DIVE!! 上 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043791033

感想・レビュー・書評

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  • 複数巻を平行に読破月間。大丈夫かなと取り掛かったが、ものすごくするするとストーリーが入ってくる作品。

    8歳のときに、近所の高校の飛び込み台に魅了された知季。中学になって、近所のダイビングクラブに通い始めたが、特に上達が見られない。そこへ現れた新しいコーチ、夏陽子に目をつけられ、リクエストされたトレーニングを続けることで、メキメキと上達していく。その直後に現れた、野生児、飛沫、天才ダイバー要一とともに、オリンピックへの夢に向かって走り始める…。

    アニメか何かのように、若干クセのある登場人物名に加え、時々思い出したかのようにブンガクっぽい表現を入れてみたりする冒頭に、ちょっとめんどくさい作品かと思ったが、キャラクターもしっかりしているうえ、必要以上に増やさないというスタイルで、非常に読みやすい作品である。

    高飛び込みというあまり馴染みのない分野ではあるが、細かいところは作者自身が端折っており、全体に平易で、高校生以上なら読みやすいであろう。一方で、子供向けにくどかったり、逆に描写を削っていたりもないので、大人でも読んでいても不自然と感じない作風は流石である。

    しかし、飛び込みをしている最中、作者の言う1.4秒と、着水移行の数十秒、飛び込むダイバーたちの表現する一番のポイントになる心理描写や情景描写というものが一切存在しない。ここは違和感しかない。上巻では封印をしているのかもしれないので、下巻に期待したいところである。

    人物の描写も、ちょっと浅すぎるかなあという感じ。知季の弟や家族について、もう少し解説が有ってもいいのではないかと思う。また、「沖津白波」など、ネーミングセンスも今二つ。そういうとこ、冷めるんよね。

    それらの描写不足が、漫画やアニメの原作っぽいなあと思っていたら、案の定アニメ化はされている模様。しかし、青森のアレなところとか、やっぱり大幅カットになるんかいな。小説としては、大人向けにバランスを取るために入れられているのは、納得はしているんだけど。

  • 飛び込みというマイナースポーツの、わかりやすい青春モノ。
    純粋で真っ直ぐな気持ちが伝わるので、とても清々しい。
    見事なハッピーエンドで、自分で選ぶ本ではこういう爽やか系はないかも笑

    技の名前がいっぱいあって、なかなかイメージしにくかった。

  • すごくすごくすごく引き込まれた。飛び込みという競技は認識はしていたけど、見たことはない。見たことはないけれども、読んでいて、飛び込む姿はきれいだと思った。底辺の知識でもぐいぐい読み進められるのは、森さんのなせる技かな。
    知季の中学生らしさがあまりにもリアルで少し恥ずかしくなってしまった。それとは対照的な飛沫よ。飛沫の実家の風景が浮かんできて、行動も何もかもが田舎だなぁと思った。
    下巻が楽しみ。早く続きが読みたい。

  • これ、小学生以来読んでないけどすごく記憶にある。飛び込みのお話だけど飛び込みっていう題材自体が珍しい中で人間関係もちょっと奇妙に描かれてて小学生ながらにわぁって思った気がする、今読みたい本が読み終わったらもう一度読み返してみよう。

  • 東京オリンピックは『また』幻になるのでしょうか?2020年3月24日、今夏開催予定だった東京オリンピックは、一年程度延期されました。遡ること80年前、1940年9月21日から開催される予定だった東京オリンピックは日中戦争の勃発により幻と終わりました。複数回出場を果たす人もいる一方で、年齢的なピークに左右される競技は、その一回に全てをかけるしかありません。その人の人生をかけた一大イベント。もちろん出場枠は限られ、出場できても活躍できる保証は全くありません。でもチャレンジできるならまだ納得はできるでしょう。でも、その前にその目標が露と消えたなら、幻と消えたなら、それを目標にしていた人たちは何を思うのでしょうか。

    『一流の選手は台に立った瞬間から人を惹きつける。要一を見ているとこの言葉の意味がよくわかる』という要一は、『大手スポーツメーカー「ミズキ」の直営するミズキダイビングクラブ(MDC)』のエース。そんなクラブに通う中学生の知季、レイジ、そして陵。赤字経営により存続の危機がささやかれる中、他のクラブに引き抜かれたコーチの後任として麻木夏陽子という女性が現れます。素性不明の彼女。『飛込みをはじめて五年ちょっと』という知季の担当となったものの知季には不信感が拭えません。『あんた、うちのクラブをつぶしに来たのか? 』と問う知季に、『つぶしに来たんじゃないわ。守りに来たのよ』と答える夏陽子。そんな知季に『毎朝の自主トレメニュー』を課す夏陽子。『頂点をめざしなさい。そこにはあなたにしか見ることのできない風景があるわ』という夏陽子に心を開き『これでいいのか。今どきこんなスポコンでいいのか』と自問しながらも自主トレを続ける知季。『不安に駆られながらも続けたのは、努力すればするだけの成果を実感することができたからだ』という知季。一方で夏陽子は、青森から連れてきた『とっておきのおみやげ』、飛沫を知季に紹介します。『あなたのライバルよ』とMDCに加入したその少年・飛沫のジャンプを見た知季は『なんだこりゃあ』と仰天するのでした。そして、夏陽子は語ります。知季が目標を『日本選手権で優勝?』と問うのに対し『私たちがめざすのは、オリンピックよ』と答える夏陽子。『1999年、春。MDCの彼らは翌年のシドニーへむけ、最初の一歩を踏みだそう』としていきます。

    元々四冊だったものを上下巻にしたこともあって上巻内で大きく二部に分けて構成されるこの作品。そのそれぞれに〈CONCENTRATE DRAGON〉とか、〈SO I ENVY YOU〉と言ったそれぞれ11と12の英語の章題にさらに分かれ、独特なリズム感と、ある種の『かっこよさ』を醸し出しながら展開していきます。そして、全体として感じるのが、とにかくひらがな、圧倒的なひらがなの多さです。そのために、要一、知季、飛沫、夏陽子という登場人物の一捻りされた名前が逆にページの中からふっと浮かび上がってくる不思議感にも囚われました。また、「カラフル」同様に、森さんの圧巻の表現にも魅了されます。この作品では、オリンピック競技の中でも決してメジャーとは言えない『飛込み』という種目に光をあてていますが、メジャーな種目と違ってなかなか文字だけでは競技のシーンをイメージしづらいということはあります。これを森さんは『知季はくいっとあごを上げ、鳥を追う猫のように助走を駆けぬけると、ふわりと宙に浮きたった。重力を感じさせない跳躍…』と、とてもリアルに躍動感を感じさせる記述で描写していきます。『「スポ根」青春小説』とされるこの作品。2003年には児童書籍を対象にした『小学館児童出版文化賞』を受賞しています。実際、途中までは、10代の方が読むのにもいいなぁと思っていたのですが、後半になって若干雲行きが怪しくなります。『二人はそれまでどおり抱きあって眠り』『女とセックスにふけってた』『女の部屋に避妊具を置いていく』という表現が出てきた時にはかなりドキッとすると同時に、違和感・異物感を感じました。ストーリー展開としては違和感はないのですが、個人的にはこの大人な表現は避けて欲しかったな、と感じました。ただ一方で飛沫という高校生の素顔を見れた感もありこの描写はやむをえないのかなとも思いました。

    幻に終わった1940年の東京オリンピック。『また』幻に終わることのないよう2020東京オリンピックが無事に開催されることを願ってやみません。一方で、この作品の主人公たちが目指したオリンピックは2000年に開催されたシドニーオリンピックです。そう、幻になどならず歴史に刻まれたオリンピックです。作品はそのオリンピックの舞台へ向けて『下巻』へと進みます。『はたしてその最高の舞台で飛込み台の頂きに立つことができるのはだれなのか?』色んな期待が駆け巡ります。

    私の大好きな「カラフル」や「永遠の出口」と同じ地平に立ち、眩しい少年の瞳の輝きの中に、青春時代特有の苦悩と葛藤が丁寧に描き出される森絵都さんの絶品。う〜ん、『下巻』もとても楽しみです!

  • スポーツ題材の本は熱くなるなってのを覚えている。

  • 2020/01/07-01/15

  • 10年前はじめて読んだときと変わらない興奮が駆け巡った。
    息をとめて彼等の眼差しの先を一緒に見つめた。真っ直ぐで眩しく、けして嘘じゃない。なんてうつくしい競技なんだろう

  • 0014
    アニメ化するというので、久しぶりに読んでみた。
    内容を全く覚えていなかったので新鮮…。一瞬の勝負にまたドキドキできました。

  • 本を閉じてからもしばらく、身体の中に、残る。熱さが、残る。そしてまぶしい。飛び込みのシーンが、ダイナミックかつ繊細な描写を通して、目の前で見ているかのように鮮やかにくっきりと描かれる。まるで、自分がはるか下に静かに横たわるプールの水面を見つめているように、ドキドキした。この臨場感がたまらない。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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