- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043944576
作品紹介・あらすじ
武蔵野にたたずむ料理屋「左近」。じつは、男同士が忍び逢う宿屋である。宿の長男で十六歳の桜蔵にはその気もないが、あやかしの者たちが現れては、交わりを求めてくる。そのたびに逃れようとする桜蔵だが。
感想・レビュー・書評
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この世とあの世のあわいでまどろみのなかに見た夢のようなお話。長野まゆみさんの小説を読むのは久しぶり。どっぷり楽しみました。
本人自身その気がなくても、なぜか男を惹きつける
桜蔵(さくら)は「左近」という世間をはばかる逢瀬のための隠れ宿の長男である。父、母、弟がいるが
自分は血の繋がりがないような気がしている。それに兄弟は庶子、父には正妻がいる(「浮かれ猫」に登場するけどカッコいい)
桜蔵がひろってくる男というのがこの世ならざるあやかしのものたちばかり。成就のために男たちが引き寄せられてる感じで、そこには父の柾や父の友人、浜尾が仕向けた案件もあったり。
皆が桜蔵のことを「女」というのが、ちょっとうーむな感じですが…
鵺が出てくる「空舟」と、弟の先生関連の「天神さまの云うとおり」が好き。
流れるような文章に誘われて、浮かんでくる情景に陶酔させられます。
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この世ならぬものたちを次々と引き寄せて、気が付いたら向こう側へ踏み込んでいる。夢と現が分かち難く溶け合っているような、そんなあいまいで妖しくて生々しくない雰囲気が好きだ。
それに浸りたくて、忘れかけた頃にふと読みたくなる。 -
エロチックだけど生々しくなく、登場人物が魅力的。桜蔵くんはほんとは認めたくないだけで、悪あがきしてるんだよね
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美しい日本語が並んでいて、死と生が交わるこの不思議な世界観に引き込まれてしまった。
柾さん、すき…。 -
ものすごく久しぶりに長野まゆみを読んだ。高校以来だ。昔はあのきらきらした言葉に魅了され、ほのかな雰囲気に酔わされたがあのころと作風が変わっていると感じるのは読み手としての自分の変化だけではないように思った。事実、解説にもかつての長野まゆみと現在の長野まゆみには意識的な解離があることが記されていた。そしてこの変化は好ましかった。私も中高生のころは古いことばや漢字を多用した文章を好んで書いたが徐々にだれもが読みやすいやわらかなことばを意識的に選ぶようになった。私ごときを長野まゆみと比べては失敬にもほどがあるが親近感をいだいたことはたしかだ。
そしてこの物語は決して直截には描かれないが明らかで艶かしい。とてもエロティックだ。これが少年ではなく青年の物語だからだろう。ほのめかされることは表現される以上に想像をかきたてる。悪くない再会だった。 -
この方の作品ははじめて読みました。
古本屋さんで見つけて、裏表紙のあらすじに惹かれて勢いで購入。
それを読んだ時点で想像していた設定とは結構異なり、
「あ、ひょっとしてやっちゃった?」
とも思ったのですが、読みすすめていくうちに、どんどん世界観に引き込まれていきました。
文体がものすごく好みですし、すごく幻想的な雰囲気が漂っていて、魅力的でした。
何より柾さん(主人公の父)がすごくかっこいい!
大人の男として、ものすごく魅力的でした。
そのほかの大人も、ものすごく素敵な人が多いです。
幻想的な感じのものが好きな人や、かっこいい男性キャラが好きな人にオススメしたい本です!-
「幻想的な感じのものが好きな人」
ジャケ買いしちゃいそうな表紙絵。
現在、長野まゆみを物色中(タイトルが素敵だから)。。。「幻想的な感じのものが好きな人」
ジャケ買いしちゃいそうな表紙絵。
現在、長野まゆみを物色中(タイトルが素敵だから)。。。2012/09/07
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長野まゆみさんの文章のファンなので、読む麻薬だと思う。文章そのものが読んでいて心地よい。
どこか妖しさの漂う美しい描写、核心に触れず行間を探り合う軽妙な会話。好き。
ただ、以前の自分であれば何も考えずに楽しめたのだと思うけれど、親世代の年齢となってしまった今では桜蔵くんを取り巻く大人たちの無責任さに苛立ちを感じてしまい駄目だった…。単に自分が読者層から外れてしまったというだけのことで作者に非はないけれど、こんなこともあるのだなあ。 -
これを読んで一発で長野さんにハマった作品。
友人に長野さん勧めるときは大体これから。
文体が程よく読みやすいけれども、長野さんらしい独特の浮世離れした空気感が伝わって来る一冊。
表紙もイメージに合っててとても好き。
そしてなにより柾さんがかっこ良さすぎてもう