- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048967709
作品紹介・あらすじ
死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までの
フリなのだと信じるようにしている。のどが渇いてる時の方が、水は美味い。
忙しい時の方が、休日が嬉しい。苦しい人生の方が、たとえ一瞬だとしても、
誰よりも重みのある幸福を感受できると信じている。
その瞬間が来るのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。
その瞬間を逃さないために生きようと思う(九十九「昔のノート」より)
芥川賞受賞作『火花』、4月公開の話題の映画の原作小説『劇場』の
元となるエピソードを含む100篇のエッセイからなる又吉文学の原点的作品
『東京百景』が7年の時を超えて、待望の文庫化。
18歳で芸人になることを夢見て東京に上京し、自分の拙さを思い知らされ、
傷つき、苦しみ、後悔し、ささやかな幸福に微笑んだ青春の軌跡。
東京で夢を抱える人たちに、そして東京で夢破れ去っていく全ての人たちに
装丁を一新し、百一景と言うべき加筆を行い、新しい生命を吹き込んで届けます。
感想・レビュー・書評
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又吉直樹『東京百景』角川文庫。
まるで30年前の日本のあちこちでちらほら目にした、人生を諦め、世の中を憂う文学青年がしたためたようなネガティブなエッセイ100編と文庫書き下ろしエッセイ1編を収録。
高校卒業後にお笑い芸人を目指して上京。なかなか上手く行かない鬱屈とした青春に過去を呪い、自身を責める。本当にこの人は真剣にお笑いを目指したのだろうか。普通でありたいと吹聴しながら、実は破天荒を気取っているだけではなかろうかと思うような文章が並び、読むと気が滅入る。
『花火』は非常に良かったが、『劇場』は一生懸命ブンガクしようとしていて好みではなかった。本作はさらに好みではない。
本体価格660円
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又吉さんの本は初読み。若林さんの本を読んで、芸人さんのエッセイって面白いかもと思い、手を出した1冊。結果、ここにもとんでもない自意識過剰が隠れていた。人によって日常の感じ方がこんなにも変わることが衝撃。自分にとってはただ何気なく過ぎ去っていることもこうやって色がついて見える人もいると思うと、もしかしたら自分はもっと人生を楽しめるのかもしれないと思いました。人の考え方に触れて自分の視野が広がる、これぞ読書!
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芥川賞作家、又吉直樹さんのエッセイだ。
東京の街に暮らし自分の人生を振り返り、これからの行き先を探りながら東京の街と人を綴る。
ピースの相方、綾部さんのことはあまり出てこない。
そのわけは最終章で明らかになる。
このエッセイは自分を見つめ自分の生き方を信じて歩く人への応援歌だ。 -
文庫化に際した書き下ろしを読みたいが為に本書を購入しました。
胸アツでした。
書き下ろしの為だけに買ってよかった。
その価値十分でした。
表紙の、のんちゃんも素敵。 -
お笑い芸人にして芥川賞作家、又吉直樹のエッセイ集。
又吉は、高校卒業後、1999年に上京し吉本興業の養成所に入り、2000年にデビュー。最初のコンビを解消後、2003年にピースを結成。芥川賞は2015年に受賞。本書の単行本での発行は2013年のことなので、芥川賞受賞前のことである。
芸人として、すぐに売れた訳ではなく、売れない期間中はメンタル的にかなりきつかったのではとうかがわせる表現も、エッセイ中には多い。
【引用】
日々は敗走につぐ敗走、七転八倒、心身挫傷、やがて泣き言も尽き自分の才能の無さと精神の脆弱さに辟易し、見るに堪えない嘔吐を繰り返しながらなんとか生きていた。
【引用終わり】
一方で、最後には開き直った表現もある。
【引用】
鼻水撒き散らしながら進めるところまで進んでみて、だめだと思えば逃げれば良い。それだけのことだ。僕達は誰かを喜ばすために生きているわけではない。あなたも。きみも。あいつも。おまえも。ただ生きている。その辺に咲いている花と同じ。人間を喜ばすために咲いているわけではない。ただ咲いているだけ。日光を浴びて、雨に降られてただ咲いている。
【引用終わり】
本書を読んでみて、又吉直樹という人はナイーブで過剰なくらい自意識が強い人だと思った。そういった人が芸人の世界でやっていくのは本当に大変なことなのだろうな、と思う。ご本人も書いているが、この「東京百景」を書くことが、逃げ場所になっていたのだろう。だから実際には「東京百景」ではなく、「東京での又吉直樹百景」である。 -
先日、有楽町で時間を持て余し、ふと思い立ってプラネタリウムをみてきた。
「東京の天の川を忘れない」というタイトルが上映中で、宮沢賢治、中原中也、竹久夢二の3人がかつて東京でみた満天の星空を、彼らの小説や詩や絵になぞらえて再現するという、いかにも私好みの素敵な作品だった。
ナレーションが又吉直樹さんで、私は彼の少しぼそぼそとしつつも心地良い低音に浸りながら、「そういえば『東京百景』というエッセイが出版されていたなぁ」とぼんやり思い出していた。
そうしてアートと文学と星空を堪能しきった私は、ほとんど恍惚としたままその足で書店に向かい、この本を購入した。又吉さんがみてきた東京もまた知りたいと思った。
とても面白かった。下北沢での泥を啜るような貧乏暮らしだったり、新宿ルミネの舞台だったり、五日市街道の朝焼けだったり、晴海埠頭でのキスシーンだったり、東京で過ごした軌跡がたくさん書き残されている。
特に、おそらく「劇場」の元になったのだと思われる池尻大橋の小さな部屋で恋人と同棲していたときの話と、阿佐ヶ谷ロフトで西加奈子さんをゲストに『太宰ナイト』をしたときの話が好き。
東京!って感じがする(それにしてもこの「東京!」っていう感覚、どう言葉にしたらいいんだろう?)。
くりかえし朝が来て夜がくるように、こんなに大勢の人間がひしめく東京では、飽くことなく毎日のように奇跡が生まれては消えていくのだろうな。
読みながら、私の百景を決めるとしたらどの東京を取り出すだろうと、これまで東京のあらゆる街で過ごしてきた、あらゆる風景や思い出を回想したりした。
迷い疲れた新宿駅の地下で食べたドトールのケーキセット、夜明けの歌舞伎町、背伸びしてはいった代官山のカフェ、はじめての竹下通り、朝露の降りた井の頭公園、神宮外苑の花火大会、亀有の商店街ゆうろーど、天現橋交差点。
断片のような記憶にたくさんの記憶が宿っている。
東京はすっかり生活の場になったけれど、星空にとってかわった街明かりを、私は今でも飽きることなく夜ごとベランダから眺めている。
東京はやっぱり楽しくて、優しくて、薄情だ。なんやかんや言ったってきっと死ぬまで東京に魅了され続けるんだろうと、諦めにも似た一途さで確信している。 -
やっぱり又吉さんの考え方は面白いですね。
「みんなが当たり前にできることができない。」
「不器用」「上手くいかないことだらけ」
うん、分かる分かる。
俺も百景はないけど、好きな光景はある。
まとめておくことで、誰かが面白いというものになのかも。
まずはやってみよう。 -
普段からこんなに多くの事を考えてたら、生きにくいのではないかと思ってしまう反面、それこそが又吉さんを作り上げる一つ一つなのだなと、改めて彼の凄さを感じます。
思った事や、見た景色、それらをこんなにうまく言葉に出来たら毎日楽しくてしょうがないのではないでしょうか。
目の前の事に真剣に向き合うっていうのはこういうことなのかな、というのが私の感想です。
しかし、さすが芸人で面白いです。
好きなエピソードは、
◆原宿を歩く表情達
◆吉祥寺の古い木造アパート
◆一九九九年、立川駅北口の風景
◆高円寺の風景
◆世田谷公園の窒息しそうな風景
◆下北沢開かずの踏切
◆ルミネtheよしもと
◆蒲田の文学フリマ
◆車窓から見た淡島通り…等
図書館でゲットなので、読み返しの為に購入しようと思います。
「おすすめはできないでちゅ」
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東京に住んでなくても面白かったです。東京に住んでて場所がわかればさらに面白いのかもしれないです。
現実と空想とお笑いと変人が織り交ぜられてる感じ。
自分でもたまにある現実に空想が入り混じり、ハッとするあの感覚。そんな感覚に又吉さんの独特の感性がクスッと笑わせてきます。
100編の短編なので隙間時間や移動時間にオススメです。 -
寝る前に毎日1話ずつ読もうと思ったのに、ついつい数日で読んでしまった。。
これも東京の風景なんだなぁって思った。