オリンピックの身代金

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738996

作品紹介・あらすじ

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。

感想・レビュー・書評

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  • いやあー、やっと読み終わった!!
    お疲れ様でした!


    すごいボリュームでしたー長かったー
    でも飽きることなく読めました。
    さすが奥田さん。
    (というか伊良部先生シリーズとの差よ…
    書いたの同じ人と??といつも思う笑)


    オリンピックを妨害するという脅迫状と共に起こる爆発事件。


    いろんな視点で物語は進んでいきます
    その事件を追う落合の目線では、まさに事件そのものを追っていて臨場感があります。
    無線機掲載車はほとんどなく、公衆電話で定期連絡を入れるような時代背景や、
    事件の規模が大きすぎ、刑事課と公安とが対立し混乱する様子など読みごたえがありました。


    方や国男の目線では、事件の背景が描かれています。東京と秋田の暮らしぶりの差、いや東京でも貧富の差は凄く、読んでいるとあまりに辛く、国男を応援したくなります。。。


    また須賀の目線では、客観的に現状を見ることもできて面白い。
    時系列が前後するので若干混乱するときがあったけど、事件全体を深く読める仕組みでした。


    事件そのものも読みごたえはありますが、
    その時代の東京の様子や、いろんな階級の人たちの暮らしぶり、考え方がかなり細かく書かれていてこのボリュームになるのも納得。
    まるで目の前で見ているような感覚で読んでいました。なんか読んでて砂煙で息が苦しい気がしたし。笑


    オリンピックに向けて本当にここまでやってたの?と疑いたくなるような施策もあって、、ヤクザはオリンピック中東京からいなくなったとか、洗濯物も干してはいけないとか。どこまでがフィクションなんだろ?大げさじゃなくその頃の日本はそんな感じだったのかな…?


    他の方のレビューで気づいたけど落合は『罪の轍』にも出てる刑事だったそうで。
    全然気づかなかった(^^)笑


    ドラマ化もされてるんですね!
    ドラマだともっとスピード感がありそう!!


    そんな私は終盤のいいところで
    子どもたちに邪魔され、
    ちょこちょこ読みになってスピード感が減速してしまったのがもったいなかったなー
    ガッツリ時間とって読むべきでした
    (続きが気になって子供がいる時に読み出した自分が悪い)笑


    でも読みごたえ抜群の一冊でした!

  • 疲れた〜

    以前に『罪の轍』を読んで面白かったので、評判の良い新作『リバー』を図書館に予約したんですが、かなり待ちそうだったので奥田英朗さんのもう一つの代表作のこちらをサラッとやっつけちゃおうと思い手に取りましたが、なんと単行本上下段で500ページ超という大作
    大変でした

    物語の舞台は昭和39年、東京オリンピック開催を間近に控え、沸き立つ日本
    全国民が期待に胸を膨らませ、戦後の復興を感じる建設ラッシュの中で、その表と裏、光と影、上と下をこれでもかとしつこく描写していきます
    「もういいわ!」というくらいに延々と、消費される命について語ることで、オリンピックを人質にとった犯人の動機に説得力を持たせたかったのだと思います

    そして2回目の「東京オリンピック」を終えた今の日本は、命の不平等を嘆いた爆弾犯が夢見た世界に近づいているのだろうか
    そんなことを考えさせられました

    • ひまわりめろんさん
      おはよ〜

      そもそもブクログ半眠状態だったからねー
      気にすな!

      というか、なぜそれをこのレビューに?
      あーコロナでオリンピック無観客になっ...
      おはよ〜

      そもそもブクログ半眠状態だったからねー
      気にすな!

      というか、なぜそれをこのレビューに?
      あーコロナでオリンピック無観客になったからかー(たぶん違う)
      2023/04/12
    • みんみんさん
      地味に謝ってみようと思って\(//∇//)
      わたしも病気持ちだからお互い元気に読書道突き進んで行こう〜♪
      地味に謝ってみようと思って\(//∇//)
      わたしも病気持ちだからお互い元気に読書道突き進んで行こう〜♪
      2023/04/12
    • ひまわりめろんさん
      何するにも健康第一やけんね
      それでなくともあちこち痛み出す年頃だからね
      なが〜く楽しもうね
      何するにも健康第一やけんね
      それでなくともあちこち痛み出す年頃だからね
      なが〜く楽しもうね
      2023/04/12
  • コロナウィルスの蔓延で2020東京オリンピックが1年延期になったと発表になった今日! この本を開いた
    別にそれを意識したわけではないのだが、奥田英朗さんの「罪の轍」を読んで以来、ずっと気になっていた本

    読み始めて、気がついた。捜査一課五係 落合昌夫刑事、岩村、仁井
    「罪の轍」と同じ面々、あれが昭和38年、それから1年後、東京オリンピックを1ヶ月余り後に控えた8月、立て続けに起きた警察関係者宅を狙った連続爆破事件( 世間的には小火騒ぎとされていたが)

    敗戦からの復興の証として、日本が国際社会の一員として全世界に認めてもらうために、国民挙げて準備したアジア初の東京オリンピック

    何もかもが豊かで、はなやかで、生き生きとして輝いて、歩いている人も幸せそうで、祝福を独り占めしているような東京

    方や東京オリンピック準備のために集められた東北や地方の貧しい農家の出稼ぎ労働者の悲惨な現状。工事現場で命を落とそうとも新聞に名前すらのらない。労働者の命とはなんと軽いものなのか。世の中の発展から忘れ去られたような貧しいふるさと東北の村々

    東京大学大学院経済学部学生、目鼻立ちが整った歌舞伎役者のような優男。誰から見ても申し分のない将来を嘱望された島崎国男だったが・・・

    学業の能力に恵まれた人間は、それを天賦の才として当たり前のことのように享受する人間と、その才をまるで申し訳ないことのように自分を卑下する人間がいるらしいが、国男はまさしく後者の人間だった

    工事現場で亡くなった兄の代わりに日雇い労働をすることにより、社会の矛盾に目覚めていく
    オリンピック開催を口実に、東京はますます特権的になろうとしている。黙って見ているわけにはいかない、一矢報いなければ
    度々の爆破、最後通告というべき、身代金8000万円の要求とオリンピック開会式での爆破予告

    国家の威信にかけて、絶対に阻止しなければならない警察
    ここでも刑事部と公安部の確執が顕著になり、度々の失態であと少しというところで、取り逃がし、最悪の局面にまで持ち込まれてしまう
    10月10日開会式、選手団も入場し、いよいよ最終聖火ランナーが、 聖火台に・・・

    2段組521pの大長編にもかかわらず、ページを捲る手が止まらなかった
    しかし、読んでいながら、ずっと胸が苦しかった。切なかった
    労働者の希望のないその日暮らしの現状も辛かった。国男が労働者の側に立ち、何とかしたい、世の中を変えたいというのは、まちがいではないのに、その方法があまりにも短絡的だった

    「おめは、東大行くぐらい頭さいいんだがら、世の中変えてけれおらたち日雇い人夫が人柱にされない社会にしてけれ」
    という塩野の言葉がいつまでも胸を締め付ける

    国際的に認めてもらうために、日本の底辺の部分は見せられないと、屋台を一掃したり、ヤクザをその期間、どこかへ移動させたりとかいろんな画策があったらしい
    北京やリオデジャネイロオリンピック開催に向けて、躍起になってマナー向上の啓蒙をしていたニュースを思い出し、昔は、日本も同じだったんだと思った

    やはり、奥田英朗さんは素晴らしい。読者を惹きつけて離さない

  •  最近ドラマ化と文庫化されて、話題が再燃してきたので私も便乗。2020年開催予定の東京オリンピック効果ですねえ。

     東大大学院生という、恵まれた立場にありながら、オリンピック建設の人夫として働こうとする島崎が、国から金を取ろうと決心するこころの描写が見事だった。

     オリンピック建設場での苛酷な作業の描写や、憤っても仕方がないとあきらめてきつい作業をすることを受け入れる人夫たちの描写は、読んでて心が痛かった。
     しかし、これって、過去に本当にあったことだろうし、今だって少しはあることなんだろう。
     いつだって、弱いものは強いものに搾取される。金のないものは、よっぽどのことがない限り、這い上がれない。そして、死んでも悲しまれない。生まれて10年ほどで、男は出稼ぎに出され、生まれて20年ほどで、女は働き手として農村へ嫁に出される。
     何のために生まれてきたのか、と叫ばずにはいられない。
     けれど、1969年は、こんな人たちであふれていたのか・・・

     今の平和で平等で豊かな日本は、昔の人たちの努力があったればこそ。それに思い至った作品だった。

     あと、ヒロポンこと、覚せい剤には手を出さないようにしないと・・・

    • 沙都さん
      あやこさん
      コメントとフォローありがとうございます。
      こちらからもリフォローさせていただきました。またレビュー参考にさせてくださいね。
      ...
      あやこさん
      コメントとフォローありがとうございます。
      こちらからもリフォローさせていただきました。またレビュー参考にさせてくださいね。

      この本についてですが、華やかに思われがちな東京オリンピック時の裏にこんな人々の犠牲があったのか、と思うとまた違った見方をしてしまいますね。

      最近も非正規労働だとか、ブラック企業だとか、貧困家庭だとか、形は変わってもこの本にあるような、格差や搾取は残り続けているのだな、なんてことを改めて考えてしまいました。
      2013/12/28
  • 物語の舞台は東京オリンピック開幕直前の昭和39年。僕が生まれる10年前、亡き父母が主人公と同世代だった頃の話。新幹線やモノレールが開業し、日本武道館や代々木体育館が竣工、首都高速の整備もすすみ、自動車の保有台数はようやく100万台に達したという頃、戦後復興後ようやく1等国の仲間入りを果たした言われるその姿を世界に示し認められたいとすべての国民が願う中、主人公の島崎国男は警視庁を相手に連続爆破事件を引き起こす。華麗なる一族の同級生や、東京近郊の団地生活、建設現場の最底辺で過酷な労働を強いられる人夫や秋田の貧農地域の現実を描くことで、昭和の最盛期の盛り上がりや期待感、当時の庶民が憧れの生活、貧富の格差やヒエラルキーを見事に表現しながら、息つく暇のない、主人公の犯行と逃走劇が繰り広げられ、ページをめくる手を止められずにいっきに読了。ひさしぶりに夜更かしをしてしまいました。最近はKindleで読むことが多いけど、内容的にも物理的にも分厚く読み応えのある本はやっぱりハードカバーで読むのも悪くないなと思いました。

  • 先日、爆破事件で潜伏していた犯人が、死の間際に本名を明かしたというニュースがありました。

    まだ終わっていないのかもしれません。これらの事件は。


    東京オリンピックから60年。
    世界は巨大なIT企業に包囲され、富の格差は縮まっていないように思います。

    マルクスもレヴィストロースもよくわかりませんが、社会主義国家がどうなったのかは、歴史が目撃しています。平等な社会とは何か、改めて考えさせられました。

    悲しいニュースはなくなりません。
    高度経済成長はもはや望めそうにありません。
    今日よりも明日は豊かになる、と思える時代はもう来ないのでしょうか?

    疫病の流行、不景気、自然災害、戦争…。
    資本主義すら今、世界中で行き詰まっているように見えます。
    でも、だからといって本書のように暴力で何かを人質にとるのではなく、今の子どもが希望を持てる社会にすることが我々の務めであるはず、と思いたいです。

    本書はそのような思いで闘った警察と公安の記録です。

  • 2段組で500頁、いったい何文字なんだ!
    っていうぐらい濃厚、かつ飽きさせない緻密さ、ミステリーってここまでやらないと本当は面白くないんじゃないかってくらい、量とともに質の高さが光る作品でした。
    この内容は忘れない、ずっと覚えてられる自信がある。

    こんな話、本当にあった訳では無いと思うけど、もちろんフィクションだって書いてあるけど、国家プロジェクトであるオリンピックの裏には、実は表にできない事件、事故なんかはあるんじゃないかって当然考えちゃうね。それくらい、何かリアリティがあるミステリーだった。

    それとともに、現代にもつながるような部分がある。2021のオリンピックや万博なんて1964年のオリンピックと何が違うのか。官と民、資本家と労働者、貧富の差、表と裏、、、どんなに世の中かま複雑化して様々な因果が絡み合うけど、極論、二項対立で考えるのが人間誰しもわかりやすいし、伝わりやすい。
    これから先も、色褪せない議論がこの小説は伝えてくれると思う。

  • 久しぶりにページを捲るのがためらわれました。ああ、もうすぐ捕まってしまう。テレビで見て大体は分かっているのに、どうか無事でいてくれないかと願ってしまいました。
    村田役は笹野さんのはまり役ですね。松山ケンイチは歌舞伎役者にはとうてい見えないけれど、さりとて誰が国男の虚無感を演じられるか
    というと、誰も浮かびません。

    読後もずっと国男のことばかり考えていました。何も語らずに去ってしまったからでしょうか。

    奥田さんはうまいなあ。時系列をずらしたのも、読者の心を鷲づかみする効果があったと思います。奥田氏とお近付きにならないでよかった。愛してしまいそうですから(笑)。

  • 1964.10/10東京オリンピック開催日、遡る夏の日から始まった物語はまさに10/10に向かって孤独なテロリストの東大院生 島崎と妙な縁で片棒を担ぐことになったオッサンすりvs国家の威信を賭けた公安 警察との息詰まる攻防戦が展開される。

    徐々に狭まる包囲網を何度もくぐり抜けて遂には開会式当日の佳境を迎えて さて決着は如何に?

    話としては面白おかしく構成されていて上下2段組500数十頁の大部作品だけどスイスイ読み終えた。

    当時の背景もよく書き込んであり あるある気分で首肯しながら楽しみました♪

  • 実に面白かった。
    上下巻分かれた文庫で800頁以上あったが、クライマックスに向けて読む手が止まらなかった。

    戦後復興の象徴として、誰しもが成功を望み期待した東京オリンピック。
    その成功には建築現場の労働者の犠牲によって成り立っているという視点にフォーカスをあてた小説。

    主人公の東大生、島崎国男、
    建設現場で虫けらのように働く兄、きヒロポンの過剰摂取により死亡したことがわかった、兄と同じ労働を経験するにつれ、また実家秋田(かなりのど田舎)に帰省したことにより 貧富の差、不平等間感じ、オリンピックというものに憤りを感じ、ダイナマイトでのオリンピック妨害へ という犯罪に進んでいく。
    途中で相棒となるスリ師の村田とのコンビネーション、友情もよかった。何回も捕まりかけるが間一髪のところで逃げ切る2人、
    最後の聖火台爆破も応援したくなってしまった。 

    右胸を打たれ救急搬送されたが、それ以降国男が死んだのかどうかは描写されず、残りの数十ページは、同級生の忠が勘当をとかれて実家に帰ろうとする描写、国男に想いを寄せてた良子が友達とバレー観戦に向かっていく描写であった。
    最後の1行も、「日本中が待った東京オリンピックがいよいよ始まった」一行。
    国男がその後どうなったかではなく、こうゆう描写を描くことで島崎の無念さや虚無感を増大させた。

    島崎の視点、警察の視点、同級生忠の視点など、色々な視点から書かれており、時系列も前後しまくるが なるほど裏ではこうゆう動きだったのかと伏線回収のようでとても楽しかった。

    久々に読み応えのある素晴らしい作品でした。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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