クレヨン王国 月のたまご PART7 (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061472778

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  • 鏡の森の城に主要メンバーが集まり始め、それをダガーがもろとも燃やそうとする。
    アラエッサとストンストンの俳句大会や祭りの参加はつかの間の明るい話だったが、最終巻に向けて緊張が高まっていく。

    アラエッサとストンは祭りに参加するとアラエッサの昔馴染みのケンちゃんと再会し、仕事を手伝うことになり、鏡の森の城へ絵画を取りに自転車をこぐ。途中、病院に向かう青ころり罹患者に会い、月のたまごという薬の話を聞いてまゆみがいると知り、病院へ急ぐ。到着するも、まゆみは城へ行ったきり帰ってこず3日ほど経ったことを知り、付近で健康そうな者もいたので志願者を募り、20名ほどを連れて城へ向かう。
    まゆみは指輪から三郎の姿を見ることができるためダマーニナに監禁されていたが、まゆみ自身も決心し、脱走するチャンスもあったがせす、小部屋で過ごしていた。
    ダガーは王妃を上手く言いくるめ、青ころりが蔓延している地域を燃やすのを許可される。

    ナルマニマニの若かりし恋の思い出

  • だんだんと輪が集束していく。
    しかし今回姿を見せない三郎さん。
    ヒーローは遅れて現れる?
    しかし、三郎さん以上のヒーローが、山ほどいる気もするのです。

  • 鏡の古城で、ダマーニナに囚われたまゆみ。ここから、三郎をめぐる女の戦いなんだけれど、愛とにくしみと許しの心の戦い。
    p74
    「まゆみ、おまえは絶望というものを知っているかい?」
    「何度も、体験したわ。」
     まゆみは、心外そうに強くいい返しました。
    「『月のたまご』を見つけるまで、何度もうだめだと思ったかしれません。」
    「ふーん。」
    「希望と絶望とは、頭としっぽで、両方そろってはじめて一ぴきの魚になるんだって。絶望がしっぽで希望があたま、しっぽをふらなきゃ前へ進めないって。」
    「おやおや、おまえはお説教もできるんだ。」
     ダマーニナは口をゆがめてわらいました。
    「それはまだ真の絶望というものを知らない人間の教訓的なせりふさ。おおかた外から嵐のようにおそってくるものと思っているんだろ。だけど、絶望は自分の中で育っていくものだよ。おまえにいま、それを見せてあげよう。さ、明るいところへおいで。」

    p77
    「まゆみ、あたしが八千年ものあいだ人間のにくしみを食べて生きてきたことを忘れちゃこまるんだね。あたしがにくしみを食べたのは、もちろん、人間を愛したからだった。あたしは愛によってにくしみを食べたのだ。そうしなくても良かった、といえるだろうか。おまえだってやっぱり食べたにきまっている。そしてほら、ごらん、この足だよ。」
    「…………」
    「これは、愛というものの副作用だよ。だから、おまえの三郎さんへの愛も、やはりこのみにくいひれ足を生むことになるのだ。つまり、一生をかける値打ちなんか無いものだよ。」

    ダマーニナは、月のたまごのために、少しでも地上を浄化しようとして、人間のにくしみを食べてきた。そのせいで、体がにくしみに侵されて、足は黒いヒレになってしまっている。
    三郎の体を侵していた青黒い水、彼が吐いたその水をクレヨン王国に捨てたくないから飲むつもりだったのが、まゆみなんだから、飲むだろう。愛のためににくしみを取り込んで、そのために自分が他をにくむようになる。なんて苦しい連鎖なんだろう。


    アラエッサが、不意にストンストンにお礼をいう場面。こういう気持ち、なることがある。でも普通は言えないのを、アラエッサは素直になったんだね。ストンストンが、アラエッサにも言えない不安があるとナレンナーに打ち明けたとしたって、やっぱりこのふたりは親友なんだなあ。
    p150
    「ストンストン。」
    「うん。」
    「ありがとうよ、ストンストン。」
    「え、どうしたんだ、アラエッサ。きゅうに変な声を出して。」
    「いや、なんでもないが、な。」と、アラエッサは目をしばたいて、「何で、おまえが横にいるのか、と思ったらな、きゅうに幸せになってな。――幸せにもいろいろな種類がある。が、いまのは、そうとうこたえた。ズーンときた。」


    信用するようになりかけていた相手からの思いがけない行動で、ああこれは信用しちゃいけないのかも知れない。私の脇が甘かった……と思ったときに。それは、ただのこちらの被害者意識で、色んな価値観や育ちの違いから来るものなのかも知れないけれど。それについて話しあえるのか、そもそもそんなこともすべきじゃないのか、もう嫌気が差してしまった自分の気持ちをどうしようか持て余しているときに、これは、応えた。
    あー、そうか、傷ついたと訴えるだけじゃダメで、作ろうとするのがいいんだっけか……ズーニーさん。




    あとがきより。
     名俳優、益田喜頓氏が、かつてテレビで語ったことがあります。
    「成功するお芝居はね、客を泣かせて泣かせて泣かせて、最後に笑わせるものか、反対に、笑わせ、笑わせ、笑わせぬいて、最後に泣かせるか、そのどっちかですね。」
     私は、そのことばを大切に頭の中にしまっていて、ひまなときに虫干しでもするようにとりだしてながめています。

  • 「月のたまご探検隊」の隊員は、再会したのもつかのま、三郎は海の小人の世界へ。一方、まゆみはダマーニナにとられた鏡の城の中、アラエッサ、ストンストンは2人をさがして旅の空。大流行の奇病「青ころり」の原因を鏡の城にすむ魔女のしわざだとして、王国乗っとりをたくらむダガーは、「鏡の森を焼きはらえ!」と命令。危機を感じたシルバー王妃はキラップ女子を鏡の森に向かわせるが・・・。それを知ったダガーはマート=ブランカ大尉ごと女史を葬り去ろうと企む。

    いよいよ物語も佳境に入ってきて面白い。きっと最後には隊員がみんな再会できるんだろうなと半分分かりつつ、だけどどうか無事で・・・と祈ってしまう。そしてダガーのいかにも、な悪役っぷりが存分に楽しめます。珍しいほどにすっきりした悪役だよね。キラップちゃんがクリームソーダ食べるシーンは何度読んでもなぜかにやにやしちゃう。シルバーとのやり取りといい、この人大好きだなぁ。アラスト組がこんな危機的状況でものどかで楽しかったです。綱引きに参加したりいつものユーモアたっぷりな姿になぜかぎゅっと心を掴まれる。ナレンナーさんのところへ早く顔を見せに行ってあげてね、ストンストン。

  • 0608

  • いよいよ7まで来ました!色んな人がもの凄く入り乱れていて同時並行で色んなことが起こっているので、あっちへ飛んでこっちへ飛んで・・・。みんな一つのところへ向かっているはずなのに!ということで、後1冊。

  • 月のたまご隊員達は、再会したのもつかの間、それぞれ旅へ。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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