すぐそばの彼方

著者 :
  • KADOKAWA
3.28
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本棚登録 : 84
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048733076

感想・レビュー・書評

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  • オススメ。

  • 政治って政治をしたいと思わなければ、誰も政治家になんかならないし、なれないものなのでしょう。

  • 挫折からの再起は救いか、喪失か

  • この後
    龍彦と薫は
    どうなるんだろう?

  • なんだかせつない。

    でもやっぱり・・・不倫はいけません。


    総理大臣になるには、あんなことやこんなことが
    必要なの??
    お金と地位で動く、ありえなくもないかな

  • 私という運命について、を昔に読んですごく心に残ってたんだど…。この人の作品は、納得出来るようでスッキリしない気持ち悪さ(いい意味で)がある。

  • 政界を舞台に総裁候補の息子を主人公にしている。政治家の勢力争い、政治論はともかく、この主人公が白石作品らしく理屈と言い訳ばかりで行動は身勝手で支離滅裂。周囲が認め、女性にもてるってのが納得出来ない。ラストもとってつけた感じで、他の問題はどうすんだって感じ。設定は丁寧なんだけど、人物描写を欲張り過ぎてぼやける。

  • <<P214〜P217
     「プレゼントでいらっしゃいますか」
      龍彦は顔を上げ「ええ、ペンダントか何かないかと
     思って」と答える。その時、すうっと甦ってくる感覚
     があった。
     ・・・
      ペンダントを包装してもらい、龍彦は店を出た。た
     かだか十分ほどのことだった。濃紺の小さな紙袋を提
     げて正面玄関のタクシー乗り場まで急ぐ。袋の中でリ
     ボンのかかった固い箱が揺れてコトコト音を立てた。
     タクシーに乗って運転手に高円寺と告げて、龍彦はシ
     ートに身を埋める。改めて袋から同じ濃紺の包装紙に
     くるまれた箱を取り出し、真っ赤なリボンを見つめた。
      きっとこんなものは由香子にしても、ちっとも喜び
     はしないだろう。そう思った。
    ●プレゼントそのものはただの物で、意味などない。
     贈る人の気持ちにこそ意味があるのだと考えさせられた。 

    <<P223〜P224
      二階の宴会が終わりそうもないので、龍彦は寿司を
     腹におさめると席を立った。先に由香子のアパートに
     行ってるからと信子さんに告げ、店を出る。信子さん
     のポケットに無理やり五万ほど押し込んできた。岩田
     が困った顔で板場から手を振ったが、客の前で大声も
     出せない。振り切るように戸を引いて外に出た。
      龍彦はぶらぶらと商店街の細い通りを歩く。酒を飲
     んだのも思えば久しぶりのことだった。軽く酔って、
     腹もいっぱいになり、心地良い。
      ――金があるということは……
      これほど人間の精神を落ち着かせるものなのだろうか。
    ●こういう心情をはっきりと言語化するところがわかりや
     すくて好きだ。
     お金は確かに精神に安心をもたらす。

    <<P237〜P238
      あなたの失ったものが、ようやくあなたを解放して
     くれたのよ――由香子の言葉の中のその一節が自分を
     金縛りにしているのだ、と龍彦はしばらくして気がつ
     いた。
     ・・・
      ――少しまとまった金を今度由香子に渡しておこう。
     と思った。当分は忙しいが、時間ができたら一度ふた
     りで外国にでも遊びに行ってみよう。由香子がいろい
     ろなものを見なくてはならないのならば、自分はあり
     ったけの血から力でその手助けに努めよう。いつもあ
     の小さな店で忙しく立ち働くばかりじゃなく、もっと
     たくさんの世界を彼女に見せてあげよう。住まいもあ
     んな粗末なアパートではなく何処にいくにも便利で景
     色の美しい場所に見つけてやらなければ……。
      しかし、龍彦には分かっていた。
     自分がたったいま、大切なものをまたひとつ失ってし
     まったことを。

    <<P397〜P398
      龍三のことも、これからの政治についても、すべて
     は大いなる幻影のようだ、と龍彦は思った。
      そしてその巨大な幻影のわずかにほつれた隙間から、
     ささやかな一筋の光がいま滲み出してきているのが龍
     彦には見えていた。
     ・・・
      龍三が病院に来なかったことも、洋子が出馬を受諾
     させるため涙ながらにあんな嘘をついたことも、郁子
     が若狭の実家に泣きついて必死に妻の立場を守ろうと
     奔走していたことも、そのどれもが龍彦自身が犯した
     過ちの当然の報いにすぎなかった。同時に、死の淵を
     彷徨った龍彦に尚彦やみはるが優しかったことも、兼
     光純子や前島由香子が苦しかった時期の竜彦を懸命に
     支えてくれたこともまた、すべては龍彦自身が犯した
     過ちが生んだ結果にすぎないと思った。 そして、そ
     の純子が婚約し、その由香子が岩田の店を辞め、あの
     有村武史が立派な青年に成長していた。そうやってこ
     れまでの何もかもが、龍彦がいまそこから立ち去ろう
     としている巨大な幻影の一部と化して、過去の彼方へ
     と急速に遠のいているのが龍彦には分かった。
    ●動物に心があろうが無かろうが関係ない。もう自分は**
     のことだけを大事にして生きようとしているんだ。
     今は時間もお金も**のために費やしたい。**と比べて他
     のことが魅力的に思えなくなった。自分が冷淡なわけ
     ではなく、つまりそういうことなんだ。


    読了日:2010/08/31

  • 政治の世界と、精神の崩壊と。
    この結論は納得いかなかったなぁ。
    このひとの哲学は、無責任と残酷さがつきまとう。
    それを、切実なほど一直線な姿勢を隠れ蓑にしてちゃらにして。
    うー

  • 政治の世界が舞台。
    派閥やいろんな政治用語が飛び交い、頭がショート…。
    ついていけませんでした。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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