ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか? アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061386099

作品紹介・あらすじ

トランプ台頭、及びトランプ支持者を分析する本は既にたくさん出版されていますが、その全てがリベラルな視点から書かれたもので、多くはまるで科学者が下等生物を顕微鏡で観察しているような上から目線の書き方になっています。 これらの分析本の著者たちは、リベラルな家庭で育ち、リベラルな大学を卒業し、ワシントンやニューヨーク、ボストン、カリフォルニアなどのリベラルな地域でリベラルな人々と暮らし、リベラルなオフィスで選挙の度に民主党に投票するリベラルな同僚と仕事をしているので、彼らにとって非リベラルなトランプ支持者はまさに異物だからです。
私は2000年はゴア、2004年はケリー、2008年にはヒラリーを応援していた極左環境保護派ではありますが、テキサスに住んでいるため、隣人は皆日曜には教会に行く保守的なクリスチャン、ヴォランティア先のアニマル・シェルターでも、仕事場でもふれ合う人のほとんどが保守派で、知り合いのほぼ全員が銃を持っている、という超保守的な環境にどっぷり浸かっています。
今回の大統領選で、私の周囲の人々のほぼ半数は最初からトランプを熱狂的に支持していて、残りの半数は最初はテキサス選出の上院議員テッド・クルーズを支持していたものの、共和党候補がトランプに一本化された後はトランプを積極的に応援していました。
この本は、トランプ支持者たちと毎日接していた者の立場から、トランプが支持された理由を分かりやすく解析した手記です。
上から目線の分析本ではイマイチ分からないトランプ人気の真相が、この本を読めば手に取るように分かるはず!
トランプ支持者の素顔を知るために、さらに、リベラルなアメリカ人にも日本人にも分かりにくい保守的なアメリカを知るためにも、是非この本をお役立てください!

感想・レビュー・書評

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  • 11月3日に迫ったアメリカ大統領選挙。
    バイデン氏優位と言うが、どうなんでしょう?
    僕はトランプ氏がまた勝利するのではないか、と思っていますけど。

    トランプ氏は破天荒過ぎて、4年前の選挙で本気で勝つと思っている人はいなかった。
    結果が出て、「アメリカ人ってバカなの?」って思った日本人、多かったのでは?

    だけど、トランプ氏の当選は、オバマ氏がそれまでやってきたバラマキ、偽善、逆差別に対して、虐げられてきた中産階級層の怒りが爆発した結果で当然のことだ著者は言う。

    良識と常識がトランプ政権を誕生させたんだ、と。

    そういう見方もあるのね、と興味深く読ませていただきました。
    ただ、奥歯に物が挟まったような物言いも多く、真意が分かりづらい部分もあるので、内容がするするとは頭に入ってきませんでした。

    著者の西森マリーさんはイスラム教徒で菜食主義者、動物の権利を守る運動をしている。
    別の本でアメリカの政治が陰で操られているとする陰謀論(ディープステート)を唱えている。

    僕はまあ、トランプ氏は好きではないです。
    でも、「不可能とは単なるスタート地点に過ぎない」という姿勢はいいですね。
    そこは見習いたい、と思った。

  •  詳しくは調べていないのだが、Kダブシャインというラッパーがトランプを支持(?)したのだそうだ。それに対して、多くのライターや翻訳家などなど文化人が、Kダブに対して失望の声をもらしたとか。(いや、もともと失望っていうか期待もしてなかっただろうし、わざわざ言わなくてもいいんちゃうん)調べる気はないし、いずれ調べる時がくるかもしれない。
     そもそも、Kダブがディスられていない時期などあっただろうか? あの人はずーっとディスられ続け、馬鹿にされ続けてきた人であり、かつ、押韻についての開拓者でもあり、ヒップホップをし続けている人間だ。トランプを巡るディスを取り上げて鬼の首を取ったように騒いでもまったく意味がなく、彼がいつもディスられ続けてきた、馬鹿にされてきた、その「ディスってきた、馬鹿にしてきた人間(このライター達が自己を懐疑的に考えることなどありはしないが)」の分析の方が急務であろう。なぜKダブは馬鹿か、は、問題にすらならない。馬鹿があんなに曲を作り続けて、押韻をし続けて、ディスに負けずにポテンシャルを保ち続けられるはずがない。むしろ、なぜ人はKダブを馬鹿にし続けるのか、の方を考察するほうが、Kダブに対する批判的な考察の開拓点になるだろう。
     ただ、「なぜKダブがトランプを支持したのか。あれほど、白人に対抗するエスニックな観点が必要だと言っていた人なのに。では本当のところ、いったいKダブは何を目指していたのか。やっぱりただの右翼なのだろうか。何と戦おうとしているのか」といった疑問に、ちゃんと向き合わないといけないし、そのヒントというか、ほとんど「回答」といって良いくらいの決定的一書であるのが、この本であると思う。
     私は最初、ドナルド・トランプ批判本と思い、いかに彼が愚かで、世界を戦争に巻き込み、残虐で、馬鹿で、それに比べてオバマやヒラリーは、「ぼくたち」「わたしたち」といった言葉で等身大で語りかけてくれる聖人で、ぼくたちの民主主義なのさ、と軽やかに語る、わたしたちの民主主義のシスターフッドがトランプのペニスを蹴り上げるみたいな、痛快で、美しい、きらびやかな存在であるか。そういった内容を期待して読んだのだが……結果はどうなのか、ぜひ手に取って欲しい。
     正直言って、めちゃくちゃ面白かった。というか、この本を刊行した星海社新書の、この本を担当した編集者に敬意を表したい。おそらく、星海社内でも、かなりバッシングというか、窮屈な思いがあったのではないか。
     この本における最大のポイントは、西森マリーが、おそらく素朴に日本ではリベラルであり、学歴も高く、普通の「良識派」的な感じである点だ。ってか、普通に左派的な活動家っぽくもある。もちろんイスラム教徒であることもいろいろ考えないといけないが、過激派についてははっきり区別する立場をとる。イスラムリベラルといったところだろうか。
     結局は、「さすがのイスラムリベラルの彼女も、アメリカのリベラル知識人言説とマスコミにはうんざりだし、あまりにまわりの素朴にアメリカの伝統を生きる人々に対し、ひどすぎる」という、宗教やイデオロギーではなく、むしろ「同情」と「悔しさ」から本著を書いているような気がする。西森マリーの近所づきあいしてるおじさんおばさん、お姉さんお兄さんがあまりに馬鹿にされていて、これは本当に、思想とか言ってる場合じゃねえ、という心の底から湧いて出てきた言葉にあふれているように思われる。こう書いてしまうと薄っぺらいようだが、人間にとって大事な感情である。
     言いかえれば、その土地に生きる人間らしく生きる人間に対し、感心し、一緒に生きていこうと思ったリベラルイスラムの彼女が、あまりにひどい「リベラル」のふるまいに激怒して書いた、渾身の書に近いような気がする。人間としての西森マリーの中から出てきた本、といったところか。そして西森マリーがこの本で戦っていたことは、おそらくではあるけれども、Kダブが嫌悪して思わずトランプ支持を出した事件と共通しているように思う。そんなことを書き始めると、10万字どころではないけれども、ちゃんとこの本を論破するなり向き合うなり寄り添うなりきちんと読むなりしないと、日本のリベラルだの左翼だのに見通しはないし、ますます右派的言説がはびこり、やがて気がついたら制御不能に暴走するのではないか。
     思想とマーケットと教育とマスコミがどのように連動し、どのように子どもたちや忘れられた人々が存在することとなるのか、生み出されるのか。この本から十分に議論や考えることができる。

     ちなみにこの本は「ヘイト本」だろうか。「ヘイト本」という言葉を聞いたとき、真っ先に図書館戦争を思い出して、いやいや、図書館戦争ちゃうし、と、ヘイト本認定して追い出すのは「正しい行いだ」とし、と考え直した人にもおすすめの本である。

     結論としては、永遠にリベラルは、ライターは、翻訳家は、記者は、百田もKダブも小林よしのりも西尾幹二も、理解することは難しいと思う。自民党を支持する人々を「大衆」「差別主義者」「平凡で下賤で卑俗で野暮な人々」とどこかそう「対象物」として認識しているからだ。
     あっちとこっち。あれとこれ。そうして「対象」として認識している限り、絶対にわからない。西森マリーは、対象ではなく、共に暮らしてきたから、自分がどんだけリベラルでも、さすがにこの本を出すしかなかった。たぶん、世界で一番保守のことを理解しているリベラルは彼女なのではないか。
     リベラル人に太陽(イデオロギー)の光があたってできた影をしっかりと記したのがこの本である。しかし、リベラル人は、影を見ることはできない。太陽に自分の影は映らないからである。しかし、リベラル人が差別主義者だと罵るその対象は、その自身から伸び出た影である。対象としようとしても、いつのまにかずれたところに着地するのは、自分の影だからだ。
     それがいつまでたってもわからないのは、たぶん、密教と顕教とか、人間機械論とベルタランフィとか、陽明学と朱子学とか、科学と小林秀雄とか、そういったずっと続いてきた、外側か内側かみたいなところを、丁寧に意識していくことをしていないからではないか。

  • 先日の『レッド・ステイツの真実』に続いて西森マリーさん。
    以前は環境問題などを中心にバリバリのリベラルだったが、テキサスに住んで実際にキリスト教保守系の人たちと身の回りで接し、また逆にリベラルの欺瞞も知るに至ったというご自身の経歴・経験からの、なかなか興味深いアメリカの保守・リベラルの実態解説。
    刊行時期がトランプ政権誕生の頃のため、今読むとややトランプ贔屓(あるいは擁護)傾向が出ていますが。

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著者プロフィール

西森マリー(にしもり まりー)
ジャーナリスト。エジプトのカイロ大学で比較心理学を専攻。イスラム教徒。1989年から1994年までNHK教育テレビ「英会話」講師。NHK海外向け英語放送のDJ、テレビ朝日系「CNNモーニング」のキャスターなどを歴任。1994年から4年間、ヨーロッパで動物権運動の取材。1998年、拠点をアメリカのテキサスに移し、ジャーナリストとして活躍している。著書に『ディープ・ステイトの真実』『世界人類の99.99%を支配するカバールの正体』『カバールの民衆「洗脳」装置としてのハリウッド映画の正体』『カバールの捏造情報拡散機関フェイク・ニューズメディアの真っ赤な噓』(以上、秀和システム)他多数。

「2023年 『カバール解体大作戦 世界人類の99.99%がまもなく覚醒!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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