僕たちの居場所論 (角川新書)

制作 : 内田 樹  平川 克美  名越 康文 
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047317536

作品紹介・あらすじ

生きる意味を見失いそうになりそうな成熟社会の中で、自分の居場所をきちんと確保することの大切さが問われている。そこで、精神科医として大阪で精神科緊急救急病棟の設立・責任者を務めた後、今や東京を中心にテレビなどメディアでも活躍している名越康文氏、東京都大田区で生まれ育ち東大を出ながら、神戸女学院大学教授として長年神戸で暮らし、退職後も神戸に道場を開いて思想家・武道家として異彩を放っている内田樹氏、そして内田氏と小中学校が同じで、東京で多くの会社の経営にかかわりながら、現在は東京の私鉄沿線に開いた自分の喫茶店にいるのがいちばん居心地がいいと話す平川克美氏。旧知の仲の3人が、三者三様の生き様を通して、居場所とは何か、自分らしさやつながりとは何かについて、胸襟を開いて語り合う。心が温まり、思わず笑いがこみあげる話の中に、叡智が散りばめられた1冊。

感想・レビュー・書評

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  • この三人の鼎談とあらば読まずにいられないと手に取り。
    最初にこの本を読むに当たって押さえておくべき場所についての解説がありますが、確かにそれを踏まえて読みだした方が入りはスムースかと。
    とはいえ正直言うと私は、最初の方「おっさんの内輪話」にしか感じられず(失礼)中々お三人の語りのペースに馴染めませんでした。

    しかし何気ない話をしているようであっても自ずと深い話になってゆくのはさすがです。三人とも全然違うようでどこか通じるものがあるというか似ているところがあるように見受けられました。

    「政治やメディアの劣化を野放しにしておくことは危険である」とか、「生きる上で当たり前のこと(常識)だから法文化していないことを”法律で決まっていないから”とどんどん破っていく」など、今の日本の現状でシビアになってきている点についてがんがん話されています。漠然とは思っていてもそれこそ自分の中では明文化していなかったものがどんどんとこの場では語られており、深く考えさせられます。

    家を出るという行動に攻撃性なんて考えたこともなかったですがこう言われると「なるほどなぁ」と大変腑に落ちます。向田邦子のエピソードも、向田邦子ってやっぱりすごいなと思わされました。

    でも自分が一番グッと来たのは第4章ですね。
    どの章がグッとくるかはおそらく人によって結構分かれると思いますが、自分は何度か涙ぐむほどに感動しました。これは自分が両親を亡くしたせいかなと思いました。身内を亡くした人には染みる一章ではないかと思います。
    運命に導かれているべきところに帰着していく…と内田先生はおっしゃっておりますが私は運命というより宿命とそれは呼ぶのではないかな、と思いました。
    平川さんの言う強い現実、がイコール宿命かな、と。

    これは今だからこそ読まれるべき鼎談ですね。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689992

  • 師匠が居場所論というキーワードを言っていたので引っかかったので購入.まだちゃんと読んでいない.

  • 才能はフォース。最大限に使えば簡単に成功出来るかもしれないけど、出来るだけ使わずにしのぐ。親の遺産みたいなもの。

    人間は聞きたい言葉を聞く、天籟。
    その意味は天から降ってくる音、それは倍音ではないか。

    長男は師匠がいない。社長が多い。

    女は今日で終わりでも良いと言う感じで来るから強い。

  • 内田樹、平川克美、名越文康という気心の知れた三人が、「居場所」というテーマからはじめてさまざまな話題について自由に論じあっている本です。

    平川は荏原中延に喫茶店を開き、名越はそこの常連客となっています。一方内田は、自宅を兼ねた道場「凱風館」で武道の指導をおこなってきました。本書では、彼らのこうした「居場所」がそこにいる人びとにとってどのような意味をもっているのかということが語られています。さらに議論が進むにつれて話題はひろがり、グローバリズムの問題やネトウヨの心理、師をもつことの意義など、多岐にわたります。

    著者たちの議論にすべて同意することはできませんが、一見したところ極端な主張に見えるような議論であっても、そうしたものの見方があるのか、と気づかされることがしばしばで、たのしみながら読むことができました。

  • 私の狭義の居場所はエコロジカルニッチなんだぁ...。広義の居場所は人の中にしかないのかぁ...。

  • まず内容ですが、
    第1章 いちばん自分らしい場所
    第2章 つながるということの本質
    第3章 好き嫌いと価値観の共有
    第4章 師匠の存在、家族が自己にもたらすもの

    自分の居場所を見つけられない人が増えてきているという時代、それぞれ違う立場で活躍してきた内田樹・平川克美・名越康文の朋友の3人が、自分らしさとは、つながりとは何かについて鼎談。
    昔話に花が咲いたと思ったら、話は思わぬ方向に……。
    叡智が詰まった言葉の数々にハッとさせられる一冊でした。

    内田さん平川さんは私とまったく同世代です。
    だから余計に発言内容に親近感が持てました。
    同世代が時代時代を共有してきた感覚にとっても親しみがもてるのです。
    69歳にもなりますと、心和む内容が精神衛生上いいようで(笑)。

  • 3人の対談として読むので軽くていい。
    会話の中で流れついていくいろいろな話題が面白い。
    以下印象に残ったことなど。
    ・グローバルという視点の元に、均一の基準で比べられる大学。
    個性や理念は問題にされず、
    数値化できるもので誰にでもわかるようにならされる。
    結果、ランクの低い大学を淘汰し、補助金を分配する対象を減らしていく。
    教えることがこんなに見下されているってなんだろうか。
    ・先生と言うのは誰にでもできるもの、という内田さんの言葉が印象的。
    能力のある人にしかできないものだったら、
    該当者がいないときに、子供は生きていくすべを学ぶことができず
    その集団は一代で滅んでしまう。
    ・自分の中の演算機能が低いと、複雑な状況を理解することが出来ず
    単純な考え(陰謀史観とか)にすがってしまう。深く納得!
    ・言葉に新たな語義を付け加える権利があるのは母語話者のみ。
    ・守るものがある人の方が弱い。
    どこにも帰属せず面倒を見なくていい立場の人間は
    その場限りのネットワークの中で匿名の一刺しで強さを持つ時代。

  • 2017.2.9
    僕の居場所がどこかっていうと、自分の家なんだけど、その家の中には自分の居場所がないような感じです。今晩から僕以外の3人が5日ほど家を開けるので、自分の居場所として感じられるだろうか?
    グローバル社会とか市場が無縁社会で小さなコミュニティとか私塾が有縁社会。行きすぎたグローバル社会からの揺り戻し。
    先日一緒に自治会活動をしてる人からポンカンをどっさりもらったんだけど、自分でミカン畑持ってて、自分たちとか近い知り合いだけに作り、その人たちと収穫したりしてるそう。それが、スーパーで買えるようなものより全然美味しいんだ。

  • 三人の鼎談をすぐそばで聞いているようだった。

    内田先生が出不精っていうのがよくわからないのだが、ご本人がそうおっしゃっているのだからそうなのであろう。
    名越先生は移動好きとおっしゃっていて、その通りに見える。
    その名越先生の「中締め」に書かれている、移動が無数の人々の窮地を救っているのではないかというのが、心に止まった。。「物事に行き詰まったら場所を変える」というのは、いつも意識しておきたい。今、書きながら、そんなこと当たり前じゃないかと思ったのだが、行き詰まればそのことさえ忘れてしまう。

    内田先生「自由に生きれば生きるほど、はっきりと自分を方向づけている縁がくっきり見えてくる」
    平川さん「生きていれば、縁はつながる」
    名越先生「自由に生きれば生きるほど、運命は紡がれる」
    と最後はまとまった。

    自由に生きたい。

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