いつかパラソルの下で (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043791057

感想・レビュー・書評

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  • 日常の生活の中での登場人物たちの変化、心情を表現している。主人公の心象を景色や何気ない行動で表し、それで心情がわかるというのがすばらしい。ストーリーを追うだけではなく、一つ一つの言葉を文章を味わいながら(しかし、そのことばは難しいものではない)読める小説。

  • 久々に、森絵都さんの作品。

    印象的なのは、

    「愛しても、愛されなくて、」

    「受け入れても、受け入れられなくて、」

    「でも、人生はそんな風に孤独なもの。」

    って意味の台詞。

    まわりの人を見ていると、何で自分だけ…と卑屈になったり、環境のせいだ!とこの作品の登場人物みたいに言い訳したり。

    そんなことばっかりして生きてきたなぁって思う。

    孤独を受け入れたり、そんなもんだと思って生きていく強さは持ち合わせていないけれど、

    ちょっとづつでも、強い自分でありたいなと感じさせられた。

    何か非日常的なことがあると、すぐに何か根っこに悪い塊が存在してる!と疑ってしまうけれど、

    意外と問題は根っこじゃなくて、地面から堂々と見えている“花”のほうかもしれないなぁ。

  • 家族の衝撃的な過去を知ったからってそう何かが変わるわけじゃない。
    すっかり大人になってしまったらグレるには年寄りすぎだし悟るにはまだまだ・・・。
    だから明日をまたフツーに生きるわけで。

    親から逃げようとしても憎もうとしても必ずそのつどその存在を思い出すわけだから呪縛からは逃れられないんだよね。

    ま、主人公の兄の恋人が言った

    「いい年こいて自分の人生を親のせいにすんな。」

    これが一番染みましたです・・・はい。

  • 学生モノが多かった中で
    なかなかディープな課題に直面する本作。
    不安定な感じとかほんといつまで経っても
    人はその年代に合わせて
    何かしら問題あるよなーと、、笑笑
    最初ミステリーチックで最後はヒューマンでした。


    森絵都さんの登場人物は
    なんやかんやでみんな人間出来てて
    優しさが滲み出てるなーと
    読んでて感じます。

  • 親もね、私たちに色々あるのと同じように色々あるよね。

  • ふむ

  • こんな大人向けの作品とは知らずに読み始め、前半は死んだ父のイメージとかけ離れたエピソードを手繰り寄せていくミステリーのよう。後半はそんな父とのある種の決別の話。親子関係が複雑な人の方が響くものはありそう。生きることはキラキラしてることだけではない。その辺のリアルさ、戦う価値があるという人生観が下記から感じ取れて良きだった。

    p201
    誰の娘であろうと、どんな血を引こうと、濡れようが濡れまいが、イカが好きでも嫌いでも、人は等しく孤独で、人生は泥沼だ。愛しても愛しても愛されなかったり、受け入れても受け入れても受け入れられなかったり。それが生きるということで、命ある限り、誰もそこから逃れることはできない。

  • 私も主人公たちと同じく、父とうまくいかない人生を送ってきました。
    そんな父も2年前に亡くなりました。

    ふと手に取ったこの本と境遇が似たものがあり、幾つもの文章に勇気をもらえました。

  • 父から厳格に育てられたが故に、絶縁状態だった息子と娘、そして厳格さの中でしっかり育ったもう1人の娘。
    父の死をきっかけに、父の知らなかった面やルーツを探る。
    ルーツ探しはちゃんとその頃を知ってる人がいないところが実際っぽくて面白い。そして、そういったことを通しての、それぞれ子どもたちや奥さんの着地点もなんだか面白かった。

  • 厳格な父親に育てられた兄妹が、父の死後、故郷を訪ね、父のルーツを辿る。という物語。

    人間、何十年も生きてると、心の中に数々のしこりを抱えているわけで、そのしこりの原因は、親だったり兄弟姉妹だったり友達だったり昔の恋人だったりするのだけれども、結局のところ、そういうことも全て背負っていくのが己の人生。なんですよね。

    だから自分が生きてきた道を、これから生きていく道を、人のせいにしちゃ、ダメだよ。

    なんて偉そうなこと言ってみても、私も、自分のこの性格は親のせいだ。なんて思ってた時期がありました。
    この物語の主人公・野々のように。

    だた、自分自身が親として、一人の人間を育てたとき、確かに子供の人格とか性格って、親の影響がすごくあるんだな。なんて客観的に見れるようになってきて、親の影響力が大きいからこそ、『私たちの人生』ではなくて『子供の人生』として、どこかでちゃんと切り離してあげないと、私みたいにいい歳してても、なんでもかんでも親のせいにしちゃうような人間になっちゃうんだろうなー。

    なんてふと思ってみたりして。

    実際、誰かのせいにして生きていくのはすごく楽なことなんだけど、でも、悪いことは人のせい。良いことは自分のおかげ。なんて都合のいいことばかり考えてると、ほんとダメ人間になってしまいそう。と、ふと気付いた今日この頃。

    だから『誰かのせいにして生きてきた自分』も、ちゃんと受け入れて、この先生きていくことが大事なんだな。と思ったのでした。

    『人は等しく孤独で、人生は泥沼だ。』

    という言葉が、すごく印象的でした。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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