エリートの条件

著者 :
  • KADOKAWA/中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046000651

作品紹介・あらすじ

「人生を自ら選択する」人がエリートの条件。大学や会社などのポジションはその結果に過ぎない。「出身大学やMBA、TOEICが基準」と思っていませんか?東大、ハーバードで教えてきた著者によるこれからの人材論。

感想・レビュー・書評

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  • ○ハウスシック症候群や環境影響に関する研究者で、開成中学・高校の校長である柳沢幸雄氏の著作。
    ○著者自身の指導経験、研究経験等から、教育や学習のあり方を提言した本。
    ○単なるビジネス本や教育本ではなく、日本や世界を取り巻く状況や変化し続ける時代を背景に、地に足の着いた教育論・学習論を展開している。
    ○なかなか実現できないことばかりではあるが、このような視点を自分自身の成長につなげていければ良いと思います。
    ○一番印象的だったのは、「better selection under given conditions」。今ある状況から、最善の選択をできるようにしたい。

  • 開成・東大卒、ハーバードと東大で教員の経験をお持ちの先生による本。

    Part1~3はとても面白かったです。"gifted"の話はとても気に入りました。

  • ■1.時間を忘れて没頭できる分野を探す
    「エリート」の本質的な能力に焦点を絞るのであれば、「天賦の才が備わった」という意昧をもつ「ギフティッド(gifted)」という呼び方のほうが、よりわかりやすいのではないでしょうか。私がそう思うのは、すべての人が何らかの分野で「ギフティッド」であると考えているからです。
     ただし、「ギフティッド」として開花するには、「執着心」が欠かせません。この執着心がなけれぱギフティッドとしての本来の能力を発揮できませんし、社会の中でエリートとみなされることもありません。
     傍から見ている人は、「何時間も同じことに執着して大変ではないだろうか?」と思うかもしれません。でも本人は面白いと思ってやっているのですから、つらいなどとは感じていないはずです。
     このように、時間を忘れて没頭できる分野を見つけられた人は、ギフティッドとして飛躍できる大きな可能性をもっているのです。


    ■2.自ら選択する
     たとえば、高校生が将来の職業について考えたとします。自分が就きたい職業が決まれば、大学の選択もおのずと決まってきます。これを「トップ」として、あとの判断を下の段階に落としていく方法が「トップダウン式」です。(中略)
     ところが、今の高佼生を見ていると、多くが「ボトムアップ式」で進路を決めてしまっているようです。予備佼の模擬テストを受けると偏差値が出てきますが、この偏差値を見ながら受かりそうな大学に進学していきます。(中略)
    「トップダウン」と「ボトムアップ」の違いは、自分で選択をするのか、他者から選別をされるのかの違いです。「ボトムアップ式」の決め方には、個人の主体性は求められません。逆に、主体性をもって積極的に計画を立てていけば、自分の意志で未来を切り拓いていくことができます。実際にそれがエリート」と呼ばれる人たちに共通する姿勢でもあるのです。


    ■3.与えられた条件の中から、常に「よりベター」を心がける
     私自身、もう60年以上も生きていますが、これまでの人生の中でベストの選択ができたことは、ほとんどありません。それでも、そのときどきでベターな選択をし、さらにいえば、ベターセレクションの中から「"よリ"べター」の選択をすることを常に考えてきました。
     仕事だけに限らず、人生すべてにおいても、常にべターセレクションを心がければ、状況は間違いなく好転していきます。チャンスは何度でも訪れるものなのです。大切なことは、次のチャンスをつかむためにあきらめずにチャレンジを続けることです。


    ■4.「負ける」経験を積んでおく
     一般的にいって、進学校の生徒は勉学の世界では「勝つ」ことが多い一方で、スポーツの世界では他校に負けることが多いのが実情だと思います。しかし、若いうちに「負ける」経験を積んでおくことはとても大切なことです。
     こういう要素があるので、多くの進学校でもスポーツに触れることを奨励しているのです。
     実際のところ、社会に出るといつも勝てるとは限りません。むしろ負けることのほうが多いのです。負けて悔しければ、「あのとき、ああしておけばよかった」と自分を振り返るようになるでしょう。後悔しないための準備の仕方や、もっと練習をするための時間のつくり方など、様々な点で改善を図ろうと努力するはずです。


    ■5.どれだけ年を経ても、自らを制限しない
     年齢を重ねて先輩や上司の立場になると、新しいことに挑戦することに気おくれや恥ずかしさを覚える場合もあるかもしれません。ですが、そうしたことに気を取られる必要はありません。
     私はハーバードでも東大でも、自分よりも年長の学生を教えてきました。彼らと初めて会ったとき、「年齢的にもう遅いですか」という質問をよく受けました。こうした質問に対して私は、
    「明日から新しい分野の勉強を始めるのでは遅すぎる。でも、昨日はまだ時が満ちていなかった。今日から始めるのが丁度よい」
     と答えていました。


    ■6.2度失敗したらあきらめる
    失敗してしまったら、どうすればいいのでしょうか。私は、1度であればリべンジすべきだと思います。ただし失敗した原因をきちんと分析し、その原因をしっかり克服した上での話です。ここまでできるのであれば、もう1度挑戦することも「良し」とします。おそらく次に成功する可能性は高いと思います。
     ただし2度失敗したら、その時点であきらめたほうがいいでしょう。リベンジは、1度に限るべきです。
     2度目のチャレンジをしたということは、当然自分ではできるという感触をつかんでいたのだと思います。それでも失敗したというのは、自分自身による評価と、実際の力量との間に乖離があるということです。


    【感想】

    ◆ボリューム的に多くなってしまったので、この辺で。

    私は全然存じ上げなかったのですが、本書の著者である柳沢先生は、東大とハーバードという日米の最高学府で講義をされていたというお方です。

    また、ご自身も開成中高を経て、東大をご卒業されてるという、まさに「エリート」。

    そんな先生が、「教える側」の立場から「エリート」について述べたのが本書ということ。

    ですから、内容紹介にも「人材論」とあるように、本書は「自分がエリートになる」ためではなく、「エリートを育てる」ための内容が中心になります。


    ◆とはいえ、「自分ごと」に読み替えることができるなら、普通の自己啓発書と同じこと。

    例えば、上記ポイントはすべて「自分ごと」に読めますし、ピンときたTIPSがありましたら、ぜひ取り入れて頂きたいところです。

    実際、ポイントの5番目にもあるように、今からでも「エリート」を目指すことは不可能ではありません。

    よく言われる話ですが、スポーツでオリンピックに出るよりは、東大に入る方が確率的にははるかに高いワケですから。

    ……もちろん私は、今から東大目指したりはしませんけどw


    ◆ところで、割愛した中で興味深かったのが「ロールモデルから影響を受けよう」というお話でした。

    要は、「お手本」ともいえるロールモデルに出会えれば、その人の真似をすることで、自分を大きく成長させるきっかけになる、ということ。

    柳沢先生は、その原体験として、開成時代の課外活動を挙げられていました。

    何でも開成では、課外活動を行う際に、中学生と高校生が一緒に行動するのだとか。

    部活も同様で、中学生は高校生と同じ部で練習にはげむため、高校生から色々と教えてもらえ、一方、高校生は教える側に回るため、リーダーシップを身に付けるいい機会になっていた、とのこと。

    なるほど、このようにしてエリートがエリートを育てているワケですね……。


    ◆なお、引用したかった部分は、他にもいくつかあったものの、本書自体は薄くて、ページ数も160ページありません。

    その分、ページあたりの「濃度」は濃いのですが、「読み応え」という観点からは、ちと微妙かもw

    ただし、昨今人気の「エリート」ネタの本と比較して、ご自身の自慢話が極端に少ないのはポイント高し!

    私自身は、今からエリートになるのは無理ですけど、「子育て」に活用して、元を取るツモリでおりますw

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著者プロフィール

柳沢幸雄 工学博士。東京大学名誉教授。元ハーバード大学大学院准教授・併任教授。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の第一人者。現在、開成中学・高等学校校長。

「2019年 『空気の授業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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