井上ひさし 希望としての笑い 角川SSC新書 (角川SSC新書 104)

著者 :
  • 角川SSコミュニケーションズ
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047315273

作品紹介・あらすじ

残された言葉があれば、わたしたちは生きていける-惜しまれて逝った偉才・井上ひさしは、庶民の目線をつらぬき、人を、家族を、社会を、国家を、戦争を、平和をえがきつづけた。わたしたちを魅了する代表的な作品から、「希望としての笑い」をキイワードに、親交のあった文芸評論家が哀悼の意をこめて書き下ろす、決定版「井上ひさしの世界」。

感想・レビュー・書評

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  • 井上ひさしの著作の解説というには筆力がイマイチな感じ。

  • どうも戯曲中心で、かつ文学賞の選評のごとき記述が連なり、なんとも楽しめない。物語の捻じ曲げ方や発想に至る経緯は詳しいのだが、井上ひさしへの興味はそういった点には自分は持っていないのだということのみがわかった。「これおもしれーよなあ!」という単純な喜びを共有したかった。

  • 井上ひさしの作品、生きざまを解説した本。
    恥ずかしながら、井上ひさしの作品は「ひょっこりひょうたん島」、「父と暮せば」程度しか知らなかったが、本書を読んで、もっと多くの作品に触れたいと感じた。

    井上ひさしは、作品を通して社会の置かれている状況に警鐘を促している。ただし、社会問題を取り上げつつも、それを単に否定するのではなく、「希望としての笑い」を備え、人々に希望を与えるものとなっていると筆者は主張する。
    『笑いが瞬間的な有利をもたらしたとき、わずかとはいえ人の自由がうまれる。フランスの哲学者「アンリ・ベルグソン」が『笑い』で指摘した、使途の精神を固定させる「こわばり」への、笑いを介した「しなやかさ」の回復。すこし離れて見ることがもたらすこの自由によって人は、否定的状態を相対化できる。巨大で動かすことなど考えもしなかった状態の意外な小ささや弱さを明るく元気な笑いと共に発見した人は、勇気をもって肯定的状態をめざしはじめる。あるいは逆に、すこし離れて見ることで人は、否定的状態の広がりと深さにあらためて直面する場合もあるだろう。このときの笑いは明るい笑いではなく、暗く残酷な笑い(ブラックユーモア)にかたむく。しかし、暗く残酷な笑いも、否定的状態をくぐりぬけるのを大胆にうながす笑い(中略)ともなりうる。』

    『ムサシ』を題材に憲法第9条について考えさせたり、実在する作家の評伝劇を制作し、作品の裏で社会に抵抗する彼らの日々の葛藤を描いたり、「父と暮せば」で原爆の恐ろしさを世界へ発信したり、「不忠臣蔵」では日本人が無意識に型にはめていた事柄を、異なる角度から示したり。今後、彼の作品をじっくり味わってみたいと思えた一冊。

  • 良い読者を得た作家は幸せだと思う。筆者は井上ひさし氏の良い作者だと思った。
    私は思い残し切符を「イーハトーボ」を読んだときに受け取ったと思ったし、「父と暮らせば」を読んだときは涙が止まらず、地方劇団の公演を見つけて劇を見に行ったことを思い出した。そんな思い出を一つ一つよみがえらせた。
    井上ひさし氏のすばらしさがビンビン伝わってくる。引用したいところが多すぎて抜き出せない。
    間違いなく星5つ!
    「つよい眼差しとやわらかい表情、短く的確であたたかな言葉」それが井上ひさし氏。

  • 10.9.17~/11.08下旬~09.19再読

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著者プロフィール

◎高橋敏夫(たかはし・としお)
1952年生まれ。文芸評論家、早稲田大学文学部・大学院文学研究科教授。早稲田大学第一文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程満期退学。『藤沢周平 負を生きる物語』、『ホラー小説でめぐる「現代文学論」』、『井上ひさし 希望としての笑い』、『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』など著書は30冊をこえる。

「2019年 『抗う 時代小説と今ここにある「戦争」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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