- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043739028
作品紹介・あらすじ
仙石藩と、隣接する島北藩は、かねてより不仲だった。島北藩江戸屋敷に潜り込み、顔を潰された藩主の汚名を雪ごうとする仙石藩士。小十郎はその助太刀を命じられる。青年武士の江戸の青春を描く時代小説。
感想・レビュー・書評
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父親からも捨石扱いされてしまった優柔不断な小十郎だったけれど、死んだふりをしてまで慕ってくれた娘、ゆたと一緒になって初めて生きる意欲が湧いた様だ。
死んだふり、一度してみたけれど俗世間にいる間では本当に難しいものだ、病気覚悟しなければ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どうなるのかなぁと思いながら読み進んでいきました。
藩主の汚名をそそぐというお役目から話はどんどん展開していくのですが・・・
托鉢の賢龍の活躍も楽しかった。
「ゆた」との関係はどうなる?って思ったけど、最後には納得して読み終わることができた。
いつもながら「宇江佐さん」の作品は好き♪ -
偶然にも「銀の雨」を読んだ直後だったので、ゆたのその後を見届けることが出来て良かった。武士とは本当に窮屈なものだけど、生きていれば良いこともある。私も嫌なことがあったときも、死んだふりして生きていこう。
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著作に嵌まるのかな。2011年7月に引き続き病院の売店で文庫を購入。
なんといっても能筆です。生善なる人々を愛でる。
…「お世話になりました。どなたさんもお倖せに。小十郎はまた呟いた。」
…「仇討など、この程度でよかったんだ。さすれば庄左衛門の首も繋がっていただろう」
…人間、何が幸いし、何が不幸になるか知れたものではない。徒に落ち込むことはないのだ。その内に解決の糸口はきっと見つかる。…
自爆テロ。神風特攻。回天。ここには何時も平気で他人へ”死の切符”を切る輩が必ずいる。私は彼らを憎悪する。宇江佐真理氏の述べる「死んだふり」がいい。”命を懸けた行為”なぞ知るものか!
角川文庫「三日月が丸くなるまで」縄田一男氏の解説について。
『彼は、この小説の解説欄を拝借し、池田晶子氏の解説をしているのであって、宇江佐真理氏の当小説をの解説しているわけではあるまい。
「死を持って抗議するということは、その善し悪しは別にして、人間jだけ可能な行為である。埃のために死ぬ。正義のために死ぬ。人間jは命より大事なものがあるとおもうから、この行為は成立するのである。受ける側もその意味を理解する。……』「小十郎こそは、命の重さをしっかりと、受け止める側の人間ではないのか」
宇江佐真理氏はそんなことを語ってはいないのでは?」。
「志摩の上の別邸だった。だが、白木門を見た途端、二人は声を殺して笑った。その門には巨大な陰茎が黒々と描かれていた。…本所の上屋敷にも同じような落書きがあるそうだ。」「仇討など、この程度でよかったんだ。さすれば庄左衛門の首も繋がっていただろう」
藩主の見栄と屈辱感のために、”藩主=国=武士の一分=命を賭して戦う”…死んだふりがいいといっているのです。
藩主の急死に在って、「替え玉を立てたら、忠義にならないわけで、未払い給与が支払われない株式会社の倒産捥がれにすぎない」。忠義とは、たとえ改易に逢っても主家の血筋を護ことでしょうが。状況次第で、正義のために死を賭しているわけで。指示する輩がいなければ、特攻機も回天も、桜花も作られない。組織的扇動なわけです。自爆テロなど賛美することはできない。
「…下々は、死んだふりがいいい、そのうちに解決策の糸口はきっと見つかる」…そのうち真実が見えてくるから焦らずに「死んだふりで待つ」がいいのだろう。 -
タイトルが巧い。主人公・小十郎が町娘ゆたと恋をして、賢龍との友情を深めていくにつれ、三日月が満月になるように成長していく。
厳しい武士社会・・・「いやおうもなく流されて、気がつけば手前ェの居場所がなくなっている。それもこれも世の中ですよ。」ゆたの父・八右衛門の言葉どおり小十郎の人生も右往左往するが、「死んだふり」の生き方が小十郎を幸せにする。 -
藩主の敵討の手伝いをすることになった刑部小十郎。父親の伝手を頼って江戸市中の借家に住まうことになる。その大家であり古道具屋「紅塵堂」の娘・ゆたとふたりは互いに惹かれあう。周囲に翻弄されつつ不器用に生きるふたりを中心とした青春時代小説。
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この話は別のお話『銀の雨』と設定を共有しています。『銀の雨』に出てきたゆたがヒロイン。正直、『銀の雨』を読んでいると、あのゆたが恋なんて(笑)と思ってしまいます。ごめんなさい。
もどかしいような切ないようなそんなお話です。主人公が藩に仕える武士で(嫌々ながらも)仇打ちの為に奔走する為、かなり武士について踏み込んでいるかなと思います。
個人的に賢龍のその後が気になります。 -
2017.1.8
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それぞれ哀しみを抱えながら必死で生きる人々に感動します。
作者が亡くなったのは残念。