チョコリエッタ

著者 :
  • KADOKAWA
3.20
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本棚登録 : 217
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048734462

感想・レビュー・書評

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  • カフェオレ色の背景に、こどもがたどたどしく描いたような犬が1匹
    ぽつんとすわっている愛らしい表紙に惹かれて手に取ったのだけれど

    表紙のイメージほどには、ヒロインの千世子を可愛いと思えなくて。。。

    いくら「思春期の少女」という、自意識過剰で我が儘の似合う年頃であったとしても
    自分をチョコリエッタと呼び、誰もほんとうの名前を呼んでくれない、
    つまりは誰もほんとうの自分をわかってくれない、と憤り
    人間なんてまっぴらだから、「犬になりたい」と進路調査票に書き、
    亡くなった母のかわりに20代を棒に振って育ててくれた叔母が
    結婚して自分から離れていくことを許せない千世子に、
    「だいっきらい!」とか「まっぴら!」を連発してばかりいないで
    自分のために動いてくれる人には、もう少し謙虚になろうよ、と言いたくなってしまう。
    ああ、でもそれは私が頭の固い大人になってしまったからかも、と思うと
    切ないやら悩ましいやら。。。

    自己顕示欲のカタマリであっても、反対に自己嫌悪のどん底にいても
    どこかに人間としての奥ゆかしさみたいなものが感じられる人が好きな私には
    チョコリエッタこと千世子は、自由すぎたのかもしれない。
    (本人は自由だなんてカケラも思っていないと思うけれど。)

    『道』での無垢な演技が忘れられないジュリエッタ・マシーナから名前をもらったという
    千世子の犬、ジュリエッタのつぶらな瞳が目に浮かんで、表紙の小犬に重なり
    カフェオレ色の背景から微妙にはみ出したタイトルの『チョコリエッタ』の文字が
    まさにヒロインにぴったりな、少女の春から秋にかけての物語。

    • asagaosukiさん
      まろんさま

      先日はコメントありがとうございました。

      あんなにおほめ頂いて、うれしいです!

      まろんさまの本棚は読みたくなる本...
      まろんさま

      先日はコメントありがとうございました。

      あんなにおほめ頂いて、うれしいです!

      まろんさまの本棚は読みたくなる本とレビューがたくさんあります。

      こちらの本を早速借りてきました。

      楽しみですo(^-^)
      2012/10/16
    • まろんさん
      asagaosukiさま☆

      こちらこそありがとうございます♪
      早速『チョコリエッタ』を借りてきてくださったとは!
      私は大人げない大人なので...
      asagaosukiさま☆

      こちらこそありがとうございます♪
      早速『チョコリエッタ』を借りてきてくださったとは!
      私は大人げない大人なので、千世子の我が儘を受け止めきれなくて
      息切れしながら読んでいたところがあるのですが
      asagaosukiさまは、落ち着いた、澄んだ気持ちでレビューを書かれている方なので
      この本を読んでどんなレビューを書いてくださるのか、わくわくしてしまいます♪
      あ、こんな風に書くとレビューを強要しているかのようですね、ごめんなさい(>_<)

      私も、asagaosukiさまの本棚には、今まで全く知らなかった作家さんの
      いかにも私好みの作品がいっぱい詰まっていて、
      読みたい本リストに必死で書き写しました(*'-')フフ♪

      2012/10/17
  • 私が或る一匹の犬だった季節はそうして終わった。

    私はチョコレエッタ…嘘、宮永知世子なんていうダサイ名前。
    知世子が幼稚園年長の夏休み、山への家族旅行へ行く途中
    事故に遭い、母は亡くなった。
    子犬のジュリエッタと大して変わらないレベルだと言って、
    母がふざけてそう呼んだ…チョコリエッタ

    進路調査に『犬になりたい』と書いて呼び出しをくらった…。
    私は犬のチョコリエッタ…。
    幼い頃、とても辛く厳しい経験をした知世子。
    『死にたい』『殺されたい』からっぽの心に苛立ちだけが
    つのる高校二年生の夏。
    映画研究会OBである正岡の強引な誘いで、
    彼が構えるカメラの前にチョコリエッタとして立つことに…。

    思春期の多感で繊細な少女の揺れる心。
    山での事故・母の死から逃げてたのかな
    あの時、知世子も死んだんだ…。
    私は、チョコリエッタっていう犬なんだ…。
    でも、あの夏の正岡と過ごした日々が、
    チョコリエッタから解き放たれて行った。

    不思議な文章で、ふわふわと掴みどころがない
    不思議な雰囲気の物語でした。
    表紙のイラストとタイトルの文字がとっても可愛い

  • 表紙のほんわり感とは全く違った、結構ハードなストーリーでした。
    (以下ネタバレ含む感想です)



    幼稚園の時に家族旅行中に事故で母を亡くした知世子(ちよこ)。自身も父も重傷を負った。

    旅行中に犬のジュリエッタの世話と留守番に来てくれた父の妹、霧湖ちゃんは、それから十数年就職も結婚もせず、家のことをして、母がわりをしてくれていた。

    亡くなる前に家に来た犬、「ジュリエッタ」も知世子が高二の二月に亡くなった。
    霧湖ちゃんは、自分がこの家にいる必要性がないことをつぶやく。

    知世子は「犬になりたい」と進路希望に書き、担任に呼び出され、あながちうそでないことを見抜かれる。

    チョコリエッタ。母がジュリエッタと遊ぶ私を呼んだ、私の本当の名前を誰も呼ぶことはない。

    いらいら、閉塞感でいっぱいになりながら、先輩の正宗と再会し、夏の間、「チョコリエッタ」としてのフィルムを撮ることになる…

    …フェリーニの「道」が随所に引用されている。
    知らなくて、「道」を観てもいいし、観ている人はいろいろと深読みできる作品と思う。

    私が一番に感じたのは、知世子の両親が「親」ではなく、「恋人同士」だったのだなあ、ということだった。

    今から時間をかけて親になっていくところを、急な事故でパートナーを失い、その悲しみから立ち直れない父は、父になれない。

    ペットとこどものいとしさを混同してしまっていた母の思い出は、知世子の一番幸せな部分にしまわれている。

    そのため知世子は、無垢で、子犬のように従順な存在に近づくことにあこがれていたのかもしれない。

    でも多分、それから抜け出さなければ前に進めないのも解っているからこそのイライラかな、と思った。


    知世子にとって、正宗にとっての夏は、ジェルソミーナを失って慟哭するザンパノになるための、そして前に進むための夏だったのだろうか。
    そう思った。


    余談ですが、この作家さんの作品を読むとき、すごく情景が目に浮かびます。

    そして私は、大島弓子さんの絵でイメージしてしまいます。

    厳しい心情を描きながら、なんだかふんわりした感じを失わない所が共通してるからかな?

    • まろんさん
      深くて、共感に満ちていて、とても素敵なレビューですね!

      千世子の両親が「親」ではなく「恋人同士」だった、
      親として成長途上であったところに...
      深くて、共感に満ちていて、とても素敵なレビューですね!

      千世子の両親が「親」ではなく「恋人同士」だった、
      親として成長途上であったところに妻が急死したことで、父は父になれなかったのだという指摘、
      千世子はジュリエッタのような無垢な子犬として
      亡き母に抱きしめられたかったのだという洞察に
      おお!と唸り、感激しました。

      映画をぼんやりと観るばかりだった側から
      カメラを構え、世界を自分の目で捉えてフィルムに焼きつける側になった千世子は
      あの夏を境に、少しずつ大人になっていくのでしょうね。
      asagaosukiさんのレビューを呼んで、もう一度読み返したくなりました。
      2012/10/28
  • チョコリエッタの一夏の話

  • ささくれた幼い心に、ささやかだけど確かな水をあげて

  • カバーイラスト/門馬則雄 ブックデザイン/鈴木成一デザイン室 スチール写真提供/ベータフィルム

  • 2016.11.29 再読。

    チョコでもないし、犬の話かと言うとそうでもない。表紙を開いた中には、イタリア映画の『道』をキーワードに、映像化された景色や仕草が鮮明に浮かび上がっている。

    犬になりたい女の子が主人公だが、何故犬になりたいのかとか、人間じゃダメなのかとか、もやもやとしているところを見ると分かるようで分からなくて質問してみたくなる。
    話にはっきり緩急があるわけではない。
    どちらかと言うと、ある一定期間に主人公が感傷的に何かを捉えようとしていたことを切り取ったかのような、淡々とした語りが続く。
    少しやさぐれた気持ちの時に読みたい一冊。

  • すこし、読むのが遅かったかな。
    髪の短い女の子の、少し寂しげに目を伏せた横顔のイメージが頭から離れない。

  • 資料ID:W0121330
    請求記号:913.6||O 77
    配架場所:本館1F電動書架C

  • 別に悪くはないんだけど、好みではありませんでした。

    冒頭の文章は心掴まれた感じで、あ、これ好きかもって思えたんだけど途中から飽きてきた感じ。

    自分の事をチョコリエッタと呼ぶ犬になりたい女の子、宮永知世子。まず彼女に感情移入が出来ませんでした。
    不思議なキャラクターとヨーロッパの映画の登場人物などを織り交ぜて、10代の若者の繊細さや非日常的な雰囲気を演出したかったのでしょうが、何か無理してる感じが否めませんでした。

    ストーリーは好きな部類だとは思うんですが、文面との相性が悪かったのかな。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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