教師格差 ――ダメ教師はなぜ増えるのか (角川oneテーマ21 A 67)

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  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047100992

作品紹介・あらすじ

なぜ教師はここまで追いつめられたのか?教師力の低下と苛酷な教育現場の実態。本当の「教育再生」への処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が伝えたいことは?
    教育とは、学校や家庭などの現場において、日々営なまれる、ドロまみれで、人間臭い営みである。
    教育再生は、外野から外野の論理を押し付けていくことではなく、主役である子どもたちの声を聞き取り、教師を尊重することです。その上で、必要な予算を注ぎ込む。
    つまり、教師や学校は、子どもや保護者の力をかりて、彼らの実態や彼らが抱える問題をもとにした教育方針や指導方針を立てたうえで、日々実践していくことが、教育再生につながる。

    学校と教師に自由と権限を与えることにより、いじめのない、創造性豊かで安全な安心できる学校が生まれてくる。

    キーワードは、教育は、子どもたちのもの。


    著書は、現状の教育の問題点について書かれているが、終始問題点の提示が主であり、具体案がないのが、残念である。

  • ブックオフで100円で購入。さすがに旬は過ぎてた。

  • 日本の教育現場の実態を尾木ママが解説している

    日本の教育が十分だとは思わないけど
    日本は教師に求めるものが多すぎると思う

    教師の質や制度を改善してもきっと限界があって
    教育のシステムを根本的に変えることが必要な気がするなあ

    学力が指標の全てではないけど、それだけを取っても他国より劣っているのは明白で
    もう少し周りを見渡しながら柔軟に変えていけるといいんじゃないかな〜

    と、いち大学生として思った笑
    (現場に出てない人が何も言えない)

    ✏教師の教育実践は、その専門性と良心に依拠して、"子どもの発達保障と人格の形成"という2つの目的にのみ服する

  • かつての日本では「聖職」とまで呼ばれ、人々の尊敬を集めた教師が危機を迎えている。本来は生徒の立場でモノを考えるべき教師たちが、教育委員会との摩擦・いじめによる自殺・モンスターペアレント・教師倫理などの様々な問題によって精神的に追い詰められ、心の病を発症する事態が激増している。「成果主義」や「目標管理」のような一般企業の悪しき制度が学校に持ち込まれた事で教師のサラリーマン化が進み、それに馴染めずに生徒との交流を遮断する「ダメ教師」や、暴力やセクハラに走る「問題教師」が崩壊を招いていると断じる。前項の『教育破綻が日本を滅ぼす!』と併せて読むと、政府の進める教育改革がむしろ学校と教師に強烈なプレッシャーとなっている事がよく分かる。 この現状には尾木ママも異を唱えるものの、根本的な改善が出来ないのが「教育評論家」としての限界なのかも。

  • 教育評論家としてメディアでも有名な尾木直樹氏の著作。

    教育崩壊を教師崩壊と捉え直し、教師が直面する問題を考える。

    現行の教育制度における「教師」の役割は様々。日本は諸外国に比べるとその辺が特殊な形。

    教師というものの世間的なイメージが崩れている。不徳な教師の起こす事件がメディアで報道されるたびに、世間一般の教師像というものがどんどんと落ち込む。もちろん教師自身もそのようなモデルをある程度認識し、自らその枠の中に入ってしまう可能性もある。

    この本の中で指摘されている人間力と呼ばれているものは単に「新社会人」がもつ経験不足、が原因なものもある。少なくとも新人の教員は他の社会人一年生と比べて著しく劣っているとは思えない。

    しかし外圧が低ければそのまま中年、ベテラン教師になってしまう可能性はある。学校同士の競争化を促す意見の正当性はこの辺にあるだろう。

    著者は「生徒に合わせた授業が必要」と説く。しかし現実的に時間が絶対的に足りないだろう。一つのクラスにメインで授業をする人間と、事務的サポートをする副担任が絶対的に必要になってくるとおもう。

    あと、教師力を維持するために優秀な人を集める事が必要とも説く。しかし「優秀」な人間よりも「やる気」のある人間の方が必要ではないか。頭が良くてもそれがそのまま人を教えるのが上手い、適切であるとは言えない。恵まれた職場だから教師になるというのはやはり「サラリーマン教師」を増やす原因になると思う。
    もちろん、現状の制度が良いというわけではない。

  • 教育評論家・尾木直樹による教育論。
    第一次安倍内閣時の、教育再生会議による波紋を
    描き出している。

    最近の著者は、テレビやブログ等で、
    教員の代弁者なのか、世論の側にたって
    教員を攻撃する立場にあるのか
    はっきりしない部分も見受けられたが、
    本編は、真摯な教育論と言っても良いだろう。

    教員という立場、その資質からは難しいのかもしれないが、
    著者のようにメディアに進出する人物が
    どんどん出るようになると
    世論との間の壁も薄くなり、
    結果として開かれた学校になっていくように思えてならない。

  • 勉強になりました。

  • 尾木ママが現在の教職者を取り巻く現場の状況を的確に分析。
    会社や企業と同じ成果主義と評価主義に追われる教師。
    そこにある病理をデータを取りながら丁寧に解説。
    教育再生会議や行政の在り方にもしっかり提言しており、
    競争ではなく共創と、現場の声に耳を傾けること。
    法で縛ることよりも多くの予算を投入することで現場で子ども一人一人に向き合う機会や時間を増やすことが提言されています。

  • 今どきの教育問題。
    特に「いじめ」について記載。

  • タイトルは教師だけのようですが、内容な多岐にわたります。
    6年前の書籍ですが、今の現状とあまり変わらないようです。
    今の教育界の問題点は断片的にわかりますが、深い内容について書かれていないのが、ちょっと残念でした。。。でも、勉強になりました~

  • 前半は共感できる部分、目からウロコな部分が多くグイグイ引き込まれる。
    特に第3章の「教師の条件」。自分の理想の教師像とかぶる部分が多く、教師として勇気が持てた

    ただ、後半の「提言」の部分が弱い。
    批判は非常に的を得ているとは思うが、それに対する解決策が具体的でない。橋下徹が言う学者の典型例だ。

    教育再生会議が対症療法的すぎると断罪して上で、「日本がどういう国にならなければならないかという国民的な歴史的視点に立って、しっかりとしたビジョンをもつことが重要でしょう」(原文ママ)と述べているが、具体的に何をどうすればよいかまでは触れていない。

    その部分は他人に丸投げして、出てきたものが悪かったら批判する。こう思われても仕方がない。

    基本的に、現場の先生応援主義の尾木先生には頑張って欲しい人間なので、この辺が残念だ。

  • 教育界の抱える困難がどこからきているのか?どこにねじれがあるのか?
    それが分かる一冊。
    なるほどと思って読んでいたら、5年以上も前に出ていたのね。いま読んでもためになるし、いまこそ知らなければいけないものなのだと思う。

  • 教師を目指す人、教育学を学んでいる人、今の教師という職業にものいいたい人みんなに読んでほしい一冊。教師に対する見方が変わると思う。

  • 熱い語りだった。尾木ママの教育に欠ける思いや、子どもの人格的成長に尽力しようとする思いが伝わるようだった。問題点はたくさんあがっていたが、どうすれぱよいのこの部分は抽象的になって、とりあえずお金もかけて人材集めもがんばって、世論と政策や保護者と教師、校長の認識の違いを埋めて、という感じになってしまったのがもう一歩。

    ただ熱い語りに、尾木ママの本を他にも読んでみようと思えた。ぜひ、教員志望には読んでほしいし、たくさんふせんがつく本になると思う。

  •  少し前の本だけど、書いてあることは少しも古びていない。かつて学校に勤務していて、今も多くの先生方のそばにいる自分にとって、大いにうなずける点がたくさんある本であった。

     いろんなことがあるたびに先生は非難を浴びてしまっていて、本当に一握りの不心得者の行っていることが、なんだかその職全体を貶めているような印象が強い。たまにバカなことをやった人がアニメを見ていたからって、アニメファンを全員変態扱いするような論調とまったく同じである。

     この本の中には、思うにならない勤務条件の中で、子供たちのために身を粉にして働く先生の姿がたくさん書かれている。特に、具体的なアンケートの中で明らかになる各先生方の声は、本当に心を打つものがある。自分のことは二の次にして、目の前の子供たちの笑顔だけを励みにしている先生方のことをもっとたくさんの人に知ってほしいと思う。

     本のタイトルはわりあい強い印象を与えるけど、出来の悪い先生の見つけだして攻撃するような内容ではない。もちろん、先生がしっかりしなければいけないのは当たり前だし、問題のある先生にはやめてもらうなりなんなり、そういうことだって必要なのはよくわかる。この本にもそういうこともきちんと書かれている。

     でもそれ以上に、もし教員格差が生まれるとしたらそれはなぜなのか、実際に格差があるとしたらそれをどうすればいいのか、そういうことにきちんと答えを見つけようとしている筆者の態度に好感が持てる。

     法律の意図などについて、「そんなふうにとらえなくてもいいんじゃないかなあ」と思うところもいくつかあったし、筆者が指摘する問題点についても、「でも、それは…」と思うところもある。でも、そういった違いを越えて、根本のところにある考え方、一言でいえば社会が先生を信用し、教育をもっと大事に考えていこうという主張に深く共感した。

     この本が書かれてから何年も経っている。同じ大変さの中に先生たちがいることが悔しい。

  • 2012/06/30ー2013/08/20
    壊れていく教師を救えるのは、尾木直樹さんのように教師の内実を知り尽くした元教師のコメントが必要である。教壇に立ったもののみが教育に対してもの言うことができる。

  • 教師の教育力の低下しているとよく言われる。これが的外れな意見だとは必ずしも言い切れないが、それ以上に社会の変化が大きいのではないか、というのが筆者の主張だ。実際に中学校教諭として現場にもいた筆者が、現在の教師を取り巻く環境や教員評価制度等について生々しい具体例を交えて論じている一冊。

  • 昨今の教育事情を冷静に分析。
    教育現場を経験した人らしく、教師のおかれた立場をよく理解して書かれている。

  • 対症療法。

    今の教育のアプローチがそうである、と筆者は言います。ではどんな教育が望ましいのかといえば、『人間臭い教師の養成』つまり、昔の熱血教師の復興。懐古主義を思わせる内容に拍子抜けでした。
    熱血教師、子どもに真摯に向き合うための手段が、現在の査定主義や煩雑な事務処理と相容れない。また保護者アンケート調査によると、理想の教師は、端的に言えば上記熱血教師で、更に、理想の子ども像や理想の教師、学校に求めるものは、『人の痛みが分かる子になってほしい』、『のびのびと子どもを伸ばしてほしい』がトップとなり、メディアが声高に叫ぶ『学力向上』を期待する保護者は少なかった…。

    んー。
    筆者の言う通り、確かに学校に対して学力の向上を求めるのはお門違いだと思うし(最低ラインは求めます)、学力向上を一番の目標に据えるなら学習塾に行かせればよいことで。学校というのは学力だけでなく、学校生活を通して、他人との強調・協働・協力を通じて共感性や情操、自律、責任感の醸成を目指す、言わば社会生活を営む上で必要な要素を培う『社会生活のミニチュア版』。
    その音頭取りが教師なんだけど。
    全ての教師が熱血教師だったら気持ち悪いだけで、もっと教師にも多様性を促進させるような方向性を持たせた方が良いような気がします。

    序盤から終盤にかけて、著者による調査や文科省のデータを資料としてまとめてあり、丁寧な解説と著者の私見をうまくミックスさせていて読みやすいのですが、終盤からのまとめでは、ちょっと説得力に欠ける面もあり、著者の見解も紙幅的に言えば少なかったのが残念です。まぁしかし、押し並べて面白く読めました。

    最後に、理想の教師像というアンケートの調査結果(本書掲載)をまとめたものを載せます。

    好きな先生の条件(理想の先生像) NHK『少年少女プロジェクト』の調査
    中学・高校生の回答
    気楽に話せる…61%
    授業がわかりやすい…50%
    ユーモアがある…41%
    どの生徒にも公平に接する…39%
    生徒の話を真剣に聞いてくれる…32%
    自分の過ちを素直にみとめる(あやまる)…19%
    怒るときはきちんと怒る…17%

    校長の回答
    授業がわかりやすい…92%
    気楽に話せる…4%
    ユーモアがある…8%

    保護者の回答
    生徒の話を真剣に聞いてくれる…67%
    授業がわかりやすい…56%
    どの生徒にも公平に接する…50%
    怒るときはきちんと怒る…44%
    気楽に話せる…26%

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著者プロフィール

教育評論家、法政大学教職課程センター長・教授、臨床教育研究所「虹」所長。
1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、海城高校や公立中学校などで教師として22年間、ユニークな教育実践を展開。現在、「尾木ママ」の愛称で親しまれる。
著書『いじめ問題とどう向き合うか』『子どもの危機をどう見るか』(以上、岩波書店)『新・学歴社会がはじまる』『日本人はどこまでバカになるのか』『子どもが自立する学校』(編著、以上、青灯社)『尾木ママの「叱らない」子育て論』(主婦と生活社)『尾木ママの子どもの気持ちが「わかる」すごいコツ』(日本図書センター)ほか多数。

「2013年 『おぎ・もぎ対談 「個」育て論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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