美について (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061157248

作品紹介・あらすじ

山河の美しさ、芸術の美しさ、人格の美……美は、さまざまな位相をとって人間の前に立ち現われ、より高い価値へとひとをいざなう。では、ひとはいかにして「美」を発見し、どのようにこれを受け入れてきたのか。最高の美とはいかなるものなのか。本書は、美についての理念の変遷や芸術の展開と関連づけながら、その存在論的意味を解明した美についての形而上学である。

美は人間の希望である――真と善と美とは人間の文化活動を保証し、かつ、刺戟してやまない価値理念である。真が存在の意味であり、善が存在の機能であるとすれば、美は、存在の恵みないし愛なのではなかろうか。われわれは美しい山河を眺めただけですら、救われた思いに浸る。卓越した芸術作品の美に接すれば、人間の偉大さにうたれ、自分が人間に属することを誇りに思うであろう。美は、たしかに、挫折し苦しむことの多いわれわれに差し出された存在の光りのようにも思われるではないか。美はこのようにして、人間の希望である。この輝かしい経験内容である美を反省しないでいることは、人間の栄光と喜びとについて考えずにおくことになる。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 小難しいけどゆっくり読むには最適な本。


    美について 今道友信

    芸は本当は ウン という音の農業用語でクサギル と読み雑草を刈り取ること。
    藝の略字は人間の精神によい種子を植え付けるもの。

    美について思索は可能か?
    存在する限り何らかが美しい。

    知的な視点が入った場合とない場合では美の受け止め方が違う

    分析と解釈
    解釈は人間関係で言えば対話、分析とは身体検査と戸籍調べ。

    美は不要不急の代用品か?

    バベルの塔、芸術。神への挑戦。

    芸術は神に対する態度、世界に対する態度を表すと同時に自己自身の人生の支えとなる。
    童謡を歌う昔など。
    音楽は空間をメロディーに変質し、時間をリズムに変質する事で自己のうちに時間空間という世界の基本構造を包み込む。音楽を聴くことは精神が世界を超えていく。

    日常芸術は複製品でありミニアチュールである。

    musicの原語、ムーシケー。9柱のムーサ(ミューズの原形)ムーサに関わりのあるもの。
    流動的で捉え難い現象を呈する芸術。

    ヨーロッパとシナ、日本で藝術の範囲が違う。
    ヨーロッパは分けてる。日本は統一的。
    藝術の藝は人間の精神において内的に成長していくようす。もともとはもとを植えるということ。

    芸は草を刈り取ること。

    エクスプレシオ、中世のラテン語。果物の果実を搾り出すという農業用語

    東洋美術は不要なものを削ったむしろ完全体?

    芸術は物理的時間を捨てて超越していく

    物質を介すが、非物質的な存在価値を持つ

    外の世界を知る、人間性の回復のための芸術

    ①美は感覚だけでなく理性でも論じられる。
    ②それを解釈と呼ぶ
    ③全体的な芸術一般も解釈可能

    動物は発情期において美しくなる。人間は普段から化粧をする。

    ベルグソン
    制作は構成。
    創造とは生むこと。

    生きがいは生命を手段として、己がこの手段を捧げて悔い無い目的を自ら見出さなければ決して生じはしないものでは。

    適・不適と快・不快

    正義と善、美と犠牲の大きさ

  • なぜ「美しい」ものに人は惹かれるのか。
    美とは一体何か知りたかったため手に取った。
    著者の今道先生は、無知な私にも分かるようにこの本を書いて下さり、とても参考になった。


    犠牲を払うことが「善」であり、その犠牲が規格を超えて大きいことを「美」という。美とは基本的には精神の犠牲と表裏する人格の姿である。
    技術連関に成り立っている現代社会は、プロセス(時間の経過)を最小化し結果を最大化することが本領である。
    反対に、人間実在の本質は意識であり、意識は時間性に属する。社会はプロセスという時間性を消去していく構造であり、時間性に属する人間性の消去も知らず知らずに行っている。
    しかしながら、芸術体験は時間経過を必要とする。つまり芸術体験は現代社会に抗って、人間の真のあり方の基礎を守ろうとしている。

  • 全然内容が入ってこなくて途中で読むのやめたぼくの理解力がないだけなのか1970年代に書かれてる本だから単純に読みにくかったのか

  • 借り物

  • 「美について」今道友信

    人間の知的な省察が加わった場合とそうでない場合とでは、単なる風景に接しての美的体験であってもその内容が違ってくる。

    知識をもって体験を立体的に構成できた時、作品を前にする体験は初めて真の芸術体験に高まる。

    人間的なるものの体験を知的に理解できるようになっていなければ芸術の分析的な結果を総合して体験化していく事はできない。

    一作品の理解は鑑賞者の人間体験の理解と相即している。

    人間体験を深める為に芸術体験が役に立つ。

    ごくありふれた観光の体験、また芸術作品との体験、生活環境への反省というような誰にでもありうる体験を通じて、美の思索は可能であると同時に、必要であり有益である。

    美には感覚的に知覚される表面的な美もあるが、知性がなければ発見できない深い美しさがある。

    人間は芸術によって自己の精神を高める事ができる。

    人間として生きながらにして物的な世界を超越する可能性を精神に暗示しているものが芸術。

    藝という字の語源は「ものを植える」という事であり、人間の精神において内的に成長していく価値体験を植え付ける技。
    芸という字の語源は、「草を刈り取る」事であり、本来的な意味が変わってしまう。

    真の芸術とは、存在するものに対する深い人格愛がなければ成立しない。ありとあらゆるものの良さを発見しようとする態度、世界のあらゆるものに対する精神の愛が作用している事を見抜く事。

    育くみの心としての愛が芸術の源。愛こそが美しい。憎悪は破壊の槌であり、芸術に対する悪魔である。

    芸術はただ遊びや趣味という段階に留まらず、本質的に宗教や道徳と並ぶ最高の営み。

    精神の特殊な現象形態の一つである芸術は、哲学と宗教に次いで最高の段階に属している。

    芸術の基本的な方向は人格の美に向けられている。

    芸術は人格美において自己を完結せしめる。

    今日の芸術は自らの努力によって自らが光と化するような仕事であり、これは芸術に留まらず、全ての営みについても言える。

    人間の理想は真善美。真は論理学、善は倫理学、美は美学の課題。最高の理想を考える仕事は哲学の課題。

    美は人間の知性の中に座を占め、知覚の対象の有無に関わらず存続する事を意味する。

    美は感覚で感ぜられるに留まらず、理性によって発見されてくるもの。

    美の位相がいくつかあって、それらは事物の局面においては存在せず、意識の位相に他ならない。

    生きがいとは、与えられた所与としての生命を手段として、己がこの手段を捧げて悔いない目的を自ら見出さなければ決して生じない。

    我々は義の人を賞賛し、善の人を賛嘆するが、それらの賞賛や賛嘆は人を動かす事はない。人を動かすのは輝き出てくる美しさだけ。美の人のみが力を呼ぶ。

    最高価値としての美は、己をむなしゅうして人類の為にどんな小さな事でもよいから愛をもって成し遂げていこうとする希望に満ちた生き方の中に灯された輝き。

    美は人生の希望であり、人格の光である。

  • 美を論理的に考える。
    哲学。
    藝術をどうとえるか。生きるに必要な要素と感じる。
    分析ではなく対話するように解釈と発見を加えていきたお。

  • 真 存在
    善 存在の機能
    美 存在の恵み

    考えて→美しい×
    直感 →美しい〇  ?

  • 気になる記述はところどころあった。しかし、歴史をひもとき、否定と分析を繰り返した割には、ありきたりな結論しか導かれなかったのが残念。学問と言うより人生訓になってしまったからか。結論が残念だが、内容に滋味はある。

    ・ゲーテの時代のドイツには、「表現」という言葉はなかった。表現とは芸術創作の新しい概念であった。
    ・芸術作品の形態的完成に対して、そこに至る過程に視線が惹かれ、未完成の作品であるデッサンに、今世紀に入ってから、芸術の一ジャンルが認められた。
    ・東洋においては、写意がもともと。近代に入って、再現、写生になった。西洋では逆。
    ・美は風土的に異なった形で表象される。
    ・芸術は、個人の趣味に相関的だが、様式の時代的不変性に根ざしている。流行という社会心理学的現象の影響。
    ・芸術の時間は、物理的時間性と論理的無時間性を止揚した第三の時間。
    ・鑑賞は永遠に向かって開かれ、創作は永遠から人間的時間のなかに注入されてくる。
    ・芸術は感覚の問題から思想の問題に変わりつつある。
    ・芸術は概念的な認識が到達できない場所を象徴によって暗示する。
    ・自己の受信器官の優劣に問題があるのではなく、その理解を元に、種的な規格生産とは別な個的な創造として、宇宙のなかに具象的に作り出すかに人間の価値がある。
    ・芸術作品は、有限を介して無限へ至る精神の道であり、世界から超越へ、歴史から普遍へ、物質から理念へ至る垂直の柱。
    ・制作は多を一つのまとまったものに。創造は多くのものを産み出す一を作り出すこと:ベルグソン。

  • 培ってきた芸術観を強固にする手助けにはなったなぁ、と。ただ古かった。サンプリングについては椹木野衣氏に任せるか。

  • お友達のお見舞いの例がとても印象的だった

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著者プロフィール

1922年東京に生まれる。東京大学文学部哲学科卒業。パリ大学、ヴュルツブルク大学講師を経て、東京大学名誉教授、聖トマス大学客員教授。哲学美学比較研究国際センター所長、国際形而上学会会長、国際美学会終身委員、エコエティカ国際学会会長。1996年より1999年まで哲学国際研究所(IIP、パリ)所長。著書『同一性の自己塑性』(東京大学出版会、1971)、『美の位相と芸術』(東京大学出版会、1971)、『東西の哲学』(TBSブリタニカ、1988)『エコエティカ』(講談社学術文庫、1990)、『知の光を求めて』(中央公論新社、2000)、『愛について』(中公文庫、2001)、『ダンテ『神曲』講義』(第25回マルコ・ポーロ賞受賞、みすず書房、2002、改訂普及版2004)。編著に『講座・美学』全5巻(東京大学出版会、1984-85)などがある。

「2017年 『ダンテ『神曲』講義 改訂普及版【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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