夜はもう明けている

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 30
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048735193

感想・レビュー・書評

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  • 「夜はもう明けている」(駒沢敏器)を読んだ。
    
一人ひとりが胸の内に抱えているその深淵を具に描きだす力量が凄まじい。
こんなにも深くて暗いものをひとは隠し持ち、互いを傷つけ合いながら生きているのか。
    
容赦なく吹きつけてくる大風をまともに受けながらわたしはこう思った。
《30年前の自分がこれを読んだらあるいは無事には済まなかったかもしれない。65歳の今だからこそ慄きながらもやり過ごせたのかもしれない》と。

    最後の最後に仄見える灯り。
    
自分が息を詰めて読んでいたことに気がつく。

  • 2016.7.28
    皆心に闇を抱えていて、なんとかそれと折り合いながら生きているんです。

  • 五つの章すべてに、少しずつ登場人物をだぶらせながら語られるストーリー。心の中に溜まり、固まってしまった、いいようのない悲しみ、暴力の塊。それに引きずられるもの、浄化され新たな一歩を踏み出すもの、さまざま。ただ、生硬にすぎるというか、そのまま描かれすぎるというか。もうすこし噛み砕いて、物語としてなめらかな方が、受け止めやすいようにかんじた。/「自分で感じたことを、感じなかったことにしてない?」/自分を支えてきた理由は言い訳ばかりで、人に対しては何も与えていない。体から力が抜けて、何かが底からはい上がってくる感じがした。/「大切なのは、そういうことではない。言葉がどうとか、誰の責任だとか、そういうことではないです。自分に魂が残っていることを、僕は奪われることでわかったんですよ」/「それまでの僕は、崖の上の日本兵でした。そういうことです」/「いちど始まった暴力は、心が空になるまで途中では止まらない、という話ですか」/でも苦しさから逃れようとして自分や相手を追いこむと、そこに何かが入ってきます。それはとても悪い存在です。/どの報道のなかにも、沖縄の国道が毎日のように渋滞している事実を伝えるものはなかった。/「何かの恐怖にさらされたとき、我われは精神の核とでも呼べるものとのつながりを失ってしまう。それこそが、テロリストたちが狙うものだ。我われはそもそもどのような人間であるのか、それを忘れさせてしまうのが彼らの真の企てであり、我われを人間たらしめている精神から遠ざけてしまうことが、彼らの快感であるのだ。」

  • 帯の「こんなにも大きな闇を抱えながらどうして人は生きていけるのだろう」という謳い文句、そして、作家が現代作家という事で衝動買いをしてしまった。
    文章のテンポの小気味良さ。
    ポップさを保ちながらも通低している一種の暗さ。
    喪失感を与えながらも主人公のこれからに対する期待の持たせ方。
    これらは全て村上春樹を想わせる。
    もっとも、春樹のようなピョーンと空を突き抜けてしまうような独創性はない。
    そういう意味では評価は低くなってしまうのか。残念。
    しかし、デティールも繊細に描かれていて、作品としては秀作と言って良いであろう。
    処女作品でここまで書けるなら、、、という期待をもたらす作品。
    次回作を早く目にしたい。

  • ユタが出るとなんか引くわ。ひっかかるちゅーか、なんか。安易?

  • 内側にはいっていく作品。詰め込みすぎな気がしたかな。

  • 孤独、闇、懺悔。それらを抱え込んだまま、あえて僅かな幸せを求める人たちの物語。それは、どんなきれいな恋愛小説よりも、どんな感動的なラブストーリーよりも、信用できる物語だと思う。ひとつ言えることがあるとすれば、この物語の未来に僅かでも幸せが待っているかどうかは、読者自身つまりあなたが決めることである。

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著者プロフィール

1961年東京都生まれ。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、作家・翻訳家に。主な著書は、小説に『人生は彼女の腹筋』(小学館)、『夜はもう明けている』(角川書店)、ノンフィクションに『語るに足る、ささやかな人生』(NHK出版/小学館文庫)、『地球を抱いて眠る』(NTT出版/小学館文庫)、『アメリカのパイを買って帰ろう』(日本経済新聞出版)、翻訳に『空から光が降りてくる』(著:ジェイ・マキナニー/講談社)、『魔空の森 ヘックスウッド』(著:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/小学館)、『スカルダガリー』(著:デレク・ランディ/小学館)など。2012年逝去。

「2022年 『ボイジャーに伝えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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