エトランゼのすべて (星海社FICTIONS)

著者 :
  • 星海社
3.70
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本棚登録 : 196
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061388178

作品紹介・あらすじ

充実した大学生活に憧れ、京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」なる怪しげなサークルの新歓説明会でミステリアスな美女"会長"と出会う。「ちょっとした魔法ですよ」-そう言いながら淡々と圭介の個人情報を言い当てていく"会長"。彼女は一体何者なのか。なぜ自分のことを語らないのか。その美貌と微笑みの裏には、思いもかけない秘密があった…。注目の新鋭が贈る、とびきりの青春小説。

感想・レビュー・書評

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  •  掛け替えのない一ページを見つけることが出来れば、あなたとわたしの勝ち。
     当然ながら、見つけられなければ掛け金を乗せたあなた、ついでに推薦文を書いたわたしの負けになるのでしょう。

     舞台は京都大学。
     森見登美彦先生で一躍、と言うにはわたしの読書遍歴も貧弱なものですが、京都府民や京大出身以外には異世界風味が強いなあ、と思います。つまりは馴染がないということで。
     
     いささか古典的過ぎる主人公と会長の、周回遅れなボーイミーツガールの舞台には相応しいのかもしれません。
     定型的な入り口で掴みやすいキャラ配置としながら、地に足の着いた性格の奥深さはライトノベルと一般文芸の中間地点といったところか。
     春夏秋冬、一年で順々にサークルの構成員を一人一人ピックアップしていくのも王道でわかりやすい構成、リーダビリティー(読みやすさ)は高めです。
     
     春に出会い、夏を歩み、秋に転んで、冬に別れる。
     紆余曲折を経て、悩みっぱなしな主人公は等身大ですが、少年と青年の狭間のような設定はそのまま感情移入して読むか少し突き放してみるか、読者の年齢層によって、読み方によって分かれそうで興味深いです。
     
     少しファンタジーでないマジックはありますが、全般的に凄く地味で、それさえ消え去ってしまう。
     主人公は一年(回)生と言う時の安穏さにいながら、これから過ぎ去っていく過去と、その先にある未来の冷徹さに怯えています。
     これは当時を生きる彼の物語であると同時に作者の青春を辿った半ば自伝であると考えてしまうと、先の指摘も見えてきます。

     正直に申し上げますと、自分はハリネズミのようにこの物語が刺さりまくりました。故に星五つなのです。
     だからこそ、冷静に文責を負える立場では無いかもしれません。
     けれど、作品全体を気に入らなくてもどこか一ページだけは切り取って持っていてほしい、その程度には気に入っていると謙虚ながらに推薦を申し上げたいと思います。

     まだ見ぬ未来に怯え過去に変わってしまう現在を手放したくなかった彼が何を見たのか?
     さしずめ時の牢獄につながれていたのは誰だったのか? 答えは酷く簡単ですが、気付いたところでやってくるのは単純な驚きではありません。
     ネタばれ込みで構いませんのでどうか、読んでいってくださいませ。

    余談(私事)

     ちなみに自分はダブルヒロインとしてみると会長の方が好みですね。その辺、ぼかしてくれた作者先生には恨み半分感謝半分です。
     今は、確定させるとしっくりこない気がするのは作品の記述そのままですが、踊らされて良しとしましょう。
     自分は何も書かれていない空白の、これからのページをお気に入りとして持っていくことにします。
     続編が出るなら、このお気に入りは更新されるのかもしれませんが、今は心の中で眠らせておくとしましょう……。

  • ”エトランゼのすべて”森田季節著 星海社FICTIONS(2011/10発売)

    ・・・充実した大学生活に憧れ、京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」なる怪しげなサークルでミステリアスな美女“会長”と出会う。
    「ちょっとした魔法ですよ」——そう言いながら淡々と圭介の個人情報を言い当てていく“会長”。彼女は一体何者なのか。その美貌と微笑みの裏には、思いもかけない秘密があった……。
    (公式サイトより)

    ・・・改めてあらすじを見るとミステリにも見えなくないですが、青春小説です(笑)
    比較的、静かに物事が進む話でしたので”会長の謎”というのはアクセントがあり、わくわく感を駆り立てられました。
    かつ、予想外でもあり、ラストへの流れも好印象を持った。

    が、あぶれ者の集まりだった”京都観察会”からあぶれた者はどうなったのか、どうなるのかを考えると物悲しい気分になります。

  • 京都大学に通う男の子の話。
    非常に読みやすくさくさくと読めあっという間に終わってしまった。
    もう少しゆっくり楽しもうと思ったのに。
    京都大学生の話なので当たり前だけど、京都の街がたくさん出てきて嬉しい限りだった。
    会長のなぞもきちんと終結して満足。

  • まず読み易かった。
    ただ、文量や話の構成から、良い悪い合わせて、一気に読んだ方が良い。

    話とディテールを幾つか落とせば、舞台でもやれそうと感じた。

  • ああ、読み終えてしまった。
    正月早々、何をしているのかというところだが、ここしばらく読みたいなと思っていた本ではあるし、あと三が日の残り2日に亘って、どうやって無聊をやり過ごすかという問題が発生したこと以外はあまり困っていない。

    よく練られたプロットを基に、傷つきやすく恐がりなキャラクターを旨く配してできた、おいしいケーキのような作品。中道さんが鞍馬山やなんかに行きたがるのは森田季節だからしょうがないというか、この作者の場合、これは読者に「またやってるよ、しょうがねぇなぁ」とかツッコミをいれてほしくてやってボケなのに違いないから、きっちりツッコんであげればいいのだが、それにしても、ポイントはやっぱり会長でしょうね。もう、クライマックスの場面は、主人公格好良すぎますが、この会長が相手なら、このくらいしなきゃバランスがとれません。

    たぶん、ボクみたいな年の人間が上から目線で読んだんじゃ、お話として宝の持ち腐れっぽいところがあります。おそらくは、大学入学直前の人たちに読んで貰いたいというところかな?まあ、もうすぐセンター試験ですからね。合格が決まったら、(別に京都大学でなくてもいいので)どうぞ、ご褒美としてお読み下さい。

  • 京都大学の学生のお話。

    作者がこの大学出身のため、京都の描写や大学の描写がかなりリアリティーがあります。

    暗黒の高校生活を過ごした主人公が、大学デビューを果たそうと一念発起し、サークルへ入るという話。

    しかし、そのサークルこそが曲者変人がそろい踏みのサークルだった。


    最後まで読み進めていくとエトランゼの真の意味が分かります。

    しかし、これってアリなの?という展開。まぁ、実際にはありうりそうだけど…


    この作者特有の人間さがしんどい話ではなく、あっさり読めてよかった。

    なんかバカ騒ぎをしたくなるような気持ちにさせる一冊です。

  • 充実した大学生活に憧れ、京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」なる怪しげなサークルの新歓説明会でミステリアスな美女“会長”と出会う。

    「ちょっとした魔法ですよ」──そう言いながら淡々と圭介の個人情報(せいかつ)を言い当てていく“会長”。彼女は一体何者なのか。なぜ自分のことを語らないのか。その美貌と微笑みの裏には、思いもかけない秘密があった……。
    注目の新鋭・森田季節が贈る、とびきりの青春小説。──泣いても笑っても、この一年(せいしゅん)は一度だけ。ようこそ、京都へ。

  • その装丁が話題になった本作。思わず手に取ってしまった人も多いらしく、まさにオシャレな装丁にこだわる星海社って感じの一冊。
    ちなみに、星海社FICTIONSはこれ以降もインパクトのある装丁の本がたまに出てくるのだが、裏のバーコード下の「定価」の字体が違うのは今のところ本書だけのようである。本気でどうでもよすぎてごめんなさい。

    中身もよくできていて京都観察会や不思議な力を持つ会長といった非日常的な要素と主人公・針塚のリアル大学生としか思えない中身、というか地の文がうまくマッチして全体が現実の大学生の日常に見える。
    てか、twitterとか知り合いの話聞いてると京大ならこんなサークルあっても不思議じゃないところがw

    注意書きにあるように、半分著者の実体験が含まれてるみたいで、そこが余計物語を面白くしているのだろう。
    皿洗いとか地元ネタのディティールがすごい。

  • 会長(´・ω・`)

  • 2012年4月20日

    <Tout Sur Etranger>
      
    Illustration/庭
    Cover Design/川名潤

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著者プロフィール

森田 季節(もりた・きせつ)
『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』(MF文庫J)にてデビュー。
ほか『きれいな黒髪の高階さん(無職)と付き合うことになった』(GA文庫)、『不戦無敵の影殺師』(ガガガ文庫)、
『お前のご奉仕はその程度か?』、『伊達エルフ政宗』(GA文庫)等。

「2020年 『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました14』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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