月と散文

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048971317

作品紹介・あらすじ

いろんなものが失くなってしまった日常だけれど、窓の外の夜空には月は出ていて、書き掛けの散文だけは確かにあった―― 16万部超のベストセラー『東京百景』から10年。又吉直樹の新作エッセイ集が待望の発売!

感想・レビュー・書評

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  • YouTubeで又吉さんが本全般について熱く語っていたので読みたくなりました。
    『はじめに』は、『子供の頃、作文を書いたら両親が笑ってくれた。気の利いたことを書いたからではない。文章の至るところに「はずかしかったです」という言葉が並んでいたからだ』と、又吉さんの人柄がとてもよくわかるエッセイの1ページ目。2ページ目は「恥ずかしい」について芥川賞作家らしい展開となっています。

    テレビで観る又吉さんのイメージどおりのエッセイ。どれを読んでも面白かったです。「私も!」とか「うちの子より個性的な小学生やってんな」とつっこみながら一気に読みました。優しいながらも自分優先なお父さんや、命懸けの指導をしてくれた先生、アメリカへ行った相方、元旦に朝日を一緒に見に行った中学時代の友人(そしてオチあり)などを始め、子どもの頃の思い出話や、日常の話、言葉遊びや想像の話など、てんこ盛りでした。
    副業OKとか二刀流とかいう時代に、芸人さんだからとか、アイドルだからって、著者を分けたらもったいない!
    考えたら、芸人・漫才師って、話を作って人前で話してお客の反応を見て、修正して、の作業を繰り返すから、小説やエッセイを書けるポテンシャルのある人が潜在的に多いのかもしれません。

    又吉さんの本への愛はすごいです。今年は色んな本を読んで、又吉さんのように読んだ本をすべて面白いと思えるよう、本と向き合いたいです。

  • 又吉さん2冊目。読むととても好きだなと思うけれど、なぜかあまり手が伸びない私にとっては不思議な作家さん。

    はじめに…の文章だけでもう惹き込まれた。頭に浮かんできたことをつらつらねちねちと書き続けているようで、でも、一字一句読み逃したくない気にさせる。作者の思考を共に追っている気になって、読み終えた後、今度は自分が頭でずっと文章を続けていってしまう。本当に不思議。

    又吉さんのお父さんの話など、吹き出して笑ってしまうこともあり、愛すべき孤独感や拗らせの数々の合間に息抜きができた。自分もなかなか拗らせている方という自覚があるので、共感したり、ここまでいくとちょっとな…と思ったり…

    7割程までは快適に読んでいたけれど、途中ちょっとしんどくなって、また面白くなった。お笑いに関することになると、その熱さや拘りについて行けなくなるのだと思う。

    感想文の書き方を提案してくれるところがあるのだけれど、又吉さんの創作の仕方の一端が見えて、その後文章を読むときにそれが見え隠れしてしまい、ここは読まない方が楽しく読めたかもと少し後悔した。

    個人的には「命がけの指導でした」と「なにか言い残したことはないか?」が好きだった。

    共感できて心地良かった所
    ○一生を共にするような間柄であれば、本心で向き合う機会も必要かもしれないが、そこまでの関係性でない人との争いは極力避けたい。それが許される位の権利は誰にでも認められているはずだ。

    ○あの時、あの人に自分の正直な気持ちを伝えていればどうなっていたのだろう?と考えることがある。その瞬間は何度やり直したとしても同じことを繰り返すだけだと思うのだが、何か1つでもきっかけがあれば違う未来があったかもしれない。

    又吉さんの性格の良さと可愛らしい拗らせ感が滲み出ていて、より好きになりました。テレビで見たいとかではなく、そっと近くにいて欲しいような、信頼できる類の人…みたいな感じで。拗らせていても、孤独を愛していても、他人を認め、人に優しく、人が好きなんだなと尊敬しました。

  • エッセイは定期的に読みたくなり、予備知識として人物を知っている方のエッセイを選びがちである。又吉氏はもちろん大好きである。そして、氏の書いた小説も。
    そして、TV、YouTubeなど各メディアにて観る、語り口も大好きである。
    エッセイは基本的につまみ食い的に長い時間をかけて他の本と併読しながら読む。
    というのも、途中で飽きるのだ。
    ただこの月と散文は、ほぼ一気読みだった。氏の繊細さからくる思慮深さと、読み物への愛情がひしひしと伝わってき、借り物でなく自分の言葉を探す誠実さを感じた。しかし未開の地を目指すパイオニアではなく放浪の末、辿り着く遊牧民的な姿勢で、正にその辺りを散歩して、気づいたら
    見知らぬ土地にいる、みたいな感じである。各話に度々、出てくる月。私も氏と同じ時代に同じ月を見上げられるのだ。
    少し感慨。

  • 10年ぶりの又吉直樹さんのエッセイ、迷いなく購入。
    インパクトのあるカバー装画は漫画家の松本大洋さん。

    又吉さんのエッセイの温度と湿度が好きだなぁと、改めて思いました。
    表面は少しひんやりとしているけれど、温かみが感じられて。
    "恥ずかしい"という感情をたくさん綴っているのに、湿っぽくなりすぎなくて。
    又吉さんの脳を通過して文字になった日常の出来事や頭の中で考えたあれこれを、くすっと笑ったり、ちょっと切なくなったり、時折のぞく鋭さに憧れたりしながら読み進める時間は、とても心地よかったです。

    特に好きだったのは「泥を飾る」。
    誰かが褒めていたから、とか、誰かが貶していたから、という理由で自分の感覚を評価されることに息苦しさを感じる、という部分に共感しました。
    「自分はこれが好き」という気持ち、大事にしたい。

  • 読んでて笑いました!!又吉さんの本読んでいると色んな視点から物事を見ること読むことが、重要というか楽しいというか人生面白いと改めて感じました。
    何度も笑うとこもあり感心させられるところもあり、こういう風に考える人もいるんだなぁと思わせてくれました。
    久しぶりにエッセイを読みましたがお勧めです♪

  • 読書感想文に対して書かれている話があるので感想書くのは緊張してまう。今作はエッセイ集ということで作者又吉さんの魅力全部載せみたいな感じで又吉さんの色んな魅力や考え方が「安心してください履いてませんよ」ってくらい赤裸々に感じられて最高に楽しめる。

    やっぱエッセイ集が面白くて楽しめる作家さんは人間として魅力が半端ないんやろうな〜又吉直樹さんの魅力が半端ないからこのエッセイ集も面白くて楽しくてなんか心のHPが回復してる。

  • 又吉さんのエッセイ本。でも今や又吉さん、単なる芸人さんではなく文藝作家、書いてある内容はわかり難く難解。内容というより、表現方法なんですか、やはり読むのが楽しくない本でおました。

  • 又吉さんの十年ぶりの随筆集(なぜか本文用紙からものすごくいい匂いがする)。「月と散文」という題名がいいですね。
    『はじめに』にある、 “呼吸をしているだけで恥ずかしいのだ。それなら、せめて好きなことをやって自由に恥を掻きたい。自由に恥を掻くことは、阿呆になることとよく似ている。”との文章が、すごく好きだと思った。私も、何かをしようとするにつけ他者の目を気にしてしまい「恥ずかしい」という思い込みの自意識でがんじがらめになってしまうタイプの人種なので。

    本文はどれを読んでもユニークでしみじみと良かった。たまに現実をはなれて、虚構の世界に筆がはしっていくような篇もあって楽しい。
    また、幼少の頃の思い出が多く綴られているのがうれしかった。ナイーブな彼の対岸にいるような強さをもつ両親のもと大阪で暮らす、サッカーが大好きな少年だった又吉さん。
    成長して大人になっても、事務的な手続きが苦手すぎるあまり、それを完了することで得られる権利は諦めて、空いた時間で公園のベンチに座り夕焼けを眺めて過ごすことにするような又吉さん。

    阿呆だけど、どこかもの寂しくて、でもやっぱり阿呆。相方の綾部について述べる文章には、はっきりとそうは書かずとも愛が滲んでいる気がする。
    最後まで読み終えて、私は又吉さんの小説も随筆もどちらも大好きだと、惚れ直すようにそう思った。これからも彼の書く唯一無二の文章を読み続けたい。

  • 有隣堂のYoutubeから気になって購入。

    「僕が読むべき本は光って見えた」という感性がとても羨ましく感じたので、僕も面白い本を沢山見つけられる様に、これからも本屋に通って行きたいと思いました。

    達磨さんが転んだの様々な地域verや、唐突に始まったヒゲの詩、コロナ禍の状況に関するあいうえお作文等、著者のユーモアが全開でふっと笑ってしまいました。

    僕が特に好きだったパートは、著者の父親に関する話である「思い出す事のできる最も古い記憶の自分は泣いている」と、著者の歌に関する考えが書かれた「魂を解放しても良いですか?」のパートです。

    実は又吉さんの作品は初読だったので、これを機に火花などの他の作品も読んでみたいと思います。

  • 又吉直樹さんの芥川賞受賞作『火花』は、
    同賞作品の中で単行本売り上げ歴代第一位だそうです。
    (文庫本もいれれば『限りなく透明に近いブルー』が一位)
    私も芥川賞作品を読んだのは『蹴りたい背中』以来二冊目で
    しかも殆ど図書館の私が購入した友人から借りて読んだ。

    日頃本を読まない多くの人が読んだのでしょう。
    だから「芥川賞ってこんなものか」と思った人も多かっただろうし
    批判も多かったことと想像します。

    以来又吉さんの小説を読んだことはないのですが
    (ヨシタケシンスケさんとの共著は読んだ)
    エッセイは今回で二度目です。

    『夜を乗り越える』はとても良かった。
    そこで紹介された中村文則さん『何もかも憂鬱な夜に』も
    その後に読んで、本当に良かった。人生観が変わった。
    だから今回も頑張って読みました。

    わりと最近、林真理子さん三浦しをんさん山本文緒さん
    朝井リョウさんといった直木賞作家のエッセイを読みました。
    こちらは美味しい麺をスルスル食する感じ。

    それに比べて芥川賞作家の又吉さんのエッセイは
    よく噛まないと受け入れることができなくて。
    でも読んで良かったのでまた読みたいなと思っています。

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

又吉直樹の作品

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