- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048682893
作品紹介・あらすじ
小さな路地に隠れるようにある防具屋「シャイニーテラス」。店の女主人ソラは、訪れる客と必ずある約束をかわす。それは、生きて帰り、旅の出来事を彼女に語るというもの。ソラは旅人たちの帰りを待つことで世界を旅し、戻らぬ幼なじみを捜していた。ある日、自由を求め貴族の身分を捨てた青年アルが店を訪れる。この出会いがソラの時間を動かすことになり-。不思議な防具屋を舞台にした、心洗われるファンタジー。第16回電撃小説大賞"選考委員奨励賞"受賞作。
感想・レビュー・書評
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防具屋シャイニーテラスの女主人、ソラとシャイニーテラスに訪れる兵士たちの姿を描くファンタジー。
世界観はRPGゲームに近いものの、基本的にソラとそのお客たちの会話が中心となるのでファンタジー色はそこまで濃くないです。
とある理由により店の外に出ることのできないソラ。そのため彼女は防具を売った客にある約束を交わし、そして「いってらっしゃい」と声をかけます。
この「いってらっしゃい」という言葉と防具が結び付くのがこの本です。「いってらっしゃい」はそれ単体だと宙ぶらりんの言葉だと作中であります。「いってらっしゃい」があり「おかえりなさい」という言葉があってこそ、この言葉は成立するのです。
そしてもちろん、おかえりなさいためには帰ってくる必要があります。無事に帰ってきてほしいからこそ、ソラはそれぞれにあった命を守る防具を売るのです。
世界観に文章、そして登場人物たちの思いの優しさが温かい小説でした。
第16回電撃小説大賞選考委員奨励賞詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ファンタジーなんだけど、戦う方じゃなくて、待つ方の視点。他の物語じゃ一瞬の描写かもしれない、書かれないかもしれないけど、だからこそ、本物のファンタジーなんだなぁ、って思います。
防具屋の主ソラの視点と、そのお店で人々が思い出しながら語る冒険は、瞬間のスリルこそ少ないけど、より考えや気持ちがこもってて読み応えがあります。 -
「いってらっしゃい」
「いってきます」
「ただいま」
「おかえり」
ただそれだけを言うために。
ただそれだけを聞くために。
待つことしかできないけど、待つことならできる。
帰るべき場所を、守り続ける。
と、なんだかただただ待ってるだけのようなことを書きましたけど、それだけじゃないですよね。
彼女はただ待つだけじゃない、言うなれば「能動的に待つ」のです。
防具を作り、手渡し、それにより一緒に戦う。
防具を作ることで、一緒に旅をし、彼らの身を守り、そして彼女が待つ、その場所へ帰ることを手助けする。
受動的になりがちな、待つことを能動的にする。
積極的に待つ。
同じ防具を使う仲間によるネットワーク作りも、能動的待ちのひとつの策。
同じ防具を使う仲間同士が助け合えば、それぞれが生き残り、帰ることができる可能性が飛躍的にアップすることは確実。
すべては待つために。
帰りを待つために。
最初、なんだか硬い文体だなと思っていたのですが、なんだか途中からこなれてきたのか、それも気にならなくなりました。
剣と魔法の世界を舞台とするファンタジーなのだけど、戦闘シーンと呼べる戦闘シーンはほぼ出てこない。
それもやはり、この作品のテーマを表してるのかなと思ったりします。
すべては帰るために。 -
1人の少女をもとに、人と人が結び合って命を繋げていく、ジャンルはなんだろ、、、。
ただただ優しい物語 -
あたたかい気持ちで読める。
戦闘シーンが直接出てこないので静かで安心できるファンタジー。 -
綾崎隼さんの吐息雪色の中で読まれている、と綾崎さんが話されていたのが気になり購入。
(綾崎さんもオススメされてました)
RPGで遊んだ経験があるせいもあり、
なんだか読みやすく、
戦闘シーン等もなく、ただただ待つことしかできない視点は面白かったと思います! -
私としては、これ、すごい王道なファンタジーに感じました!
なんか、ファンタジーといったらコレ!みたいな小説です!RPGっぽいです!!
どこかブレイブストーリーを彷彿とさせます!! -
小さな路地にある、誰かに紹介でもされない限り分からない防具屋。
そこの客となるには、主人との約束を了承せねばならない、という決まり。
プロローグは、過去と、初めてのお客さんと店主と
店のルールについて。
そこからは連続短編集のように、3人の人物が
店にやってきて話していく。
少年と軍人の繋がりはうっすらと分かったのですが
冤罪で捕まっていた彼については、どう繋がるのか。
首を傾げていたら、きれいに繋がりました。
だからなのか、と。
ヒントはあったのに、まったく気が付かないのは
どうなのでしょう?w
当人にとっては緊迫感のある状態が続いた事でしょう。
しかし体験した本人の口から語られているので
確実に帰宅できた、という終点のおかげで
ゆっくりと聴く事ができました。
物語なのですが…なんだかこう、童話に近いものを読んだような?
鳥かごにいる少女。
ドアから外に出るか、中のままでいるか。
選ぶのも自由、というのに頷けます。