- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784059006039
作品紹介・あらすじ
江戸城の台所人、鮎川惣介は、大奥添番にして剣の達人、片桐隼人と釣りに行ったおり、謎の美少女、あんずに自慢のお手製弁当を横取りされてしまう。口達者な彼女に呆れつつも二度と会うこともあるまいと思っていた惣介たちだが、思わぬところで再会することに…。ある朝、御膳所で将軍家斉の好物、酪を調理していた惣介は、その鋭敏な嗅覚で微かな異臭を嗅ぎとる。何者かが毒を混入したらしい。人気シリーズ第二弾。
感想・レビュー・書評
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江戸城の台所人で人並み外れた嗅覚を持つ鮎川惣介と、幼馴染で剣の達人で大奥添番の片桐隼人が大奥を舞台にした様々な事件に挑むシリーズ第二作。
シリーズが完結したのを機に久しぶりに再読しているが、今回も事件の陰鬱さと時折見せる軽快さや滑稽さが上手く織り混ぜられ読みやすい。
第一作で印象的だった、それぞれの家庭の不協和音は相変わらずな部分もあるが、少し前に進みつつある部分もあってホッとする。事件の度に惣介が知恵を借りに行く曲亭馬琴の頭の冴えと図々しさも相変わらず。
惣介は一介の台所人ながらその料理の腕を買われて時折将軍・家斉へ直々に出来たて料理を持っていく機会がある。そのことで出世するとか給料が上がるなんてことはなく、むしろ上司や同僚に妬まれるほどで面倒なことこの上ない。作中そんな男の嫉妬を見せられる嫌な場面もあるが、一方で意地悪上司と思っていた人が情のある面を見せてくれるところもあったりする。
今回の初登場は水野忠邦の家臣(というか懐刀?)の大鷹源吾。見た目は隼人同様涼やかなイケメンで物言いも軽やかだが、剣の腕は隼人と同等かそれ以上で、隼人とは違って容赦ない。つまりは水野の汚れ仕事も引き受けてきたということだろう。
そしてもう一人の印象的なキャラはあんずという娘。初対面は最悪。惣介が精魂込めて作った弁当をうまいこと横取りしてしまったのだ。
そしてその次は何と、先の大鷹源吾の馬の前に飛び出すという「当たり屋」まがいのことをして負傷。居合わせた隼人の家で一晩療養していたものの姿を消し、その後今度は名をあらしと改め大奥のお末(奥女中)として働いていた。
一体あんずは何者なのか。しかしその思いを巡らす暇なくあんずに悲劇が待っていた。
読み終えてみれば前作で起きた、殺人事件にまで発展した大奥での小袖盗難事件はまだ尾を引いていた。背景にあるのは将軍家斉を中心にした拗れた人間関係に政争、大奥での権力争い。そこに巻き込まれ犠牲になるのは常に力のない弱き者だ。
惣介と隼人はそうした人々の無念を少しでも掬い取るべく事件の証拠を追う。大奥のゴミまで攫って見つけたのは血の付いた袖の一部のみ。しかしそれは紛れもなく大奥で事件が起きたことの証だった。
だがその結末はあまりに虚しい。こうした政治がらみの事件は、事件の真相を明らかにし犯人を見つけて逮捕したところで解決する類のものではないことを改めて突き付けられる。何しろ将軍・家斉ですらどうにも出来ないのだ。一介の台所人・惣介や添番の隼人など力無き者と同様だ。
しかし家斉が事件の中で様々な犠牲があることを知ってくれるだけでも良しとするしかないのかも知れない。
前作の雪之丞、今作の水野に将軍家斉まで揃って『知らぬが安穏』なこともあると惣介に忠告するのだ。下手に突いて命を危うくすることはない。だが惣介や隼人の職場にこういう暗澹とした背景がありその中で犠牲になる人々がいるということを認識し、惣介が心で涙を流してくれるだけでも嬉しい。食い意地が張って怒りっぽい惣介に好感が持てるのはこういうところなのだろう。
終盤、惣介一家の契機になりそうなシーンがある。娘の友人を救うシーンで一家が団結するが、そこでの妻や娘は頼もしかった。なのに大鷹源吾は容赦ない。
妻が娘・鈴菜に対し『鈴菜が「女」とひとくくりに扱われるのが嫌ならば、殿方のことも「男」とひとくくりにするのはお止しなさい』という言葉は、普段惣介に家族サービスが足りないと喚く姿と違って母親として凛としていた。
※シリーズ作品レビュー
第一作「将軍の料理番」
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4059005916詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二弾
前巻同様に大奥に纏わる話を絡めながら、他の話題も?
しかし今後関連が?
段々と事件の背景が -
湯呑み一杯の牛乳が1両だって!!惣介の本気が詰まった弁当をきっかけにひとりの娘と知り合うことで、またも事件に関わることになる幼なじみズ。風呂敷広げ続 けてるけど大丈夫なのかこれ。ついに水野忠邦と対面し、我が身がどうなるかわからない緊迫の場面なはずなのに、目の前の食事が気になってしょうがない惣介w何 気に心の中では毒舌だし良い味だしてる。新キャラの大鷹源吾が爽やかイケメンすぎて眩しい。こいつのハイスペックさはなんなの。それで、隼人が1巻で買った櫛 のことをいったいどこまで引っ張るつもりなのか。えらいロングパスや。
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L 包丁人侍事件帖2
ひとりの当たり屋の少女に出会ってからの大奥を巻き込んでの騒動。すっきりしない結末も今回もキャラに救われている感じ。それにしても曲亭馬琴の出番は必要なのか、キーマン化してるけど。
なんだか1番の強調は将軍家斉の憂いのような気が。 -
シリーズ物。私にはこれが始めてなのだが、話しはおおむね分かるし、出てくる人物も魅力的で、謎が解明されていないこともあり、早く次巻が読みたい。それにしても、将軍家斉には腹立たしさがつのる。
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武家ながら料理番をつとめる主人公の、異能とも言うべき「嗅覚」が事件を解く鍵になる「包丁人侍」のシリーズ。読んでいるとかならずといっていいほどおなかが減ります。
あんずちゃんが不憫でならない……。
本筋とは全く関係ないですが、「はぶらし」が気になって気になって。 -
2010.11.19 読了
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よかった♪
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続きを早く読みたい