ハルビン・カフェ (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
3.82
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本棚登録 : 417
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043615025

感想・レビュー・書評

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  • 読み返したくなる作品。
    地方都市でのマフィアを巻き込んだ警察内部の抗争を描いた物語。
    舞台が人種のるつぼとなっていて、登場人物の名前も国籍もバラバラ、ということで最初はとても読みづらいです。
    しかし、キャラクターの個性がはっきりしていてスピード感があるので、視覚化しやすい描写も相まって、途中からは一気に読み進められます。
    終盤の盛り上がりと、広げた話の閉じ方も見事で、読み終わってしまうのが寂しく感じられる傑作でした。

  • (200907)
    章ごとに視点が変わるのと、コウの行動に隠された謎と正体が複雑なので何回も途中から読み返してなかなか読了しなかった。
    でも読み返すのも楽しかったのは、文章の組み立てとイメージの鮮烈さが、何度読んでも素晴らしかったから。そしてなんといってもコウの魅力。うなっちゃうね。端役にいたるまで登場人物がいいんだ。

  • 濃密なハードボイルド。なんで彼はあんなに魅力的なのだろう。彼に出会い魅せられたらリアルに死にそうだけど、それでもどうしようもなく惹かれてしまうような、理不尽なハードボイルドでした。

  • この人らしい書き方なんですが、途中何度も読むのを挫折しそうになりました(汗)
    愚者シリーズの方が好きだな

  • もう一度読みたくはならない。
    途中も視点が変わりすぎてもどかしくていやになった。
    でもラストのとあるシーンがひどく印象的で忘れられない。

    この本をきっかけに
    この著者の文庫になっている作品は全て読んでしまった。
    途中の遺作は残念だ。裸者と愚者、読みたかった。

  • 2005

  •  タイトルに魅かれて購入しました。<br>

     語り手の視点が目まぐるしく転換する、とても複雑な構成になっていますが、最後まで飽かずに頁を繰らせる緻密な筆致で満たされています。<br>

     とくに架空都市・海市の微に入り細に入る描写が非常によかったです。舞台となる北陸の新興都市は、北朝鮮系の十星会・中華系の梟雄幇・ロシア系のマフィアグループが三つ巴に縄張りを競い合う非合法地帯として描かれています。街角に佇む欧亜混血の娼婦、牡丹紅酒楼、老沙事件、『日本海NEWS』など、都市生活の断片に与えられた独特の名称には、SFのサイバーパンクを彷彿とさせるネーミングセンスの妙味を感じました。ウィリアム・ギブスンの CHIBA City,コミック『AKIRA』のネオトーキョー、映画『ニルヴァーナ』の印僑街、押井守が描く美しいアジア諸都市……。SFの要素はまったくありませんが、これら異文化混交の未来都市に列なる濃密な猥雑さを分かち合っていると思います。雪国のモノトーンを強調した緊張感ある風景描写にしびれました。<br>


     断片的な証言から浮かび上がる陰謀の複雑さも圧巻です。濃密な読書時間を求めている方にはお勧めの一冊です。<br>

    追記:福田和也『地ひらく〈上〉―石原莞爾と昭和の夢』に、両大戦間のハルビンに関する論評がありました。それを読んでいてふと、「打海氏は単にエキゾチズムを醸し出すために「ハルビン」という呼称を採用したのではない」と気づきました。おそらく打海氏は、第二次大戦前の混乱した満州情勢―関東軍、中国軍、地方軍閥、ロシア軍が入り組んだ緊張関係を形成し、様々な陰謀とテロが画策・実行された―を下敷きに、想起させ、共鳴させるために、「ハルビン」という名称を用いたのでしょう。もしそうだとすると、石原莞爾等と相応する存在である作中のテロリストグループには、もっと壮大な理念を与える必要があったと思います。理念なきテロリストという設定は、ダンディズムの極北として採用されたのかもしれませんが、共鳴を意図した史実に引き比べるならば、浅薄な印象を拭い難いと思います。本作の大きな瑕瑾になってしまったのではないでしょうか。

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著者プロフィール

1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。92年『灰姫鏡の国のスパイ』が第13回横溝正史賞優秀作を受賞し作家デビュー。2003年『ハルビン・カフェ』で第5回大藪春彦賞を受賞。07年10月逝去。

「2022年 『Memories of the never happened1 ロビンソンの家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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