コロンブスの不平等交換 作物・奴隷・疫病の世界史 (角川選書 579)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 75
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047035928

作品紹介・あらすじ

「コロンブス交換」が後の歴史に与えた衝撃は計り知れない。交換により生じた様々なドラマを取り上げ、「コロンブス交換」とは何であったのか、現代世界にどのような影響を与え続けているのかに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスのパブでご飯を食べると、これでもかというくらいマッシュポテトが付いてくる。この欧米の庶民のお腹を満たしてきたジャガイモも、あの実がぷりっとして、ぎっしりのトウモロコシも、アステカやインカの人たちが、長い間かかって品種改良した作物だったんだ。これらの食べ物がなかったら、欧米の人たちは、どんなにひもじい思いをしたことだろう。
    それに比べ、欧米人たちが彼らに与えた仕打ちは
    酷かった。
    著者は、アンデスの農業を研究しているうちに民俗学に転向し、この本で、歴史まで語ってくれている。

  • 大航海時代に興味があって図書館で借りました。ちと、期待とは違ったけれどもいろいろと勉強にはなりました。それにしても奴隷という制度は人類最大級の汚点ですね。
     海をまたぐ航海、交易でその土地のシステム、風土、環境というものは改善更新されること以上に壊され、死滅していくことのほうが多かったのですね。我が国のほとんどの文化、食べ物飲み物は中国からもたらされてきたようですが、そこはアジア同士。
     ヨーロッパからアメリカ大陸との交易はいいことも悪いことも多々あったようです。理不尽な奴隷制度は悪の所業。先人たちの命を賭した開拓の恩恵を今の私たちは何も知らずに生きております。ジャガイモに対する感謝の気持ちが芽生えました。

  • 209
    [15世紀末にコロンブスが大西洋を横断して以来、ヨーロッパからはサトウキビや小麦・牛・馬などがアメリカ大陸に持ち込まれ、アメリカ大陸からはトウモロコシ・ジャガイモ・トウガラシなどがヨーロッパに運び込まれた。世界のグローバル化が始まり、食文化にも多大なる影響を与えた。新旧両大陸による交流は「コロンブスの交換」と呼ばれるが、はたして正しい名称なのだろうか。コロンブスの功罪を作物・家畜・疫病の観点から掘り下げる。]


    目次
    序章 黄金より役立つもの
    第1章 コロンブスが持ち帰った穀類―トウモロコシ
    第2章 アンデスからヨーロッパへ―ジャガイモ
    第3章 サトウキビと奴隷制
    第4章 ヨーロッパ由来の家畜の影響―馬と牛
    第5章 先住民の悲劇―疫病
    終章 コロンブスの功罪

    著者等紹介
    山本紀夫[ヤマモトノリオ]
    1943年、大阪府生まれ。京都大学農学部農林生物学科卒業、京都大学大学院博士課程単位取得退学。農学博士(京都大学)、博士(学術、東京大学)。国立民族学博物館名誉教授

  • めちゃくちゃ読み応えがあった。面白かった。特に第5章・疫病についての内容はかなり重かったです。ヨーロッパが「新世界」にもたらしたギフトはあまりにも重く酷すぎた。
    いろいろ書物を読んでいるとコロンブスの「発見」というポジティブな功績にスポットが当てられがちで、それ以前から先住民が長い年月をかけて生み出した素晴らしい作物だったり歴史にスポットが当てられることってほぼなかった。言われてみれば。
    歴史の教科書だったか忘れたけど、「アメリカはヨーロッパに比べ歴史が浅い」みたいなニュアンスのことが書かれていた。よく考えればそんな事は絶対になくて、あまり知られてないだけでアメリカにも同じだけもしくはそれ以上の長い年月をかけて育まれてきたものがあるんですよね。
    不平等交換、タイトルが秀逸だなあ。

  • 209.5||Ya

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    私は勉強不足で「コロンブスの交換」という言葉を知らなかったので本書に書かれている内容は非常に新鮮だった。
    今では一般的に食べられているトウモロコシやジャガイモが新大陸由来であるということ。新大陸産のサトウキビの存在が奴隷貿易に繋がったこと。旧大陸から連れて行かれた家畜が新大陸で急速に拡大していたことなど非常に面白かった。
    しかし、最も衝撃的な事はコロンブスの発見により両大陸の疾病が交換されたという事だったな。旧大陸の病気が新大陸で猛威を奮ったことは知っていたが、新大陸から旧大陸へと渡った疾病があったことには驚いたよ。

  • コロンブスその人についてではなく、新大陸到達によって引き起こされる災難に焦点を当てた一冊です。
    植物、家畜等資源の交換が行われますが、それは人間同士の平等さに欠けるものでした。
    図らずも疫病の交換が起こり、旧世界からのそれは新世界を滅ぼしてしまいます。
    争いはあっても豊かな大地で比較的平和に暮らしてきた先住民たちは、文明人によって野蛮な世界へ招かれてしまうのです。
    トウモロコシやジャガイモなどの作物は、先住民による品種改良と加工技術によって生み出されたものです。
    彼らは決して野蛮人ではなく、むしろ優れていました。
    絶滅させられてしまった部族もいることを残念に思います。
    多くの文献から要約され情報量が多く、更に読みやすく感じました。

  • 「新大陸発見」の影響について。

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著者プロフィール

1943年生まれ。京都大学大学院博士課程修了、農学博士。現在、国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学併任教授。専門は民族学、民族植物学、山岳人類学。1968年よりアンデス、アマゾン、ヒマラヤ、チベット、アフリカ高地などで主として先住民による環境利用の調査研究に従事。1984〜87年にはペルー、リマ市に本部をもつ国際ポテトセンター社会科学部門客員研究員。主な著書に『インカの末裔たち』(日本放送出版協会、1992年)、『ジャガイモとインカ帝国』(東京大学出版会、2004年)、『ラテンアメリカ楽器紀行』(山川出版社、2005年)、『雲の上で暮らす——アンデス・ヒマラヤ高地民族の世界』(ナカニシヤ出版、2006年)、編著に『世界の食文化——中南米』(農産漁村文化協会、2007年)。アンデス・ヒマラヤにおける高地民族の山岳人類学的研究により今年(平成18年)度の秩父宮記念山岳賞などを受賞。

「2007年 『アンデス高地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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