世界が完全に思考停止する前に (角川文庫 も 13-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043625031

作品紹介・あらすじ

大義名分なき派兵、感情的な犯罪報道……あらゆる現実に葛藤し、煩悶し続ける、最もナイーブなドキュメンタリー作家が、「今」に危機感を持つ全ての日本人を納得させる、日常感覚評論集。

感想・レビュー・書評

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  • 森達也の随筆集。解説で姜尚中が述べているように、森達也は"一人称の思考と感性"を体現しており、全体主義的な日本では珍しいタイプの知識人だ。彼の個人の視座に立った文章は、今の日本に疑問を抱く多くの人に感慨を与えると思う。

  •  たまには硬い本を読んで勉強をしたいと思うことがあって買ったのが10年以上前で、しかも文庫なので、元の本は2004に書かれており、時事問題を扱っているので今ではうっすらと記憶にあるような話題が多い。でもあまり硬くなくて読みやすかったし、難しくもなかった。人々の感覚の「麻痺」を強く指摘していて、今ではもっとひどくなっている。特に麻痺しているのはオレ自信で、もはや社会問題にほとんど関心がなく、消費税が何に使われていても、どれだけ上がってもどうでもいいとしか思えない。感覚としてはどうでもいいのだけど、実際問題このままではよくないので頭のいい人に頑張ってもらうしかない。

  • 図書館

  • イラク戦争や、北朝鮮拉致問題、
    オウム事件などについての矛盾や欺瞞、
    そういった、「メディアでは語られないもの」について、
    「語られていないものがある」という自覚を持つこと。

    寄稿された文章が中心で、重複する内容も多いため、
    途中で投げだそうかとも思ったが、
    読んでいるうちに、どんどん引き込まれてしまった。

    ある意味正論ではあるが、「では正しいって何?」という
    問題設定から入らなくてはならなくなる。

    そういう問題設定を促す読み物なのかもしれない。

    表現されている時点で、ノンフィクションというものはなく、
    ノンフィクションというものがあるとすれば、
    それは表現ではなく情報だ、という見方が根本かもしれない。

    その情報すら、意図的に、もしくは無意識的に、
    選別された結果である可能性が高いのだが。

    [more]
    (目次)
    世界は今、僕らの同意のもとにある。
    (作られる聖域、戦争は嫌だという「感情」 ほか)

    いつになったら、日本は大人になるんだろう。
    (タマちゃんを食べる会、で、何だったんだろう、あの牛丼騒ぎって。 ほか)

    メディアは、どこまで無自覚に報道し続けるのだろう。
    (メディア訴訟は黒星続き、消された五分間 ほか)

    二十一世紀のメディアを生きる人々
    (戦場のフォトグラファー、精神科救急研修医。 ほか)

  • 世界が完全に思考停止、したのか。

    単行本としては2004年に出たもの。著者が警告した世界になっているのではないか。思考停止しているのではないか。「一人称の主語」から離れ、「我々は」「私達は」「我が国は」で語っていないか。悪を罰することを楽しんでいないか。不特定多数の主語となって、正しくない人や物事を裁いていないか。この人のことばは、きっとますます忌避されているだろう。でも著者が、この世界にいる限り、私も「私は」で考えたい。私がどうするのか。

  • 著者の本は好きです。

    が、これはあんまり好みじゃなかった。

    多分、時系列でエッセイをまとめたものでなんか物足りなかった。

  • なんでも、かんでも、反対ばっかり。
    死刑反対、オウム 北朝鮮 擁護、でイヤな感じ。
    私の中では、小田嶋隆さんを同じようなくくりにしています。でも、小田嶋さん方が明るい、シャレが効いてる。
    と思って読んでましたが、途中でプロレス好き、であることを知りました。
    その事だけで、前言を撤回して、森さんを大好きになりました。

  • 同著者の「下山事件」は私には難しくて最後まで読めなかったが、こちらは数ページのコラムがたくさん入ったものなので読みやすく、また著者の考え方の特徴を知ることができた。

    内容に同調できる部分とできない部分があったということは置いておいて、書き方が弱気だと思う。

    自分は大した人間ではない。
    自分の意見が全く正しいとは思っていない。

    といった自虐が、随所に書かれており、なんだかんだで批判や人の目を気にするタイプだなと感じた。

    追記:
    >森達也さんは、切れ味鋭いとか、客観的でわかりやすいとか、そういう表現者じゃない。逡巡し、矛盾を抱え、右往左往している。そしてときに感傷的だったりもする。だから私は彼のことが信頼できるんだと思う。

    というレビューを書いている人がいて、納得した。
    なるほど、そうかもしれない。

  • アザラシの命の尊さを声高に叫びながらホタテの命をゴミのように扱ったり、在日外国人に選挙権を与えずにアザラシに住民票を交付することの矛盾に対して、不感症にはなりたくない。

    考えさせられる。

    四半世紀以上生きてきて、まだまだ知らないことがたくさんある。

  • 世の中納得いかないことだらけで、嫌なニュースが溢れていて、多くの人が怒っていて、そのことについて私自身も色々な思いを抱くにもかかわらず、うまく言葉に出来ない。けれど、主流に流されずに、とりあえずそのモヤモヤを自覚すること、首を傾げることだけは止めちゃいけないと思った。
    この本を読んでいるとなんだか涙が出そうになった。この世の中を形成しているのは、「あの人たち」とかじゃなくて「私たち」だから。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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