江戸のコレラ騒動 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044006402

作品紹介・あらすじ

黒船来航直後、幕末の江戸を大地震が襲った。安政5年、これにコレラが追い打ちをかける。3日で死ぬといわれたコレラ。それを操るとされた悪狐を倒すため、強い霊力を持つ御神犬や御札を求め、さらには京から神社を勧請。無礼講の祝祭に走った。当時の人々がどのようにコレラと闘ったのか、東海の村に残る記録から再現。民衆の迷信と笑えない。新型コロナ騒動を彷彿とさせる、おかしくもたくましい庶民たちの姿を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化! 解説:小松和彦

    AIが人間に与える影響は 「ロボット RUR」など堀部篤史さんが薦める新刊文庫3冊|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14172272

    朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:幕末狂乱
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=7024

    江戸のコレラ騒動 高橋 敏:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000740/

  • この本は、15年前に刊行された、『幕末狂乱 コレラがやって来た』(朝日選書)を、2020年末に、角川ソフィア文庫として、改題復刊した本。
    今の時代背景を思えば、そうだよな、と思う。

    この本は読んではいない。
    聖教新聞の書評欄に載っていて、機会があれば読んでみたいと思った本。

    ●2022年4月2日、追記。

    コロナは、まだ続いている。
    既に、3回目のワクチン接種を終えている。

    著者、高橋敏さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    高橋 敏(たかはし さとし、1940年 - )は、日本史学者、国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学名誉教授。

    江戸時代の教育史が専門。また、従来の歴史学において扱われてこなかった「民間の民情の歴史=稗史」に注目する視点から江戸時代のアウトロー(博徒)にも注目し、上州の国定忠治、竹居安五郎・黒駒勝蔵など甲州博徒、駿河の清水次郎長に関する著作を著しており、教育史の観点から博徒の教養にも着目している。

  • 2021年になってもコロナウイルス感染拡大の勢いは衰えることなく、人々を振り回している。1都3県では「緊急事態宣言発令」に向けて動いている。




    江戸時代にもコレラが流行していた。江戸の庶民は何を考え、どのような行動を取っていたの気になり、今回の本を読んだ。





    この本は、15年前に朝日選書で刊行して、絶版になった「幕末狂乱 コレラがやって来た!」という安政五年(1858年)に起こったコレラ騒動を取り上げたものだ。タイトルを分かりやすくして、新たに図版と写真を少し加えた。





    科学が発達した今の時代でさえ、ネットや口コミでフェイクニュースが流れるくらいだから、江戸時代は想像もつかない。




    コレラが日本にやって来た当時、1853年にアメリカはじめとして、オランダ、ロシア、イギリス、フランスと条約を締結して開国した。




    同じ年の5月21日に、長崎に上陸したコレラは、6月初頭には長崎周辺、下旬には西日本から東海道へと広がり、7月下旬には江戸にも広がった。





    異国から訳の分からない生き物がやってくるは、コレラなんていう未知の病が流行するは、当時の人々からしたらどうしたらいいかパニックになるのもわかる気がする。




    1つの目安として、「袖日記」を取り上げて
    いる。「袖日記」とは本来、文書の余白に記した私的な日記にを意味する。日々の出来事を記してけんそんして「袖日記」としたにではないかと著者は推測している。そのような日記だからこそ信憑性が高いとしている。





    駿河国富士郡大宮町(現在の静岡県富士宮市)の酒造業を営んでいた「桝弥(ますや)」の弥兵衛(やへえ)が記した「袖日記」を紹介している。




    コレラに関する記述は早くも7月16日の「昨日より近在急病人多しと申噂あり」の記事がある。これだけでは断言できないが、7月19日には「三日コロリ(コレラ)」であったことが分かる。




    7月24日には、大宮町内で初めて死者が出て、葬式の数に注目している。




    当時の庶民がどう思っていたのか分かる貴重な資料だ。




    当時の人々は、コレラに対する不安から「アメリカ狐」や「千年モグラ」などという実在しない架空の「異獣」を産み出した。




    そのような得たいの知れない化け物を退治するには、狐の嫌いな狼がいい。狼と言えば秩父の三峯神社となったそうだ。今でも行くのは大変だが、江戸時代の人々の苦労は計り知れない。




    人々が三峯神社にすがる様子について三峯神社の公式日誌に当たる「日鑑」に記されている。8月24日の時点で、数千人の代参者がやって来て、一万匹のオイヌサマ拝借していった。ご眷属になっているオイヌサマを貸し出してもらえるので人々がワラにもすがる思いで頼ったのが分かる。




    江戸の人々はただコレラを怖がっただけでなく、笑いやダジャレで吹き飛ばそうとしたり、たくましい一面もあった。




    確かに江戸時代のコレラと同様、コロナウイルスも怖いが、心身のバランスをとるために笑い飛ばすことも必要だな。

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著者プロフィール

1940年静岡県生まれ。国立歴史民俗博物館名誉教授。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。群馬大学教育学部教授、国立歴史民俗博物館教授、総合研究大学院大学教授を歴任。文学博士。専門は近世教育・社会史、アウトロー研究。著書に、『日本民衆教育史研究』(未来社)、『国定忠治の時代』(ちくま文庫)、『江戸の教育力』(ちくま新書)、『江戸の訴訟』『清水次郎長』『一茶の相続争い』(岩波新書)、『清水次郎長と幕末維新』(岩波書店)、他多数。

「2020年 『江戸のコレラ騒動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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