青の炎

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 299
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048731959

感想・レビュー・書評

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  • 辛ぁ…
    家族の為に戦った最高に良いやつの秀一がなんでこんな目に会わなきゃいけないんだよ…
    というのが率直な感想
    殺されても仕方ないような人間はいますよほんとに
    逃げ場の無くなった理不尽に知恵で戦った秀一
    行動がどんどん裏目に出ていくのがやるせない
    闇へ闇へと落ちて行く
    計画を遂行出来るのか、本当にやるのかという所と警察の追求、事実への葛藤に中盤以降はずっと気持ちが落ち着かなかったです
    しかし読後がこれほどやるせないというか胸くそ悪いというか…
    一度火をつけてしまうと、瞋りの炎は際限なく広がり、いずれ自分自身をも焼き尽くす
    忘れないでいたい言葉でした

  • 高校2年生の男子学生が、自分の家族を守るために殺人を犯す。またその犯行が明るみに出そうになり、第2の殺人を犯してしまう。

    決して人を殺すことは許されないが、主人公の苦悩と家族への思い、そして主人公の心の中に存在する人間の本性のようなものが一体となって、一高校生を完全犯罪の殺人事件を起こさせてしまう背景は同感を生むものがあるかもしれない。

    しかし、その犯罪の結末はあっけなく破綻し、ラストは・・・

    主人公の人物描写は素晴らしいものがあり、展開のテンポもよく、かなり満足な作品でした。

  • 現在の日本において、人を殺すことは許されていない。

    自分のためじゃない。家族を守るための殺人。
    家に転がり込んできて妹と母に苦痛を与える、かつての父親には電気ショックで罰を。
    殺人を知り、強請ってきた、かつての友人には狂言強盗を持ちかけ、ナイフで刺し殺す。

    完全犯罪で家族を守ろうとした高校2年生。

    -----------------------------------------------------

    たとえばここが日本じゃなくて、ミサイルや爆弾が飛び交う戦争状態の地域だとする。そしてそこにいる彼らは家族や友だちや大切なひとを守るために戦っているとする。
    誰かを傷つけたり排除する行為が、別の誰かのための愛だったりする。

    戦争反対なんてことは皆思ってる。殺す相手にも大切なひとがいることも想像できる。できるなら殺したくない。
    だけど、自分の大切なひとを守ろうとするとき、心に青い炎を灯し、危害を加える相手を排除する行為。これが愛じゃない、なんて誰が言えるのか。

    難しい。
    何が良くて、何が悪いのか。その道徳心は正しいのか。
    すごく揺さぶられるけど、答えは出ない。


    家に転がり込んできた元父親が余命わずかだったこと。
    秀一をかばおうとした友人たち。
    妹と母を想いトラックに飛び込んでいく秀一の気持ち。
    そのトラック運転手にも家族がいるんだろうな、とか、何度も何度も揺さぶりをかけてくる話だった。

    家族のために2人殺し、警察に追及された秀一の出した答えはトラックに飛び込むことだった。

    正解だとは思えないけど、答えが何だかもわからない。
    とても救われない話だった。名作。

  • 全編にわたって主人公・秀一の視点で描かれており、
    秀一の些細な感情の変化、心情まで感じ取れた。
    思わず秀一に感情移入する・・というより、あたかも秀一の周りにいる人物のひとりであるような気持ちになり、
    なんとか秀一の犯行をとめようとしている自分がいた。

    高校生らしい部分も持ちつつ、頭がよすぎた秀一。
    何も、すべてを一人で背負う必要はなかったのではと感じた。

    事を起こしてしまった後に気づく周囲の優しさ。
    家族を守ろうと思うあまりに犯してしまった罪がとても悔やまれる。

    とても読みやすく、かつ、心揺さぶられる一冊であった。

  • 哀しい話
    お母さんが思い切れば事件は起こらなかったかもしれない
    秀一に賢さと優しさが切ない物語

  •  背景描写が細かく描かれていたので気になり、Googleマップで確認しながら読んだのを覚えています。
     主人公の計画を許してしまうと世間にこれが認められることのように感じ、形は別として、行為は暴かれる結末で良かったと感じました。

  • 倒叙ミステリーを読むのは久しぶりだったけど、思い出してしまった、この嫌な感覚・・・。
    感情移入しすぎるのか、犯人目線の物語を読むと緊張で動悸がすごいことになり、読み終えたあと具合が悪くなる。。
    話自体はとても面白く、未成年特有のどうしても大人に逆らえない・自分の力では状況を変えられない苛立ちや葛藤の中でもがく描写は自身の学生時代を思い起こさせた。

    -------------------

    光と風を浴びて、17歳の少年は、海沿いの道を駆け抜ける。愛する妹と母のために―。氷のように冷たい殺意を抱いて。人間の尊厳とは何か。愛とは、正義とは、家族の絆とは―。熱き感動を呼ぶ現代日本の『罪と罰』。日本ミステリー史上、燦然と輝く永遠の名作、ここに誕生。

  • まだ学生の頃に読んだのを、再読。1999年に発行されただけあって、社会の描写に月日の流れを感じるが、あくまで時代が変遷しているだけで内容を楽しむ分には全く支障なし。以前読んだ時とは印象に残る箇所が違い、新鮮な気持ちで楽しめた。ストーリーが分かっていても面白いのは筆致の妙と登場人物の魅力。
    主人公の違った未来を見たいと切望しながらラストの余韻にやっぱり泣いた。

  •  作品解説:こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか。 秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手に秀一は自らの手で殺害することを決意する。

     倒叙ミステリー(犯人の視点から描くミステリーのこと)の大傑作! はっきり言うと、映画はつまらない! というのも、主人公・秀一が家族を守るために殺人を計画・実行して行く過程の心情があの演技からは伝わらないからだ。
     逆に言うと小説からは、念入りな完全犯罪へ思い至る、衝動を抑えきれない若さゆえの心情が痛いほど伝わってくる。

  • 最後の最後に衝撃が走った。まだ映画のほうは見たことがないけど、見てみたくなった。家族の形というのはいろいろあって複雑だなと思った。だけどどんなに完璧な殺人計画で誰にも気づかれないと思っていても最終的には誰かに気づかれてしまうものなんだと改めて感じた。

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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