わくらば日記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043735020

作品紹介・あらすじ

姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、母さま、姉さまと3人でつつましく暮らしていました。姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。そして、不思議な能力をもっていました。人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。その力は、難しい事件を解決したこともありましたが…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和30年代の前半はこんなだったのかな

    映画、「三丁目の夕日」(西岸良平さん原作マンガの映画)を見たときは、隣の知らないおばちゃんに負けないほど懐かしさや感動に号泣してしまったけれど•••

    こちらはもう少ししんみりしている。

    30年ほど前に亡くなった姉を慕う私(妹)の懐古連作、5作。

    「姉さま」はフシギな能力を持っていて•••その能力に焦点を当てた①と②。その能力を前提にした③と④。そこまで行くか、という⑤。

    僕が好きなのは③と④。いい!!

    やっぱり、このラインからは逃れられないな、僕は。

    【あらすじ(冒頭部)】
    ①追憶の虹
    幼い私は、交番の秦野巡査の気を惹くために、姉の秘密『透視能力』を話してしまう。15歳の優しい姉は、私の頼みをきき、友だち『杉べえ』の弟が車に接触した場面を透視し、秦野巡査に手柄を立てさせてくれたのだが•••。

    ②夏空への梯子
    昭和33年、『なべ底不況』と言われていた、とても暑かった夏、ある新聞社に、「自分は人を殺した」と告白する電話がかかってきた。

    ③いつか夕陽の中で
    昭和33(1958)年9月26日、台風22号から避難していた一晩で、村田のおばちゃんに連れられて避難していた茜ちゃんと姉と私は親友のように仲良くなった。台風一過、20歳の茜ちゃんは、洋裁を私の母に習うため、家に通ってくるようになり、私(12歳)は嬉しくて仕事中の茜ちゃんに毎回じゃれついた。

    ④流星のまたたき
    茜ちゃんが手品の賭けに負けて100円取られた、と駆け込んで来た。相手は同じアパートの笹森という学生で、シャッフルした3つの空のはずのマッチ箱の中に、どれがマッチ棒が入っている箱かを当てるものだった。その賭けに姉は1回目の勝負で勝ったのだが•••。

    ⑤春の悪魔
    母と同じように裁縫で生計を立てているクラさんの家へのお使いを姉も私も茜ちゃんも嫌がる。礼儀に厳しく、口うるさいからだ。そのクラさんの家に、姉の代わりに私は出かけたが、クラさんは留守で、しばらくすると割烹着を着た、挙動不審なクラさんが帰ってきて、私を追い出して、鍵をかけた。

  • 懐かしさと虚しさがつまった回顧録。
    ストーリーは嫌いではないが、短編集なだけに無理矢理な感がある場面がみられる。

  • 星3.5って感じかな?
    お姉さんの持つ特殊能力が活躍する話だけど、ちょっと続きが気になるな。って感じ。
    お姉さんは、見ようとしないと見れないからいいけど、これ、勝手に見えるだったら辛いだろうね〜と思いつつ。

  • ’21年9月27日、読了。図書館で借りて。

    いつもの(?)、朱川湊人さんの、美しく哀しく、あたたかい小説でした。朱川さんの特徴の一つであるホラー的要素は、僕は感じなかったです。

    「いつか夕陽の中で」「流星のまたたき」が、特に好きです。

    「いつか〜」…準主役(?)の茜ちゃんの、悲しい過去…美しいラストだなぁ、と思いました。これで、いい!

    「流星の〜」…鈴音の、これまた哀しい、恋。彼女を想う、優しい周りの人達。撃たれました。

    「わくらば」の意味を調べたら、「特に夏、病気で赤や黃に変色してしまった葉」病葉と書くそうですね…「凄いタイトルだなぁ」と、感心してしまいました。悲しくも美しいこの物語を表す、象徴的なタイトル。朱川湊人さん、凄い作家さんだなあ…。

  • 「あの時代は、物質的な豊かさが幸福感に直接繋がっていたからです。(中略)何かを買い、財産を増やすことが、あの時代の幸せだったのです。」

    不思議な能力を持った姉さまとの日々を綴った回顧録。

    「超人的能力」と聞くとハードボイルドさを想像してしまうけれど、本作はどこかノスタルジックでほのぼの。

    物質的に豊かになっていく昭和の幸せも垣間見れて、続編への期待感も膨らみました。

  • 哀愁を感じるノスタルジックな作風。
    朱川湊人って感じだ。
    ホッとする連作短編。
    気持ちが穏やかになった。

  • 昭和×レトロという設定に迷いなく買ってしまった。特にあの物語の優しさが胸を締め付ける。それは…

    感想は別のところに書いているので、暇つぶしを探している方や気になった方はご自由にお読みください。

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    https://twitter.com/futonneko_/status/1354312935011717125?s=20

  • レトロな雰囲気がとても好き

  • 読友さんが絶対私の好みだと断言し、お薦めしてくれた一冊。27歳で亡くなってしまった姉との昭和30年代の思い出を紡ぐ連作短編。病弱な姉さまには人や物の過去を見ることができる不思議な力があり、事件の解決に一役買います。派出所のお巡りさんや警視庁の刑事との交流は優しいものですが、事件を「見て」しまう姉さまの心労は計り知れません。物語の中の時間は滔々と静かに流れていき、流れに任せてこのノスタルジックで少し悲しい世界に浸りました。一番残ったのは、淡い恋心の見える「流星のまたたき」。どのお話もとても愛おしかったです。

  • 幼い姉妹の周りで起きる不思議で、ちょっと怖い毎日。

    人や物が見た出来事の記憶を「見る」ことが出来る力を持った姉。優しく、しとやかで、体も心も傷つきやすい。

    そんな姉を思いやる元気な妹。

    姉が持って生まれたその不思議な力は、当然のごとく警察の事件解決に一役買うことになる。
    幼い姉妹の心の葛藤と、犯人や被害者への思いがとても繊細に描かれている。

    記憶をのぞき見ることで、知らなくてもいいような、人の心の内側が見えてしまうということがどういうことなのか。

    非常におもしろいストーリーでした。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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