- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044001643
作品紹介・あらすじ
真の美しさを発見するためには、
教養と呼ばれるものを否定する位の心がまえが必要です――。
土俗的なアイヌ音楽に影響を受け、
日本に根ざす作品世界を独学で追求した作曲家、伊福部昭。
語りかけるように綴られた音楽芸術への招待は、
聴覚は最も原始的な感覚であり、本能を揺さぶるリズムにこそ
本質があるとする独自の音楽観に貫かれている。
「ゴジラ」など映画音楽の創作の裏側を語った貴重なインタビューも収録。
解説:鷺巣詩郎
[目次]
序
はしがき
第一章 音楽はどのようにして生まれたか
第二章 音楽と連想
第三章 音楽の素材と表現
第四章 音楽は音楽以外の何ものも表現しない
第五章 音楽における条件反射
第六章 純粋音楽と効用音楽
第七章 音楽における形式
第八章 音楽観の歴史
第九章 現代音楽における諸潮流
第十章 現代生活と音楽
第十一章 音楽における民族性
あとがき
一九八五年改訂版(現代文化振興会)の叙
二〇〇三年新装版(全音楽譜出版)の跋
インタビュー(一九七五年)
解説 鷺巣詩郎
感想・レビュー・書評
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まさに音楽の入門書。わかりやすくて面白い。
言葉の端々から著者の高い教養が伝わってくるが、それを鼻にかけるでもなく偉ぶるでもなく、ただただ懇切丁寧な説明がとても嬉しい。
かかっていることに気づいてもいなかった霧がぱっと晴れるような、そんな読書体験だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作曲家、伊福部昭がエッセイ風に音楽史や音楽との関わり方を説く一冊。示唆に富みたいへん興味深く勉強になる。
注意点は、一般音楽入門ではなく「伊福部昭の音楽観」の入門であること。対象読者は入門者よりもむしろ、深く音楽に携わる愛好家や音楽家に思える。 -
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まずもって芸術を主観的現実の模倣と捉えるのはあくまでロマン主義の立場であって、芸術をわれわれの存在と分離して捉える即物主義というのが存在しているというのが知らなかったので目から鱗。
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感想はブログにて。「素材と表現の立場、自覚的に鑑賞すること」
http://mihiromer.hatenablog.com/entry/2016/08/21/203740 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784044001643 -
おもしろい!
こういう話がきいてみたかった、と思える「音楽入門」。
ゲーテの「真の教養とは、再び取り戻された純真さに他ならない」を巻頭におき、解説や薀蓄に頼らず、自分の美の感性を信じて音楽を聞けばいい、という信念が読んでいて心強い。
絵画など他の芸術や数学、哲学などに通底するものを引きつつ現代に至るまでの西洋音楽史・音楽観をギリシャ時代からざっと解説しているのが勉強になる。音楽記号や楽譜はまったくでてこないけれど、喩え話などが適切でかなり霧が晴れた感じがする。現代音楽については昭和26年初版ゆえミニマル音楽などがまだ登場していないのが残念だったけど。
巻末には初版、85年改訂版、03年新装版へのあとがき、75年のインタビュー(映画音楽の話題多め)、そして鷺巣詩郎の解説。
(前の版の片山杜秀解説というのも読んでみたかった…)
「ツァラトゥストラはかく語りき」がタイトルによる虚仮威しの例として出ていたが、「2001年宇宙の旅」などを経た現代はどう思っていらしたのかなぁ、と思う。でも、有名なのは冒頭だけで最後まで聞くチャンスが殆どないことを思うと、伊福部さんの言うとおりなのかもしれない。 -
角川ソフィア文庫の新刊ですが、元元は1951(昭和26)年に出版された古い作品であります。帯に書いてある文字は、次の如し。「本能を震わすメロディの秘密。ゴジラ音楽の原点を明かす!」
ははあ、要するに「シン・ゴジラ」に便乗した商品ですな。しかし名著が安価な文庫版で手に入るのは恭賀すべきものがあります。と言つてもこの薄い本が821円とは、今さらながら文庫本も高くなつたと感じるのでした。
故・伊福部昭氏は21歳で「日本狂詩曲」にてチェレプニン賞を受賞して以来、独自の音楽世界で日本の音楽界を牽引し続けてきた人。教育者としても、黛敏郎氏や芥川也寸志氏らを輩出するなど、押しも押されもせぬ存在となりました。
映画音楽の世界に入つたのは、先に映画の仕事をしてゐた盟友・早坂文雄の勧めもありましたが、何よりも生活の為だつたさうです。最初の映画の仕事は、新人監督谷口千吉の「銀嶺の果て」。監督・音楽のみならず主演の三船敏郎さんもデビュー作と、実にフレッシュなメムバアによる山岳アクション映画となりました。
さて『音楽入門』ですが、かつては「音楽鑑賞の立場」なるサブタイトルが付されてゐました。今回の文庫版では、何故かサブタイトルは省略されてをります。どうでもいいけど。
執筆目的は、いはゆる芸術音楽(まあ、今でいふ「クラシック音楽」とほぼ同義でせうか)を鑑賞するにあたつて、ウブな初心者たちに「何も構へて聴くことはない、自分の直観に従つて愉しめば良いのです」と啓蒙せんが為ですかな。実に平易で優しい語り口なので、わたくしのやうな素人でも理解できます。
「はしがき」で、国立博物館を見学に来た中学生の話があります。先生に引率された彼らは、掲示された説明文や先生の解説を、新聞記者よろしく熱心にノートに取つてゐたさうです。しかし生徒たちは、肝心の陳列物を鑑賞することはつひに無かつたと。作品の背景や知識を仕入れることに精一杯で、これでは少年少女たちは、大人の芸術の鑑賞方法はかういふものであると学んでしまふでせう。
これと同様に、音楽も教科書的な知識や専門家の意見を鵜呑みにし、自分の耳で聴いた直観がそれと違ふ場合は「ああ、俺は音楽の素養が無いのだな」と思ひ込んでしまふ初心者が多いと指摘します。
伊福部氏はアンドレ・ジイドの「定評のあるもの、または、既に吟味され尽くしたものより外、美を認めようとしない人を、私は軽蔑する」といふ言葉を引き、かういふ陥穽から逃れるには、逆説のやうだが、同時代の教養と呼ばれるものを否定するくらゐの心構へが必要だと説きます。
むろん根拠のないいたづらな否定を推奨するわけではありません。その辺の事情は、本書を読むうちに追追分かつてくるのであります。
本書は1985年、2003年にそれぞれ改訂版、新装版が出てをりまして、その都度の跋文も収録されてゐます。内容の古さに忸怩たる思ひであると述べてゐますが、どうしてどうして、音楽といふジャンルのみならず、本書から啓発される部分は今でも多いのであります。
巻末には1975年に行はれたインタヴューも。いやあ、お徳用の一冊ですなあ。「シン・ゴジラ」に興味は無い人も勇気を貰へますよ。
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