使者にやり過ぎなほどのお土産を持たせるところ(各宿場にも食べきれない米プレゼント)と、大蛇の子孫と伝わる九州豪族の緒環のくだり。頼朝のやり方は現在も多くの権力者が行う「やり過ぎ太陽政策(威圧)」緒環はまんま「古事記活玉依姫(通い婚って言えば聞こえはいいけどただの犯罪)」
巻第九
所望した馬がライバルに与えられていたことを知った際の男特有の根深く嫌らしい嫉妬から始まり、最後は徒歩一番乗りで笑いの緩みを作った後、主従二騎で挑む最期の一戦木曽義仲と兼平、平忠度、美少年平敦盛と熊谷直実の話などが続く。この緩急。漫才であれ恐怖映画であれ「緊張と緩和」が物語に味と厚みを持たせる。木曽義仲兼平との対比で重衡盛長、親の知盛を庇って息子二人が死んだことに恥いって号泣するなんてのもいい。
忠度も敦盛もお歯黒や笛などが東方武士にはあり得ない高貴さの証となって討たれてしまうんだけど、その高貴さも京都の公家に番犬扱いされたコンプレックスの爆発の結果というか仕返しだったわけでねぇ。
徒歩一番のくだり、敵味方の笑い声が響いたとある。ここで解説の短文もいい。「平家物語の思想はは無常感というがここには陰陰滅々としたものは皆無。そもそも無常をはかない人間の死とするのが間違い。無常は陰陽明暗の対立を対立のまま包み込む、広く大きな人生の知恵だから。」
ちょっと勝手に打たないでよ。こころ。
巻第十
入水自殺する平維盛。頼朝の命を救った恩人筋は特例として助けられる。個人的ツボは鎌倉まで引っ張られた平重衡に頼朝が遊女をあてがうところ。あとここだけではないけれど「美貌の夫人」や「光源氏と謳われた美青年」など容貌についてのこだわりが強い。物語に引き込むためのエッセンスだと言えばそれまでだが、やはり美形でないと悲壮感も出ないし感情移入も出来ない。
巻第十一
那須与一の神技(数十メートル先海上船の扇を射抜く)、壇ノ浦合戦、安徳天皇入水、能登守教経(清盛甥)の最期、新中納言知盛(清盛四男)の最期「見るべきほどの事をば見つ」
平家物語のクライマックス。
パッパラパーの私が知らなかった事。
その1。安徳天皇を抱いて三種の神器と勝手に入水自殺する二位殿(祖母)。有名な「波の底にも都の候ぞ」の前に「この国は粟糞辺土と申して物憂き境にて候」と日本自体を辺境とし海底の極楽浄土を目指していること。(だとしたら最期の言葉は要らないのではとは思うけどまぁここが泣かせのキラーポイントかな)
その2。二位殿は「伊勢神宮に挨拶を」としているけれどもその天皇が伊勢神宮に参ったのは280年ほど無かったと前述されている。大事なのは分かるけどその割に行かなすぎなのでは?京都伊勢でしょ?行けるよね。
その3。「義経の八艘飛び」が戦うための能動的跳躍ではなく消極的逃走跳躍であったこと。
その4。最期を悟った総司令官、新中納言知盛の平家女性陣に対する自棄っぱちブラック下ネタ。
「珍しき東男こそ、御覧ぜられ候わんずらめ」
解説にもあるけど二位殿やりすぎ。
どう考えても安徳天皇は助かったはず。
その5。(日本武尊の)草薙剣だけが海底から見つからないのは素戔嗚尊が退治した八岐大蛇が生まれ変わって安徳天皇となったからだと噂されたこと。
巻第十ニ
義経の都落ち。平家嫡流六代の処刑による平家本流滅亡。(一回は助かるんだけどね)
平家物語おもろいですねぇ。
てか800年以上前とはいえ、こんな闘い方してる我々は他国との戦争は絶対に避けないといけませんねぇ。 -
小学生の頃から何度も繰り返し読んだ愛読本。
敦盛や那須与一のエピソードは有名であるが、平清盛が死去した巻第六からの後半戦はかなりおもしろい。平家といえば巨大な野望を持つ一族であり、私の好感度は低い。だが、その一族が滅びる時の平家の武将の在り方に心を惹かれた。敦盛や惟忠といったような武将の葛藤がみられ、滅びることの哀しさを知った。
原文と現代語訳どちらも充実している為、古文を勉強したい中高生や、古典に興味のある小学生でも読みやすいと思う。 -
『吾妻鏡』だけでは片手落ちだと思い、『平家物語』も。いやー、幼児まで含めて、よくもまあこれだけの血が流されたものだ。
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さらっと全編のあらすじがわかる。学生の副読本的なかんじか。ちょっとした解説や絵が入っていてわかりやすい。
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鴨川の氾濫、ギャンブルの流行、比叡山の僧たちの強訴。これらだけは自分の思うようにならない(白河院)。▼萌え出る若草も枯れた草も同じ野原の草。▼祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き人もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。『平家物語』1220
※頼朝は、自分の例に重ね合わせ、六代が平家再興を計り源氏討滅をたくらむのではと疑った。
道理と末法思想から歴史を解釈。承久の乱、後鳥羽上皇に献じて鎌倉幕府を倒さないようやんわり伝える。慈円じえん『愚管抄ぐかんしょう』1220
思い出す都のことは多く、大井川のたくさんの瀬の石の数もそれには及ばないだろう。▼仮寝でかりそめに見る夢の間だけ借りる枕よ、誰かと契りを結んだなどと人に語ってくれるな。阿仏尼あぶつに『十六夜いざよい日記』1279
白露に 風の吹きしく 秋の野は 貫き止めぬ 玉ぞ散りける ※糸で貫き留めていない念珠の水晶玉(文屋朝康ふんやのあさやす)『小倉百人一首』1235
『吾妻鏡』1300
※鎌倉時代 -
ダイジェスト版で読みやすかった。入門に良い。
平家の栄枯盛衰、また各登場人物の散り際の哀しく儚い様に心が打たれる。
今も昔も、大切な人を想う心は変わらない。 -
ダイジェスト版で、代表的な場面以外はあらすじのみ。
そのため、全体のストーリーはつかみやすい。
平家方・源氏方にかかわらず、文字通り命懸けのギリギリの場面では、個々の人間性・本性が露わになる。ひとりひとりの人間らしさが垣間見えるのも面白い部分。
時代で仕方ないこととはいえ、平家方の高潔な人物や幼い者(有名所だが、平敦盛や安徳天皇)があたら命を落とすことになったのは、やはり惜しいことだったなと感じる。
軍記物語が、いわゆる歴史の”敗者”に向けての鎮魂・慰霊の意図で編纂されたものということがよくわかる。 -
平家物語全巻が一冊で読める。所々原文も載っていて、古文で習ったなぁと懐かしいフレーズも。巻末に家系図や地図が載っているのもありがたい。
これに続いて吉川英治の平家物語も読みたいが、挫折が目に浮かぶ。
2022.05
夏椿というのですね!
わぁ、教えていただきありがとうございます!
それに京都とは。お隣だぞ(〃▽〃...
夏椿というのですね!
わぁ、教えていただきありがとうございます!
それに京都とは。お隣だぞ(〃▽〃)
さっそく調べてみましたら、京都御所や植物園にも咲いてるみたいです。
これは行かなくては!ウズウズ…♡
hotaruさんの『平家物語』のレビュー読ませていただきました。
古川日出男さんの『平家物語』ぜひとも読んでみたいです。
ところでhotaruさんは維盛や宗盛の情けない感じがいいんですね。
もし今の時代だったなら、彼らなら家族思いの優しいパパさんとして幸せな家庭を築いていたかもしれないなぁと思いました。。。
hotaruさんのコメントを読ませていただいて(すみません、カンニングして・笑)私も書き込みますね。
...
hotaruさんのコメントを読ませていただいて(すみません、カンニングして・笑)私も書き込みますね。
夏椿を代替えとしているのは、知っています。
私が探しているのは本物の沙羅の木なのですよ。
花の色も、夏椿は白ですが沙羅の木は薄黄色の花が咲くそうです。
日本にはないと聞けば諦めますが、まだ聞いてないんです。どこかにあるはずなのです。。
すみません、花とか樹木のことになるとしつこくて・笑
あらら、そうなのですね。
沙羅の木について勉強になりました☆
沙羅の木さーん、どうか姿を見せ...
あらら、そうなのですね。
沙羅の木について勉強になりました☆
沙羅の木さーん、どうか姿を見せてくださいなー( 」゚Д゚)」オーイ!