板谷バカ三代 (角川文庫 け 4-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043662043

作品紹介・あらすじ

初代・バアさん…古くなったパンストを帽子にしている大正生まれ。趣味はふりかけ作り。2代目・ケンちゃん…火炎放射器で我が家を全焼させた家長。趣味はベンチプレス。3代目・セージ…30過ぎても机の中には爆竹が満杯。趣味はポストの投函口の匂いをかぐこと。バカの「黒帯」たちが繰り広げる戦慄のバカ合戦が、貴方の腹をよじりまくり!立川の"ナイスなスポット"をナビる「アド街ック地獄」、各界の"板谷家"ファンからのメッセージ「We love"バカ三代"」を収録。読めば必ず元気が湧き出る、全人類必読の超絶コラム。

感想・レビュー・書評

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  • ……そんなバカリンピック級のプレイとモノ凄い煙で、オレの目は開けていられないほど痛かった。

    嫌な予感がした。というのも、10日くらい前にケンちゃんが火炎放射器のようなモノを購入し、バアさんの監督下で連日のように庭の雑草を焼いていたからである。むろん、オレやオフクロは、こんな空気が乾燥した時期にそんなことをしたら危ない、と何度も注意を促した。が、ケンちゃんは「いいんだよっ、魔法のように庭がキレイになっちゃうんだから!」と聞く耳を持たなかった。 そして、オレのその予感は見事に的中していたのである……。 「あ……うああああっ、ウチだったのっ!!」

    「後片付けが大変だから、この際もう1回火をつけちゃえば楽になるんスけどねぇ~」 というケンちゃんの声が聞こえ、その2秒後、 「この家は外はボロだったんですけど、中には億という家財が入っていたんですよ」 というバアさんの声が続いた。……なんというコンビだろう。自分達で家一軒を消失させときながら、早くも近所の人達に得意の「お調子コキ」と「見栄っ張り」を繰り出し始めているのである。

    オレが所属している一族は頭が悪い奴、それと本格的なバカだけで構成されている。これからおっ始まるバカのドミノ倒しのような話。その中心にくるのが、家系図にも示してあるようにゴールデンラインの3人(バアさん、ケンちゃん、セージ)で、いずれも核兵器級のバカである。
    案の定、ケンちゃんは、「人生はパーティのようなものだから」とか「鳥は梅の実を食べている時が一番キレイだ」といったトンチンカンな答えを連発。

    が、福岡に住んでいる友達がわざわざ送ってくれた『長浜ラーメンこってり味』にシラス干しをブチ込まれた時だけは、ガマン強くなったオレも気が付くとバアさんの背中をグーで乱打しており、和太鼓のような香ばしい音を響かせていた。それほど悔しかった。

    早朝バアさんがビデオの中に食パンを入れ、プレイボタンを何度も押していたらしい。そう、新型のトースターだと勘違いしたのである。 結局、そのビデオデッキは修理不可能で、妹はハムスターのように震えながら声も出さずに泣いていた。

    ウチの家族を最も悩ませているもの。それはバアさんが作る恐怖のコロッケだった。なぜ恐怖かというと、とにかく頭蓋骨にヒビが入るほどマズいからである。その中身は、ジャガイモの他にシラス干し・ニラ・リンゴ・春雨などがえげつないほど入っており、バアさんはソレを一度に100個ぐらい作るのである。つまり、バアさんがコロッケを作ったら最後、ウチの食卓には4~5日間にわたってソレがのり続けるのだ。

    ちなみに、去年オレが引っ張った時には「頭の上はロケット時代」という短歌が登場し、続いて薄汚いブラシが出てきた。

    で、ロケットとブラシに何の関係が……とバアさんに尋ねると、 「今の若い衆は重油で髪の毛をツンツン立てて、それがロケットが発射しているように見える。だから景品はクシだ」と言う。……完璧に自己完結の世界である。 さらに、その年に最も厄介なモノを引き当ててしまったのが弟のセージで、「千でかかれば恐くない」という短歌が出たと思ったら、続いて千羽鶴が出没。 言うまでもないが、病人や甲子園球児じゃあるまいし、今どきそんなモノが当たって喜ぶ若者はいない。
    さて、今度は弟のセージの紹介に移ろう。この男の主な特性はナシ。あまりにも凄まじいバカなため、特性とか特徴なんてモノが形成されないのである。 それでも奴の特性をあえて挙げるなら、『ひたすらバカ』。それがすべてだ。 セージは、幼少の頃からバカの片鱗を見せていた。 姉(オレにとっては妹)の飼っていたカナリア、それをシャンプーで洗い殺したのは7歳の時だった。

    現在無職なのにこの清々しさ。今だけを生きている

    ベッチョというのはセージの小学校時代からの親友で、セージを大バカ界のマイケル・ジャクソンとするならば、奴はチンパンジーのバブルス君に相当する男だった。 オレは2人の間に割って入り、とりあえず落ち着いたところでなんでケンカになったのかを尋ねてみた。


    結局、セージは運送会社のドライバーになり、半年後、トラックが青じゃないからという理由でソコを辞めた。 それからのセージは、相変わらず「貿易会社の社長になりたい」と言い続けながら、イロイロな運送会社を入ったり辞めたりした。そして、今から2年前。奴は某自動車メーカーの下請けの会社に入った。 「ボク、所長になっちゃった……」 本みりんのペットボトルを手にし、会社から帰ってきたセージがそんなセリフを吐いたのは、それから8カ月後のことだった。当然、真に受ける者は誰もいなかった。が、奴の話を聞いてみると、勤めている会社が親会社から独立し、支部を3つ作るので、社長に「その中の1つの所長になってくれ」と間違いなく言われたというのだ。 その後、セージは手にしていた本みりんをオフクロに横柄に渡し、 「それは、みりん風味じゃなくて本物のみりんだから。……ま、これで美味しい料理を作ってよ、頼ンます」 と言って、すっかり大物になったような表情をしていた。

    を出てから4時間後。高速道路の岐阜インターから降りたオレたちは、そのまま太い国道を走っていた。と、急に「あ~~~、アポロチョコが食べたくなっちゃった」と言い出すセージ。もちろん、オレは無視することにしたが、それから奴はズーッと「アポロチョコが食べたい」と繰り返すのである。

    改めて言うのも気が引けるが、ブカのおじさんは正真正銘のバカである。が、その辺のバカと違うところは、その行動の中にはいつも限りない優しさ、タフさ、純粋さがあふれているのだ。

    結局、ブカのおじさんは300メートルほど流された地点で、キャンプ場にいた数名の大人に無事保護された。そして、川岸に上がってからスグに幼稚園児だったセージに「心配かけてゴメンな」と声をかけたところ、「ブドウちょうだいっ。ねえ、ブドウちょうだいよ!」と返す刀で言われ、ズブ濡れのまま近くの町までブドウを買いに行ったのである……。
    1時間後。その老女はバアさんの妹の友達とかで、名前を秀吉といい、週に3日ほど家政婦として通ってくることになった、と困り顔のオフクロから知らされた。 白い湯衣がユニホームで、ババアなのに名前が秀吉………。それだけでも刃物のようなインパクトだが、彼女が作る昼食というのがまた凄かった。あろうことか、秀吉は雑煮しか作れないらしく、しかも、その中にバナナを揚げたモノが親の敵のようにしこたま入っているのである。そして、そんな見習の相撲取りでも食べないような代物が、週3回、必ず我が家の食卓に並ぶようになった。

    次に秀吉の集中攻撃を食らったのはセージである。奴はその頃、目黒で独り暮らしをしており、本人が言うには「人んちのペットを散歩させたり、鯉に色を付けたりする総合ビジネス」をしているらしかったが、オフクロは(それはビジネスではなく、他人の家の生き物と勝手に遊んでいるだけなのではないか…)と絶えず不安がっていた。

    午前10時ジャスト。軍艦マーチが鳴り響いたと同時に、店内になだれ込む客。運動神経だけは異常に発達しているベッチョは、前のオヤジの頭を右手でロックし、その手をオケラのようにかいて、さらに突進の勢いをつけた。 数秒後、狭い通路をコマのように回りながら進んでいくベッチョ。そして、回転しながらも百円ライターを3つのパチンコ台の上皿にそれぞれ放り込むというウルトラCを演じきった後、店内中央にある両替機に激突した。

    半年前の複雑骨折も、元をただせばオレたちの席を確保するため。今回の60万円にしても、基本的にベッチョはケンカを止めようとしただけなのだ。『巻き込まれ型のバカ』。奴の特性を最も的確に表した言葉である。
    しかし、目が覚めてからまだ10分と経っていないのに、この訳のわからなさの数珠つなぎ連チャンは何なんだろう。誰がなんのために湯舟に真鯉を入れたのか? 茶の間のオバちゃんは一体何者なのか? タケヒコとは誰か? 運送会社に勤めているセージ、奴が手配したバイトとは何なのか? ……とにかく謎だらけである。 が、現在この家にいるのは、オレと見知らぬオバちゃんの2人だけ。尋ねる相手がいないのである。

    バカというのは、用事もないのに出歩くのがホントに好きである。したがって、何かを尋ねようとしたり、大切な事を頼もうとする時に限って必ずいない。その上、モノ凄く早い時間に寝る。 オレは、昨日からの疑問が今になっても何ひとつ解消されていないことにイライラしながらも、茶の間にある掘りゴタツの中に脚を突っ込んで、テレビを見ることにした。こんな事でいちいちムカついてたら、この家ではやっていけないのだ。 「ぶぅぎゃあああああ~~~~~~っ!!」


    「なぁ、あのビー玉、もしかしてセージの部屋にまいたの。……なんで?」 「アイツらは、ただクソして寝るだけの金魚だ。金魚鉢の底には、ビー玉が敷いてあんだろ。つまり、そういうことだよ!」 なんというわかりにくい皮肉だろう……。バカの上に、ハッパを喫ってラリっているセージ達。奴らに、そんな難解なメッセージが伝わるわけがない。その証拠に、2階からは既に狂喜しているような声が響き始めていた。

    ケンちゃんは、いつの間にか上半身裸になっており、完璧にゾーンに入っていた。その手にシッカリと握られている一升瓶。たぶん、動物的な勘が働き、その日本酒だけは前もってドコかに隠していたのだろう。 「君みたいな男前はさぁ~、クリスマスになると、ニワトリをヒモで縛ったヤツとかを食べてんでしょ?」 「…は?」 「でも、ニワトリって身体にイイんだよなぁ。ほら、俺も糖尿ヘラクレスだから」 そう言いながら上半身に力を入れ、ボディビルダーのようなポーズをとるケンちゃん。

    12月24日。オフクロが近所のパン屋にケーキを注文し、それが夕食を食べ終わった40分後ぐらいに食卓の上にのる。そして、セージが買ってきた1本200円もしないダメなシャンパンで乾杯し、スットコドッコイな味のするケーキを「クリスマスだから」という理由だけで食べるのである。


    「ま、アンタにそう言われちゃ、俺も凪になるしかないっスけどね」 途端、きびすを返したようにニコニコ顔になるセージ。 恐ろしいほど単純な男である……。奴は、ナベサダをまったく知らないのである。が、(サインをしている人→偉い人→その人に頼み事をされる→自分もそれだけ大物になってきた)そんな図式で、簡単に気持ちが良くなってしまうのだ。 ところが、そのナベサダにTシャツにサインをしてもらった直後、 「あれっ……。このTシャツ、サイズが小さい! Sだよっ、これ。Sサイズだよ!」 と騒ぎ出すセージ。そして、近くにいた販売スタッフに、 「ねぇ、ワンサイズ大きなヤツと取り替えてくんない? ……ねぇ!?……ねぇ!?」 と詰め寄り始めたのである。 オレは、恥ずかしくて脱皮しそうになった。そして、恐る恐るナベサダの方に視線を向ける
    そのディナーショーというのは、ナベサダが毎年夏に開いている恒例のライブで、今回でちょうど15周年を迎えていた。そして、会場の入口で配られたパンフレットの表紙やオレたちが買ったTシャツには、『アニバーサリー15』という文字がデカデカと入っていたのである。 要するに、奴はナベサダの名前をアニバーサリーだと思い込んでいたのだ……。 なぁ、セージ。オレの頼みを1つだけ聞いて欲しい。貝になれ。

    が、安定期にも入ってない妊婦に激しい運動をさせちゃいけないとか、肝臓の悪い者に酒をガンガン勧めちゃいけないとか、空気が乾燥している時に火遊びをしちゃいけないとか、そういう常人なら誰もが装備しているストップボタン、それが「判断力」と「知識」の著しい欠如により壊れているのである。

    板谷家では、何か悲しい事故や事件が起こった際、事態が一段落すると必ずジイさんが一言つぶやく。で、わりとイイことを言うので、それが心の癒しになり、皆が(よしっ、これを乗り切っていこう!)という気になるのである。 「コホン…」 乾いた咳払い。ジイさんが締めの一言を放つ直前の合図である。 「この犬は、ラッキーじゃなくて、結局はアンラッキーだったなあ………」 ジイさんはヤキが回り始めていた。皆、癒されるどころか、ジイさんに殴りかかろうとするセージを押さえるのに必死だった。


    また、ケンちゃんに至っては自身の初恋の話をいきなりおっ始め、それがナオミと新郎の話につながっていくのかと思ったら全然そうじゃなくて、最後は雌猫というのは寂しいと子供を産んじゃうという話になっていた。

    その後、ケンちゃんの話はスーパーボールのようにアチコチに跳び、いつの間にか勉強自慢に突入していた。 「ま、オジさんは勉強ができたから級長をやらされたんだけどさぁ。それに引き換え、次男のセージ。この薄らバカは、中学ん時に塾に入れたはいいけど、3日目に先生から『君は将来大物になる!』って言われて、その塾を辞めさせられちゃってんだから」 「るせえっ!! テメーだって、タダの高卒じゃねえかよっ! 俺のことをツベコベ言えたクチじゃねえだろっ!!」 案の定、早くもキレ始めるセージ。と……、 「お父さんて、高校生の頃は凄いハンサムだったんじゃないですか?」

    そんな言葉を次々とセージとオレに浴びせてくる教官。そして、授業態度に非の打ちどころのないケンちゃんには、次々と質問を飛ばしてくるのである。 「はい、30番のお父さん。じゃあ、信号機の付いていない横断歩道を通過する時は、その手前で何をしなきゃならないの?」 「…………し、深呼吸ですか?」 「……貴方は、さっきから私の話を肯きながら聞いてるけど、何を聞いてたの? じゃあ、もっと基本的なことを尋ねますよ。徐行って何?」 「じょ、じょこう?…………女の工員のことですか? つまり、野麦峠のような……」

    ────それから半月後。予想に反してセージが五体満足でロスから帰ってきた。 で、旅のあらましを奴に尋ねてみたところ、以下のような7日間を過ごしていたことが判明した。 ロスに着いた2人は、友達のアパートで1泊した翌朝、レンタカーでラスベガスに向かうことになった。
    翌朝、セージが泊まっているホテルの部屋に現れたのは「ダン」という名の白人だった。 ちなみに、その青年はロスに住んでいるセージの同級生の仕事仲間とかで、前回、ダウンタウンのCD屋に出向く前にちょこっと紹介されたらしい。 で、たったの1回しか面識がないのにもかかわらず、ホテル代の支払いにも困っていたセージ達のために、わざわざベガスまで車を飛ばして来てくれたというのだ。つまり、信じられないぐらい親切な奴なのである。 ところが、フタを開けてみると、ダンは単なる薄らバカで、しかも、メチャメチャ情けない奴だったのである。 そして、アメリカのバカと日本のバカップルの、この歴史的な出会いが、残りの日々に激しい香ばしさを加えていくのであった……。

    ところが、この特殊な脳味噌を装着している男は、この期に及んでも魔法のように瞬時にしてすべてを解決し、さらに楽しもうとしているのである。が、少しして、その難解な問題にダンが非常にシンプルな答えを出してきた。そう、バカの悩みはバカにしか解決することができないのだ。 『OK! 街を歩いてる奴から借りればいいよ』


    このコラムが月刊誌で連載されている間、そのうちの何回かには2人は目を通していたのである。そして、自分達のバカが赤裸々に書かれているのにもかかわらず、友人達に自分を主人公にした小説が出ると吹聴し、あろうことか、後に何かのインタビューを受けることになるだろうと勝手に思い込み、2人そろってダイエットを始めているのである……。 要するに、スーパープラス思考というか、精神的な痛点が皆無に近いのである。 さて、以上の事はもう考えないようにするとして、最近、20代~同世代の者と話をしていて「ある事」をヒシヒシと感じるようになった。 トロい。ウザい。クサい。ニブい。みっともない。バカ。敗戦処理人生。ゾンビ。燃え殻。厄介者。役立たず。

    バアさんの知人や親戚達が1カ月に1人のペースで死んでいく。 3カ月に1つのペースで、バアさんの何らかの機能がダメになっていく。 ある日、革命的にオフクロの顔が老けている。 腕力だけが自慢のケンちゃんの上腕二頭筋、それが年々収縮している。 オフクロが今までなら考えられないようなポカをするようになる。 スキッパーを手綱で完璧にリードしていたケンちゃんが、ある日を皮切りにスキッパーに引きずられるようにして歩いている。 ……つまり、そういう瞬間を間近でダラダラと目にしているうちに、 (人間というのは、年を取ってくると破竹の勢いで腐っていくもんなんだなぁ~) ということが、理屈ではなく脳に刻み込まれるようにしてわかってきたのである。

    板谷さんがどんなに家族のバカぶりをむちゃくちゃに書いても、彼が家族を深く熱く愛しているということが根底にしっかりと流れているので、読んでいるほうは全然いやな気持ちにならない。 愛ある文章は、がんばりで書けるものではないと思う。家族をほめたり感謝の意を表していても、底のほうに恨みや気取りがあれば、必ずそれは文の表面ににじみ出てくる。でもこの本はその逆で、本当に正直な気持ちだけで書かれているから、後味がとてもいい。

    家族というものは、実は、一時たりとも休むことなく変化しているものだ。 親は老けていくし、赤ん坊は育っていく。生まれたり死んだり、独立したり帰ってきたり、結婚したり離婚したり……常に事件がありメンバーが変わっていくし、家そのものもどんどん古くなっていく。引っ越したり改築したら、もう生まれ育った場所はこの世からあとかたもなく消えてしまう。 私たちは何もかも変わらないふりをしているだけで、本当は切なく流れ去っていくあてどないものを、ゆるぎないと思い込んでいるだけなのだと思う。

    大抵の男にとって、母親というのは絶対的な存在である。で、オレも若い頃に人並み以上の苦労をかけた分、オフクロは世界一大切な、掛け替えのない存在なのだ。そのオフクロが生死の淵に立ちながらも家族を心配させじと笑顔で、精一杯の空元気を出しながら頑張っているのだ。そんな時に、オレはいくら今が稼ぎ時だとはいえ、仕事まみれの日々を過ごすのは誰に何と言われようと嫌なのだ。

    オフクロと縁側に座ってバカ話をしながら茶をすする。オフクロとTVを観ながら笑う。オフクロの体調がいい時は、車に乗せて近所のスーパーに買物に行く。つまり、そういう時間を削るつもりはないのである。 甘ったれてるというなら、それでもいい。マザコンと思うなら、それでも結構。そして、この執筆ペースが元で今の商売が成り立たなくなっても、その時


  • どう見てもヤンキー其の物なのに、どこか憎めない主人公と、更にその上をゆく個性的な家族、これでもかとばかりに、笑い、笑い、たまに涙あり。
    こんな家族とは、決して近所には住みたく無いし知り合いにもなりたく無いけど、本の中では是非老若男女問わず出会って欲しい家族の物語です。

  • 笑っちゃっていいのか?と思うくらいヤバイ、ある意味悲惨とも言えるぶっ飛んだ家族の様子を、冷静に突っ込みながら息子が書くエッセイ。
    ぶっ壊れファミリーが巻き起こす事件の数々が相当に笑える。でもそんな貧乏な生活も、お馬鹿な人々も愛おしい…
    …というテンションではなく、著者のスタンスは"貧乏と馬鹿は最悪だし、こんな生活は駄目。"というところに立っているのが特筆すべき点。
    これだけのエピソード、いくらでも泣ける話に変換できそうなところを、しょーもないうちの家族を笑ってやってくれ!と笑い一本のエンターテイメントで勝負した所は凄いと思う。
    ナベサダのコンサートの物販で怒られる話は涙が出るほど笑いました。

  • レビューとか先に読んじゃってハードル上げすぎたかも。
    腹抱えて笑うほどじゃなかった。
    むしろバアさんを姑に、ケンちゃんを夫に、セージ(と板谷さん)を息子にもつお母さんのご苦労を思うに涙が;;

  • 板谷三代に受け継がれたエイリアンの血液より質の悪い代物。バカという言葉は好きじゃないけど、彼らは愛すべきバカで、筆者がめちゃくちゃな罵倒を吐きながらも彼らを心底愛しているのが伝わってきて、笑いながらもほのぼのしてしまいます。出歩くのが好きで、人の話を聞かず、常人なら誰でも装備しているストップボタンが「判断力」と「知識」の著しい欠如による壊れている、と表現が適格過ぎて思わず笑ってしまいました。少なくともここの母親や妹じゃなくて良かった…。結局自分に降りかかってこないから笑えるのかも。楽しい読書時間でした。

  • 強烈…。
    今後、知り合いの板谷さんと会うたび、きっとこの本のことを思い出すことであろう。関係ないが。

  • 笑えた。

  • 腹の底から笑える。活字でここまで笑えるのは板谷さん、松尾さん、三浦さん。

  • 読友さんのレビューを読んで面白そうだと思い、読んでみました。とても面白かったです(^-^)立川美術予備校で西原理恵子さんと友達になったゲッツ板谷さん、たいした方ですねw。おんなの宿を歌った大下八郎をたいしたやろうと読んでたことを思い出しました(ダジャレすみません)「板谷バカ3代」、立川の最強バカ一家物語(実話)とありますが、嘘に違いない(爆)と思います。1964年生まれの著者のバアさん(祖母)、ケンちゃん(父)、セージ(弟)が主人公ですが、脇役のブカのおじさん、秀吉、ベッチョもすごいです(^-^)

  •  筆者の祖母・父・弟(この3人が表題のバカ三代)を中心に、身内や友人などの、強烈なバカエピソードを載せた1冊。
     すごい。

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著者プロフィール

1964年東京生まれ。フリーライターとして活躍。2006年に脳内出血で倒れるも無事生還。著書に『タイ怪人紀行』『板谷バカ三代』『わらしべ偉人伝』など多数。

「2018年 『とことん板谷バカ三代 オフクロが遺した日記篇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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